連載:あのJリーガーはいま

“島人ストライカー”我那覇和樹の境地 福井で、地域リーグでボールを追い続ける

栗原正夫
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今季から福井ユナイテッドFCでプレーする我那覇和樹。地域リーグでもモチベーションは変わらない 【栗原正夫】

 その日、真っ黒に日焼けした沖縄県出身の元日本代表FWは、福井県坂井市三国町のテクノポート福井総合公園芝生広場にいた。

 我那覇和樹――。その名前を懐かしく感じるサッカーファンも少なくないだろう。

 昨年オフ、それまで6シーズンを過ごしたカマタマーレ讃岐(J3)を退団した我那覇は、間もなく40歳を迎える。同級生の多くは、すでにスパイクを脱ぎ第二の人生を歩み始めている。一般社会でも40代男性といえば、 仕事や家庭、体調の変化など多くの悩みに直面する年代と言ってもいい。

 しかし、かつてドーピングの「冤罪」(えんざい)という選手生命を脅かす危機に巻き込まれながらも、自ら潔白を証明し、ボールを追い続けてきた“島人ストライカー”はいまもまったくモチベーションが下がることはない、と断言する。

プレーできる以上、やめる選択肢はない

 我那覇が今季より籍を置くのは北信越フットボールリーグ1部の福井ユナイテッドFC。カテゴリーはJ1から数えて5部にあたる。

 我那覇は、これまでキャリアのほとんどをJ1かJ2で過ごしてきた。11年からの3シーズンはJFL(当時)のFC琉球でプレーしたが、そこには地元・沖縄への思いも強くあったはずだ。讃岐退団後の昨オフは、日本プロサッカー選手会(JPFA)が主催する「トライアウト」にも参加しているが、カテゴリーを地域リーグにまで下げても現役にこだわる理由は何なのか。

「自分の気持ちとしては、まだ体は動くし、必要としてくれるクラブがある限り、プレーしたいということです。トライアウトは20年以上プロサッカー選手をしている僕にとっても初めてでしたし、ひとつの経験として前向きにトライさせてもらいました。

 自分は続けたいと思っていて、声を掛けてくれるクラブがある以上、やめるという選択肢はなかったです。カテゴリーにかかわらず、サッカーができる喜びはありますし、Jリーグではないといってもそんなに違いはない。そこのこだわりは人それぞれじゃないですか。チームの中にはJリーグでやっていてもおかしくないような選手もいますし、モチベーションはこれまでと変わりません。もちろん、ここで満足しているわけではなく、もう一度Jリーグでプレーしたいという気持ちはいまも持っていますけど……」

福井ユナイテッドFCでJFL昇格を目指す

最年長ながら練習で決して手を抜かない。JFL昇格を目標に戦うチームに我那覇が与える影響は大きい 【栗原正夫】

 福井ユナイテッドFCは昨年1月、前身の「サウルコス福井」の運営母体の解散を受け、福井県勢として初のJFL昇格、Jリーグ参入を目指し、新たに設立されたクラブである。

 昨季は北信越フットボールリーグ1部で前身のサウルコス福井時代を含めると3年連続7度目の優勝を飾った。しかし、JFL昇格を懸けた全国地域チャンピオンズリーグ(以下地域CL)では1次リーグこそ突破したものの、惜しくも決勝ラウンドでは4位に沈みJFLへの切符を逃した。福井ユナイテッドFCはサウルコス時代から地域CLの常連ではあるが、長くその壁を突破できずにいる。
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著者プロフィール

1974年生まれ。大学卒業後、映像、ITメディアでスポーツにかかわり、フリーランスに。サッカーほか、国内外問わずスポーツ関連のインタビューやレポート記事を週刊誌、スポーツ誌、WEBなどに寄稿。サッカーW杯は98年から、欧州選手権は2000年から、夏季五輪は04年から、すべて現地観戦、取材。これまでに約60カ国を取材で訪問している

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