連載:あのJリーガーはいま

元磐田・西紀寛が考えるセカンドキャリア 農家や漁師に興味、解説もやってみたい

栗原正夫
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西紀寛はJリーグを離れた後、タイ、沖縄でプレー。引退後のセカンドキャリアで何を思うのか 【栗原正夫】

 8月上旬のある晴れた日、強い日差しが照りつけるなか、サッカー元日本代表の西紀寛は東京都多摩市のグラウンドにいた。

 日焼けで頬が赤くなっているのは遠目にもはっきりと分かった。口に笛をくわえながら、時折ジェスチャーを交えて、一方のチームだけにアドバイスをしている。小学生同士の練習試合で、審判兼コーチをしているのだ。

 残念ながら、西が指導するバディスポーツクラブはるひ野校の小学5年生チームは、東京ヴェルディのジュニアチームに“こてんぱん”にされてしまった。ただ、それはそれで楽しそうに見えた。

3つのスクールを掛け持ちする日々

「何点入れられたかな。7点? 8点?(苦笑)。最後までボールをつなごうとしていましたね」

 西はいま、バディスポーツクラブはるひ野校を中心に、横浜FCフットボールアカデミー・サッカースクール(谷本公園校、保土ケ谷校)、かつて鹿島アントラーズやモンテディオ山形でプレーした元Jリーガー船山祐二が立ち上げた「FUNAJUKU」と、主に小学生を対象にした3つのスクールを掛け持ちしながら指導者としての日々を送っている。

「子どもは好きなんで、楽しいですよ。このサイクルでは2年目ですが、複数のクラブを回っているのでいろんな子がいて面白い。1年でものすごく成長して、もう何を教えたらいいか分からない子もいれば、ボールを怖がってしまう子もいたり(苦笑)。スクールによってミッションが違うので、頭を切り替える大変さはあります。

 いろんな子がいて当然。サッカーはひとりでやっても勝てないので、みんなで戦い、最終的に勝つとうれしいという成功体験を少しでも多く経験させてあげられたらと思っています。今日は思いっきり負けましたが、子どもはナーバスですし、失敗体験ばかりだとつらいでしょうからね」

 自身が子どもの頃は、大阪府高槻市のクラブで「ボールを持ったら、とことん仕掛けろ」と教えられたというが、指導者としてはどんなことを強調しているのか。

「僕が子どもの頃はドリブルでガンガン行けと言われていて、パスを出したらコーチにキレられました(苦笑)。個人的には理屈で考えるタイプではないので、敵に囲まれてもドリブルで抜けるならそれでいいと思っています。最初からパスばっかりでもつまらないじゃないですか。キックは大人になれば、自然と蹴れるようになりますし。

 子どものサッカーはチームやスクールによって勝つことを目的にしていたり、より楽しむことを大事にしていたり、育成方針や色が違います。その辺は、その状況に合わせてやっています。僕としては、とにかくみんなが大人になってもサッカーをやめずに続けてくれたらいいなと。なかには本当にすごいと思う子もいるし、誰にでも可能性はありますから」

 スクールに通っている子どもたちの多くは、西のキャリアをほとんど知らない。だが、「そんなことはどうでもいい」とあっけらかんと笑う。

「たまに親御さんが『昔ジュビロ好きでした』と言って子どもを連れてくることもありますが、そういう場合は長続きしません(苦笑)。キャリアとか肩書は別にどうでもいい。だいたいJリーグを見ても選手を最初に育てているのは、ほかに仕事を持っているお父さんコーチが多いですからね」

タイ、沖縄でプレー後は監督も経験

引退後は磐田スタッフを経て指導者の道へ。監督も経験し、現在はスクールのコーチを務めている 【栗原正夫】

 現役時代は1999年のプロ入り後、ジュビロ磐田(当時J1)で13年プレーし、12年からの2年間はJ2の東京ヴェルディに所属した西。主にMFとして、15年間で計328試合に出場し、47ゴールを挙げた(J2含む)。

 14年にはタイのポリス・ユナイテッド(1部)で初の海外リーグを経験。16年には磐田時代の先輩である高原直泰に請われる形で、高原の立ち上げた当時沖縄県3部リーグだった沖縄SVで1年間スタッフ兼選手としてプレーした。
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著者プロフィール

1974年生まれ。大学卒業後、映像、ITメディアでスポーツにかかわり、フリーランスに。サッカーほか、国内外問わずスポーツ関連のインタビューやレポート記事を週刊誌、スポーツ誌、WEBなどに寄稿。サッカーW杯は98年から、欧州選手権は2000年から、夏季五輪は04年から、すべて現地観戦、取材。これまでに約60カ国を取材で訪問している

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