【UFC】UFC月間レポート:2025年1月

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【UFC】

2025年最初の1カ月のUFCスケジュールが、すでに記録庫に移動している。

つい数週間前までは、タンパを最後にイベントがなかった。3週間も、誰もオクタゴンに上ることなく過ごしたのだ。

そんな状態もすでに過去のこと。1月に実施された2つのイベントだけで、すでに2025年が信じられないような年になる予感がしてくる。

2025年最初の1月に忘れられないパフォーマンスを残したのは誰なのか? ここで紹介しよう。

ブレイクアウト・パフォーマンス:ファティマ・クライン

【Chris Unger/Zuffa LLC】

スキルのある、頭角を現しつつあるファイターであっても、成長のさまざまな時点で、あまりにも大きな期待に押しつぶされてしまうことはある。

しかし、ファティマ・クラインにそれは当てはまらない。昨年夏、ショートノーティスで、しかも階級を上げて、女子フライ級のランカーであるジャスミン・ ジャスダビシアスとの試合でUFCデビューを遂げたとき、多くの人々がクラインを2025年にブレイクする才能だと見込んだはずだ。CFFCで2階級を制したクラインは、女子フライ級コンテンダーのエリン・ブランチフィールドのトレーニングパートナー。本来の階級である女子ストロー級に戻ってビクトリア・ドゥタコバと戦うとあって、誰もがUFC APEXでオープニングイベントを飾ったこの試合に注目していた。

軽い足取りでオクタゴンへと上がったクラインは、プレッシャーにつぶされることなく、期待を裏切らないパフォーマンスを発揮して第2ラウンドでテクニカルノックアウト勝ちを収めている。テクニカルで切れのあるグラップリングと、トップポジションからの苛烈さを見せての勝利だった。第2ラウンドでコントロールポジションに身を落ち着けると、クラインは肘を使ってドゥタコバの体勢を崩し、レフェリーが間に入って止めるまで激しい打撃を浴びせ続けている。

クラインの秀でたところとして、これといった穴がなく、あらゆる側面でなめらかに動けるという点がある。足の動きやスタンスのスイッチも優れており、サウスポーでもオーソドックスでも問題ない。カンバスでも優秀で、堅実なサブミッションゲームを誇りつつ、UFC初勝利となった今回の試合で見せたような、強烈なグラウンド・アンド・パウンドも持ち味だ。

24歳で7勝1敗をマークするクラインは、まだキャリアの序盤にいる。将来性があるのは明らかで、ブランチフィールドがUFCデビュー戦から女子ストロー級の有力なコンテンダーに上りつめるまでのスピードを振り返れば、それがチームメイトの成長具合のテンプレートになると考えてもいいだろう。もちろん、2人は別々のファイターであり、そのスキルも異なっているが、あるチームからやってきた若き才能が急速にランクを駆けあがったさまからは、彼らがスキルのある有望株をどう指導し、その能力を最大化するかに長けていることがうかがえる。

女子ストロー級では1試合しただけだが、クラインがブランチフィールドの足跡を追うと考えるだけの理由は十分だ。つまり、これから2年でコンテンダーに成長することが、十分にあり得るということになる。ドゥタコバを仕留めた様子からは、もしかしたらそこまでかからずに、同じ結果が得られるかもしれない。

特別賞:プナヘレ・ソリアーノ、マフコ・トゥリオ、ジャコビー・スミス、アザマト・ベコエフ

サブミッション・オブ・ザ・マンス:アマンダ・ヒバスからタップを引き出したマッケンジー・ダーン(UFCファイトナイト・ラスベガス101)

【Chris Unger/Zuffa LLC】

ロジックとしては奇妙に聞こえるかもしれないが、マッケンジー・ダーンのアマンダ・ヒバスに対するフィニッシュをここに選んだのは、複数回のブラジリアン柔術世界王者である彼女が、優れたスキルの数々をカンバス上で披露し続けたことが理由だ。

ダーンはUFCの舞台にやってきて以来、オクタゴンで自分の能力を完成させようと地道に努力してきた。対戦相手たちがダーンの腕にも敬意を払わざるを得ないレベルに達するべく、パワーを発揮し、ガッツとタフネスを示すために、ジェイソン・パリロと共にトレーニングに打ち込んできたのだ。とは言え、1つのダイナミックなスキルを有してUFCにやってきた多くのアスリートと同様に、第2の武器を鍛えようとすれば、メインの武器が弱体化することはしばしばあることだ。

UFCで最初の6勝のうち、4勝を1本勝ちで決めている31歳のダーンは、ここ3年以上の間、サブミッションを決めていなかった。その一因には、ダーンが取り組んできた戦いのレベルや、対戦相手がタップアウトを避けようとする意識が変わったことが挙げられる。しかし、ダーンのカンバス上での能力は非常に高く、勝利への、そして、女子ストロー級における正真正銘のコンテンダーになるための最短の道は、サブミッションゲームを活用することのように常に感じられていた。

デミアン・マイアが本来の戦い方に戻し、当時のどのウェルター級ファイターと対峙しようが、絶対的なナイトメアになっていた時のことを思い出してほしい。今回の試合で観衆がダーンに見いだしたのが、まさにそれだ。

ダーンがトップポジションではないときでさえ、ヒバスが動きにかなりの慎重さを必要とし、あまり長い時間をカンバスで過ごさないように気を配っているのが見て取れた。最初の2ラウンドを引き分けた後、ダーンは第3ラウンドでクリンチに入る。最初にトップポジションをとったのはヒバスだったが、すぐにダーンが腕を繰り出し、サブミッションを狙いにいった。

1回目の試みでは何も起こらず、2回目もヒバスがうまく防いだ。ダーンはそれでも冷静に攻撃モードを続行し、腕を握ったところからトップポジションへと移行。体勢を整えてトップポジションから何度かエルボーを振り下ろすと、そこから切り替えてラウンド終了まであと数秒という段階でフィニッシュを決めている。

これぞダーンの真骨頂。世界レベルのグラップリングを活用し、自分とグラウンドでの戦いになったことに対して、相手に常にツケを払わせる。第2の武器を活用してチャンスを作り出し、トップクラスの柔術で仕掛けるのだ。

特別賞:フェリペ・ブネス vs. ホゼ・ジョンソン、ボグダン・グスコフ vs. ビリー・エレカナ、ライニアー・デ・リダー vs. ケビン・ホランド、イスラム・マハチェフ vs. ヘナート・モイカノ

ノックアウト・オブ・ザ・マンス:アブドゥル・ラザク・アルハサンを打ちのめしたセザー・アウメイダ(UFCファイトナイト・ラスベガス101)

【Chris Unger/Zuffa LLC)】

この試合が終わる2秒前で映像を止めて、この後、ノックアウトで勝敗が決すると聞かされれば、オクタゴンの中央に立つアルサハンが勝利し、ライトを見上げるアウメイダが敗れるのだと思うはずだ。

しかし、ガーナから来た柔道家であるアルハサンがノックアウトを決めようとする中で、何かが起こった。

ストレートはループ系のパンチに勝る。コーチやアナリストたちはいつもそう言うものだ。この試合は、常に伝えられてきたその教えを示す、参考資料のようなものだった。アルサハンはアウメイダにダメージを与え、フェンス際に追い詰めつつパンチを放つ。その中で、試合を終わらせる一撃を狙っていた。ただし、アルサハンがぶつけていたのはフックだった。一方のアウメイダはショック状態から立て直し、うまく防御しつつ攻撃を受け流す。アウメイダが最後に選んだレーザーのようにまっすぐな一撃が、相手より先に標的を捉えたのだった。

左手の直撃をくらい、一瞬で凍りついたアルハサンは、切り倒された樹木のように無情のカンバスへと崩れ落ちている。

【Chris Unger/Zuffa LLC】

アウメイダがトレーニングを積む『Xtreme Couture(エクストリーム・クートゥア)』のチームリーダーであるエリック・ニックシックは、毎週公開されているポッドキャスト“Verse Us(ヴァース・アス)”に中で、この結果について簡潔に1フレーズでまとめた。いわく「ガンマンに銃撃戦を仕掛けてはいけない」と。

アルハサンの武器の方が、火力が高かったかもしれない。しかしながら、射手としてはアウメイダの方が優れており、1月の中で最も印象的なノックアウトを決め、戦場を去っていった。

特別賞:プナヘレ・ソリアーノ vs. ウロシュ・メディチ、ジャコビー・スミス vs. プレストン・パーソンズ、アザマト・ベコエフ vs. ザカリー・リース

ファイト・オブ・ザ・マンス:バンタム級タイトルを防衛したメラブ・ドバリシビリ(UFC 311)

この1戦が発表された瞬間から、激闘になることは誰もが予想していたにもかかわらず、実際の試合はその期待をはるかに上回るものとなった。

試合開始から最初の10分間、ウマル・ヌルマゴメドフはNo.1コンテンダーとしての実力を証明し、チャンピオンにとって最大の脅威であることを示した。デビューから18連勝を飾ってきたその卓越したスキルと能力を駆使し、優勢に立った。スピードではドバリシビリを上回り、打撃の精度でもチャンピオンを凌駕。さらに、ジョージア出身の王者が仕掛けるハイペースの攻防にも難なく対応していた。

しかし、この状況にドバリシビリはまったく動じなかった。自分の思い通りに進まない展開にも関わらず、オクタゴンの中で戦うことそのものを楽しんでいるようだった。カリスマ性と陽気な性格で知られるバンタム級王者は、勝負の流れが自分のものになると信じて疑わず、実際にその兆しが第3ラウンドから見え始めた。

この試合では、流れを変える決定的な瞬間はなかった。それどころか、昨年11月にエドモントンでエリン・ブランチフィールドとローズ・ナマユナスが対戦した時のように、じわじわと変化が訪れた。両試合とも、進むにつれてリードしていた選手――ヌルマゴメドフとナマユナス――が、わずかにペースを落とし、動きが徐々に鈍くなっていくのが見て取れた。一方で、対戦相手は勢いを維持し続けた。

【Harry How/Getty Images】

そして、チャンピオンシップラウンドに入ると、ドバリシビリは完全に主導権をにぎった。笑顔と身体からあふれる喜びは増していき、終盤にはヌルマゴメドフに再びテイクダウンを仕かける直前に、自らの上腕二頭筋にキスをする余裕すら見せた。その姿は、まさに“ザ・マシーン”の異名にふさわしいパフォーマンスだった。

ヌルマゴメドフは依然としてバンタム級トップクラスの実力者であり、今後もこの階級の上位に名を連ねる存在であることは間違いない。しかし、彼もまた過去10人の挑戦者と同様、王者が誇る異次元のスタミナとペースに対応することはできなかった。

特別賞:ロマン・コプィロフ vs. クリス・カーティス、ベナルド・ソパイ vs. リッキー・トゥルシオス、イジー・プロハースカ vs. ジャマール・ヒル
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