トリプルアクセルに対する日本女子の挑戦 独自の強みを見出すことが五輪への近道に

沢田聡子

技術点トップの河辺は「スケーティングの点数も……」

0.2の加点付きでトリプルアクセルを決めた河辺愛菜。技術点ではトップの成績を残した 【写真:坂本清】

 技術点ではトップだった河辺愛菜(木下アカデミー)は、134.91で3位となっている。昨季から継続のプログラム『Miracle』に最初のジャンプとして組み込んだトリプルアクセルには、0.2の加点がついた。

「(優勝した)2年前の全日本ジュニアから1回も(トリプル)アクセルを試合で跳べていなくて……。毎回アクセルだけに集中をしてしまって、他のところがあまり集中できてないということがあったんですが、今日は練習の時のアクセルの調子もよかったので、余裕をもっていけたかなと思います」

 2年間でいろいろな跳び方を試した末、現在は成功した全日本ジュニア選手権の際の跳び方に似てきているといい「それが上手くはまったのが一番の良くなった要因」だと語った。河辺は、トリプルアクセルに加えて4回転トウループの練習も始めている。

「練習を本格的にやり始めたのは2週間前くらいで、最近ちょっとずつ良くなっていています。まだクリーンで跳べたことはないんですが、回転不足なら立てたことはあるというぐらいなので、もうちょっと練習は必要だと思います。『今シーズンに間に合ったら嬉しいな』というぐらいの気持ちで、4回転だけにとらわれないように心がけて練習しています」

 技術点がトップだったことを知らされ「めちゃくちゃうれしいです」と素直に喜んだ河辺だが、「でも下の点(演技構成点)がまだまだ上の選手には勝てないかなと思っている」と付け加えている。

「やっと技術点は追いつけたので、あとはもっともっとスケーティングなど基礎の練習を全日本までに頑張って……。技術点だけじゃなくて、スケーティングの点数も追いつけるように頑張りたい」

坂本は「今持っている技術」を磨き抜く

坂本花織は、大技よりも「“今”を精一杯やりたい」と、現状で持っている技に磨きをかけていく方針を示した 【写真:坂本清】

 平昌五輪代表の坂本花織(シスメックス)は、今大会では133.26というスコアで4位だった。後半に組み込んでいた3回転フリップ―3回転トウループのセカンドジャンプが2回転トウループになってしまったため、その後に予定していた2回転アクセル―3回転トウループ―2回転トウループの最後のジャンプを繰り返せなくなり、3連続ジャンプを入れられなかったのが痛かった。トリプルアクセルへの挑戦も示唆していた坂本だが、「今の段階では」入れないという。

「(トリプル)アクセルは、今はあまり考えていません。今は、自分ができる(3回転)ルッツまでのジャンプをしっかりプログラムに入れて、迫力を出すことが一番大事だと思うので、(トリプル)アクセルとか4回転とかよりも“今”を精一杯やりたい」

 新しいフリー『No More Fight Left In Me』は、振り付けたブノワ・リショー氏が坂本に寄せる期待の大きさがうかがえる難しいプログラムだ。その難しさゆえに、8月のげんさんサマーカップでは18-19シーズンのフリー『ピアノレッスン』を滑ることを選択した坂本だが、今は覚悟を決めて新プログラムに挑んでいる。

「今回のこの出来で133点というのは、本当に自分にとっては伸びしろしかないなって思ったので……。難しいのは難しいんですが、ブノワ先生としっかりブラッシュアップをして、誰にもできないプログラムを作り上げたい」

 日本女子の強さを支えてきたトリプルアクセルに対し、五輪代表候補たちはそれぞれのアプローチを試みている。自分を知り、独自の強みを手に入れることが、北京五輪への近道となるのかもしれない。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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