トリプルアクセルに対する日本女子の挑戦 独自の強みを見出すことが五輪への近道に

沢田聡子
 出場した女子6人のうち、トリプルアクセルに挑戦した選手は4人。北京五輪シーズンの始まりを告げるジャパンオープンは、世界に追いつくため、日本女子も高難度ジャンプに挑み始めたことを示す内容となった。しかし彼女たちは、大技の成功だけを追求しているわけではない。

樋口は試合で初めてトリプルアクセルを成功

樋口新葉は、試合の舞台でトリプルアクセルを初めて成功させた 【写真:坂本清】

 フリーのみを演技し、チームブルーとチームレッドの2チームで競うジャパンオープン。女子で最初に演技した樋口新葉(明治大学)は、『ライオンキング』の冒頭でトリプルアクセルに挑み、回り切って着氷した。トリプルアクセルは2.4の加点がつく出来栄えで、続く3回転ルッツ―3回転トウループも決める。後半に予定していた3回転ルッツ―3回転トウループが単独の2回転ルッツになるミスがあったものの、プログラムをまとめた。樋口の得点は136.27で、1位となっている。

 演技後に取材に応じた樋口は、トリプルアクセルは「踏み切りの方向と、跳びあがりの浮きの感じがすごくいいタイミングで合わさって」成功したと語った。初めて練習でトリプルアクセルを降りたのは、2017年の国別対抗戦を前にした時期だったという。4年半もの時間をかけて取り組んできた大技の、試合での初成功だった。しかし樋口は浮かれることなく、落ち着いて演技を振り返っている。

「(トリプル)アクセルはすごくよかったなと思うんですけど、それ以外のところで少しミスがあった。もっと練習したいなと思った試合でした」

 演技全体の出来を冷静に分析する樋口の様子は、昨季とは異なる。昨年11月のNHK杯で、樋口は4分の1の回転不足と判定されたものの、トリプルアクセルを着氷させた。その際、樋口は他のジャンプで失敗があったにもかかわらず、演技後にガッツポーズをしている。しかし今季の樋口は、必要以上にトリプルアクセルを重視しないように努めているようだ。

「(トリプル)アクセルを跳べて、まだ『跳べた』という感じで次のジャンプに向かってしまうので、『跳べて当たり前』と思って練習できるように。良くも悪くも動揺しないように、プログラムの練習をしたいです」

 前回の平昌五輪シーズン、樋口は惜しくも五輪代表入りを逃している。「4年前の悔しい気持ちを忘れることなく、この4年間頑張ってきたので、最後までしっかりと集中を切らさずに、自分の演技をしたいと思います」

 樋口はトリプルアクセルを「当たり前」に跳ぶことで、悲願の五輪出場への道を切り開くつもりだ。

ジャンプ以外の強化も念頭に置く松生

松生理乃は「トリプルアクセルを跳ぶことができれば、それが代名詞になったりもすると思う」と抱負を語る 【写真:坂本清】

 135.12で2位になった松生理乃(中京大中京高)は、今季からのプログラム『月光』を使ったフリーの冒頭でトリプルアクセルに挑んだ。重度の回転不足と判定されたものの、着氷している。

「試合でトリプルアクセルを右足で立ったのは初めてだったし、全然回転は足りないんですけど、それでも一歩前進はしたかなと思います。練習でも、少しずつ前よりは回るようにはなってきているのかな。何回もやって、いい感覚を自分の身につけていくのが一番。いい調子の時にたくさん練習をして、いい感覚をどんどん体に覚えさせていきたいです」

 昨季は全日本ジュニア選手権を制し、全日本選手権でも4位と躍進した松生。シニアデビューシーズンとなる今季の目標をトリプルアクセルの完成とする背景には、自らの立ち位置を客観的に分析する姿勢があった。

「自分は坂本(花織)選手みたいにジャンプが特別大きくて上手というわけではないですし、宮原(知子)選手みたいにステップや繊細な動きが上手というわけでもない。自分には“これ”というものがないので、トリプルアクセルを跳ぶことができれば全部丁度よく整うし、それが代名詞になったりもすると思う」

 紀平梨花やロシアのカミラ・ワリエワ、アリョーナ・コストルナヤのトリプルアクセルが好きだという松生。しかし、トリプルアクセル以外の課題にしっかりと意識を向けている。

「この前のブロック大会(中部選手権)でも、ショートではスピンのレベルを2つ落としてしまった。そういうところのミスも点数にすごく影響してくるし、順位が大きく変わってきたりすると思う。ジャンプだけじゃなくて、しっかりとスピン・ステップのレベルも全部落とさずにとるのは大事なことだと思っているので、細かい部分の強化もしっかりしていきたい」

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著者プロフィール

沢田聡子

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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