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Jリーグ月間表彰
J1月間MVP 神戸・古橋亨梧が遂げた変貌
「今年はワガママに、よりエゴイストに」
チームメートのサポートを得て、ゴールを量産中の古橋。相手DFとの駆け引きも巧みで、得点パターンも多彩だ
チームメートのサポートを得て、ゴールを量産中の古橋。相手DFとの駆け引きも巧みで、得点パターンも多彩だ【(c)J.LEAGUE】

 6月度の「2021明治安田生命Jリーグ KONAMI 月間MVP(J1)」に、ヴィッセル神戸のFW古橋亨梧が選出された。6月に行われたリーグ戦2試合で4ゴールをマーク。7月3日のリーグ戦でも得点を奪い、J1得点ランキングで首位を快走中だ。


 神戸加入4シーズン目となる今季、得点への意欲がこの上なく高まっている。その背景にはどんな思いがあるのか。自慢のスピードだけでなく、技術や駆け引きにおいても成長著しい国内屈指のストライカーの今に迫る。


決めれば、誰も文句は言わないと思う

――6月度の明治安田生命JリーグKONAMI月間MVP受賞、おめでとうございます。6月は日本代表戦があったため、リーグ戦は2試合でしたが、横浜FC戦のハットトリックを含む4ゴールの活躍でした。


 率直にうれしいです。ゴールは自分ひとりの力で決められるものではないので、チームメートに感謝していますし、たくさんの人に応援してもらって今の僕がいるので、本当に恵まれているなと思います。


――相変わらず、謙虚ですね。先日も、練習後のファンサービスで、ファンの方々を待たせてしまったということで、ユニホームにサインを入れて手渡したそうですね。


 ファンサービス自体、2年ぶりだったんですよ。あの日は、ファンの方々が数十人来てくれて。持ってきてくれたゲーフラ(ゲートフラッグ)やユニホームにサインをしたんですけど、インタビュー取材を受けていたせいで、長い時間、外で待たせてしまって。コロナ禍で難しいんですけど、お詫びと感謝の気持ちを伝えたくて、「持っていきます」と言って、持っていきました。


――そうだったんですね。6月に4ゴール、7月3日の湘南ベルマーレ戦でもゴールを決めて、今季のゴール数を14にしました。早くも3年連続二桁ゴールを達成し、得点ランキングでもトップにも立ちましたね。


 さっきも言いましたけど、みんながボールをつないで僕のところまで持ってきてくれるので、本当に僕は決めるだけでした。チャンスを作ってくれたチームメートに感謝していますし、恩返しをするためにも、もっともっと点を決めていきたいです。


――昨年、背番号を11番に変更しましたが、神戸でかつて11番をつけていたレアンドロ選手(2007年〜08年、15年7月〜18年6月在籍)が得点王に輝いているので「僕もそういう選手になりたい」と力強く話していました。プレーを見ていると、そうした思いが今季、一段と強まっているように感じます。


 神戸に来てから、シーズンを重ねるごとに自分らしいプレーを出せるようになってきましたし、ゴールに向かって持ち味を発揮できるようになってきました。今年に関しては、シーズン開幕当初から、ある意味ワガママに、ゴール前ではエゴイストになる、と決めてやっていて、それが数字に表れているのかな、と思います。それだけじゃなくて、何回も言ってしまいますけど(笑)、パスがすごくいいから、僕は駆け引きをして、待っているだけ。本当に、ひとりではゴールを決められないので、チームメートに感謝したいです。


――いかに素晴らしいパスが出てきているか、ということは後ほど伺うとして、「エゴイストになる」と決意するきっかけはあったんですか?


 一番は昨年のACL(AFCチャンピオンズリーグ)ですね。(蔚山現代との準決勝の延長後半1分に)ペナルティーエリア内で僕がパスを受けて、自分でシュートを打てる場面で(ドウグラスへの)横パスを選択して、しかも、そのパスがズレてしまって、結果として負けてしまった。決勝まであと少しのところで敗れた悔しさが大きいと思います。


 今はよりゴールに近いポジションでプレーさせてもらっているので、DFとの駆け引きに集中して、ゴールに向かうことができています。僕が決めれば負けない、という流れを作れたらな、と思っていますし、たとえ調子が悪くても、1本のチャンスで決め切る力を今年は磨いている。だからこそ、よりエゴイストに。僕が打って決めれば、誰も文句は言わないと思うので。一昨年、ダビド・ビジャという素晴らしいお手本がいたので、彼を見習って、今年は自分が決め切ろうと思っています。


――ここまでの14ゴールで気に入っているゴールは、どれですか?


 全部好きなんですよね(笑)。


――たしかに今季の14ゴールはパターンが多彩で、どれも美しいゴールですね。


 直近で言うと、横浜FC戦は3点ともいいゴールだったかなと。1点目はアンドレス(・イニエスタ)から素晴らしいタイミングでボールが出てきた。来るかなと思っていたら、本当に来て、あとは決めるだけでした。2点目は左サイドで、アンドレスと(山口)蛍さんとセルジ(・サンペール)の3人で崩してくれて、僕は中で待っていたら、いいパスが来た。3点目は、ボールを奪ってからセルジが最高のスルーパスを出してくれたので、僕はタイミング良く抜け出して、入れることができた。他にも挙げたらキリがないので言わないですけど、どれも好きです。

代表に呼ばれ、欲がどんどん深まっている

今の古橋は、揺るぎない自信と、周りのおかげだという謙虚さをバランス良く併せ持っている印象だ
今の古橋は、揺るぎない自信と、周りのおかげだという謙虚さをバランス良く併せ持っている印象だ【画像:スポーツナビ】

――ただ、「あとは決めるだけ」「待っていたら、いいパスが来た」と言いますが、イニエスタ選手のループパスを完璧なトラップでシュートまで持ち込む技術、山口選手がクロスを入れる瞬間にDFの前に入る駆け引き、サンペール選手がスルーパスを繰り出す前にフリーになっておく動きの質も素晴らしかったですよ。


 ありがとうございます(笑)。でも、パスが良すぎるので。パスが出た時点で、相手との駆け引きに勝っていて、僕はGKとの駆け引きに集中できるんです。パス1本で相手の背中が取れるから、シュートの場面で余裕が生まれる。だから、やっぱりチームメートのおかげですね。


――分かりました(笑)。チームメートのおかげであることを理解したうえで、狭いスペースでの技術やトラップ、DFとの駆け引きに、古橋選手自身の確かな成長が見られます。


 練習からすごく意識していますし、試合で多少ズレたとしても反応できるように準備もしています。練習からの準備が試合で生きているのかな、と思います。


――シュートの際にも落ち着きや余裕が感じられます。素晴らしいパスが出てくるおかげということはあるにせよ、自信が余裕を生んでいるのでしょうか?


 3月、6月と日本代表に呼んでもらって、自分に足りないものも気付くことができましたし、練習で見て、学んで、コミュニケーションを取ることで、意識が変わってきたのが自分でも感じられます。プレーの強度とか、目指すべきプレーとか、欲がどんどん深まるというか、もっともっとやらないといけない、もっともっとできるって気づかせてもらえるので。僕ひとりで成長できているわけではないんですけど、定期的に代表に呼んでいただいて、成長するために努力しようという思いが日々、強くなっていって。それが自信になって、シュートを打つときにも余裕ができて、力が抜けて、枠に入れる意識でシュートを打てている。それがゴールにつながっているのかな、と思います。


――サンペール選手とのホットラインは、横浜FC戦に限った話ではありません。4月3日のベガルタ仙台戦でのゴールも、7月3日の湘南戦でのゴールも、サンペール選手のスルーパスからでした。サンペール選手とは練習中から密にコミュニケーションを取っているんですか?


 いや、特に話さないんですけど、「自分がボール持ったら走って」と言われますね。セルジやアンドレスだけじゃなく、他の選手がボールを持ったときも駆け引きをしているんですけど、やっぱりセルジのパスのタイミングが今の自分にはすごく合っているというか。これは感覚的な問題なんですけどね。



――駆け引きに関しても、最初から相手DFの視野から消えて裏を取ることもあれば、あえて視野に入って、DFに意識させてから裏を取るなど、工夫が見られます。


 正直に言うと、感覚なんですよ。直感というか。常に周りを見て、相手がどこにいる、味方がどこにいて、どういうポジションを取っていて、どのタイミングで出せるかな、というのを見ながら動いたり、探り探りポジションを取っていて。最終的には直感で、来ることを信じて待ったり、来ることを信じて走ったりするっていう。でも、大事なのは何回も、何回もやり続けることだと思いますね。

飯尾篤史
飯尾篤史

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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