連載:あのJリーガーはいま

社長、理事、社外取締役にコメンテーター いくつもの顔を持つ巻誠一郎のいま

栗原正夫
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現役引退後は熊本県内でフットサル場やサッカースクールを経営するほか、子ども向けのスポーツイベントなども主催している 【写真提供:巻誠一郎】

 ピッチで見せていたひたむきさや献身的な姿は変わらない。元サッカー日本代表FWで、2006年ドイツW杯にも出場した巻誠一郎は、そのフィールドをピッチから社会に変えたいまも、地元熊本を中心に“泥臭く”動き回っている。

 イビチャ・オシム監督が率いたジェフ千葉時代のプレーも印象的だが、巻は18年のロアッソ熊本でのプレーを最後に現役引退。現在は、起業家として活動しているほか、元アスリートとしての知名度を生かしてテレビ出演をしたり、16年の熊本地震後に自ら立ち上げた「NPO法人ユアアクション」の代表として震災復興や社会貢献活動に尽力している。

「たいしたことはやってないんですどね」と本人は謙遜するが、たとえば熊本県内でフットサル場(3面の屋外施設と屋内専用コート2面)やサッカースクールを経営し、NPO法人では災害からの復興支援や教育、地域振興を軸に、子ども向けのスポーツイベントを主催。毎週月曜日には地元ローカル局の情報番組のコメンテーターを務め、東京工業大学発のベンチャー企業では社外取締役としてタンパク質の研究にも携わっている。ほかにも保育園経営、農業の担い手不足や障害を持った方の就労支援など関わっている事業は多岐に渡る。

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サッカーで得た経験を、社会に還元

 新型コロナウイルスの感染拡大後は回数こそ減ったものの、さまざまな経験を積んできたからこそ講演会などの依頼も多く、多いときには熊本県内外を問わず年間70回ほど行ってきた。

「メインの事業は現役の頃からずっとやってきたフットサル場とサッカースクールの運営ですが、そこでは僕が直接指導するのではなく、僕がこれまで感じてきたことや必要だと思うことをメソッド化し、考え方などをスタッフに提供しています。

 (そのほかの仕事も)アプローチとしてはサッカーを通しているんですが、直接的に僕がサッカーと関わっているというよりも、経営やプログラムを作ることが主な役割。あとは企業さん同士をマッチングさせていただき、相乗効果を生み出すようなことをやらせてもらっています。サッカー解説や情報番組などテレビ出演させていただく機会もありますが、それがメインの仕事かと言わるとそうではないんです」

 直接サッカーの指導をするようなことはない。しかし、どの仕事にもサッカーで得た経験が生きていると巻は話す。

「サッカーって足でやるスポーツなので、ミスが多いですよね。それに試合が始まると止まることがないですし、ピッチ内では常に瞬時の判断が求められます。現役時代は無我夢中でやっていたので、あまり深く考えることはなかったですが、実は課題をみつけて、その解決策を探るっていうのはサッカーも社会も似た部分があるのかなと。幸い僕は日本代表に選んでいただき、海外でプレーさせてもらうなど多くの経験をさせてもらいました。いまはそうして培ってきたノウハウを違う分野にも還元というか、自分なりに使わせていただいています。だからフィールドは変わっても、考え方としてはサッカーをやっていたときとあまり変わらないんですけどね」
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著者プロフィール

1974年生まれ。大学卒業後、映像、ITメディアでスポーツにかかわり、フリーランスに。サッカーほか、国内外問わずスポーツ関連のインタビューやレポート記事を週刊誌、スポーツ誌、WEBなどに寄稿。サッカーW杯は98年から、欧州選手権は2000年から、夏季五輪は04年から、すべて現地観戦、取材。これまでに約60カ国を取材で訪問している

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