B1東地区展望 昨季勝率トップ4が集結 A東京、宇都宮、川崎、千葉に実力差無し 

大島和人

多くの名勝負を生んできた千葉と宇都宮は今年も優勝候補だ。昨季序盤躓いた千葉は、SR渋谷で猛威をふるったサイズを筆頭に、ショーター、佐藤、赤穂と大型補強を敢行した 【(C)B.LEAGUE】

 待ちに待ったBリーグの“復活”だ。2020-21シーズンのB1、B2は10月2日(金)と3日(土)に各チームの開幕戦が行われる。リーグが主導して選手、スタッフ、審判が2週間毎にPCR検査を行う体制が確保された。客席減や検温、マスク着用といった対策も準備し、開幕にこぎつけている。

 2019-20シーズンは新型コロナウイルス感染症の影響で、3月中旬に打ち切りとなっていた。昨季はチャンピオンシップ、B2 PLAYOFFS(プレーオフ)、B1残留プレーオフと入替戦も開催されなかった。

 今季のB1は19-20シーズンの勝率を元に、B2から2チームが昇格している。残留プレーオフを開催できなかったため、B1は18チームから20チームに増えた。また東・中・西の3地区制が「東西2地区制」に変更されている。

 当然ながら新型コロナが及ぼす影響は甚大だ。6月中まで全体練習が出来なかったクラブが大半で、外国籍選手の入国も遅れた。ただし昨季もBリーグでプレーし有効な就労ビザを持つ選手の来日は大よそ間に合っている。政府の相次ぐ入国緩和措置を受け、新規契約の指導者や選手も9月下旬になってようやく入国の報告が相次いでいる。

 外国籍選手、コーチは2週間の隔離措置が要請されており、残念ながら開幕は間に合わない。ただしBリーグはそんな状況に先手を打ち、今季は契約済みの外国籍選手と別の人材と追加契約できる特例を設けている。

 ようやく開幕にこぎつけた20-21シーズンの「見どころ」を、B1東地区、B1西地区、B2の順番でお届けする。昨季の勝率順に、東地区の10チームを紹介していく。

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“4強”に実力差はほぼ無し

大きな入れ替えが無いA東京。それでも昨季MVPの田中大貴の他、アレックス・カーク、安藤誓哉など盤石の布陣だ 【(C)B.LEAGUE】

 東地区には昨季のB1勝率トップ4がそろって入り、上位争いは必然的に熾烈(しれつ)だ。その4チームである、アルバルク東京、宇都宮ブレックス、川崎ブレイブサンダース、千葉ジェッツに実力差はほぼなく、横一線だろう。

アルバルク東京
 A東京は32勝9敗で19-20シーズンの勝率1位。17-18シーズン、18-19シーズンのB1王者でもある。昨季は馬場雄大(現メルボルン・ユナイテッド)の海外挑戦、主力の負傷といったマイナス要素があった。しかし個の技量と、チーム力を底上げして結果を出した。

 今季は選手やコーチ陣に大きな入れ替えがなく、MVPを受賞した田中大貴、円熟のプレーを見せるビッグマン竹内譲次はもちろん健在。昨季はやりくりに苦労したポイントガード(PG)もキャプテンの安藤誓哉に加えて、ケガから復活する小島元基、津山尚大と充実の陣容だ。若手の台頭にも期待できる。特に22歳のシューティングガード(SG)小酒部泰暉はブレーク候補だ。

 アレックス・カークは加入3季目で、Bリーグへの適応も証明済み。211センチの大型ながら走力に優れ、なおかつ献身的で、2対2の“ピック&ロール”から息のあった連携を見せる。

宇都宮ブレックス
 宇都宮も16-17シーズン以来のB1王者を目指せる充実ぶり。17-18シーズンのMVP比江島慎、遠藤祐亮、鵤誠司らバックコート陣は粒ぞろいで、誰が出てもクオリティや強度が落ちない。日本人初のNBAプレーヤー田臥勇太も過去2季は負傷で苦しみ、40歳と高齢だが、コート内外で発揮するリーダーシップは他に替えがいない。

 30代が多いメンバー構成の中で、次代の日本代表を狙う若手がテーブス海。父はカナダ出身でWリーグ富士通レッドウェーブのヘッドコーチ(HC)を務めるBTテーブスで、有名NHLプレーヤーを従兄に持つ。アメリカの大学を中退して昨季途中から宇都宮に加わっていて、チームに馴染んだ今季は飛躍を期待できる。

 宇都宮の上積みは外国籍選手だ。まず今季は外国籍選手のベンチ登録が「3」に拡大されている。さらにライアン・ロシターが昨年12月に日本国籍を取得し、外国籍選手枠が一つ空いた。ロシター、ジェフ・ギブスのコンビに加えてさらに2名がベンチ入りできる。B1の2クラブで実績があるジョシュ・スコットは、怪我さえなければB1トップ級の戦力。またLJ・ピークは2015年のU-19世界選手権にアメリカ代表として出場し、優勝に貢献しているハンドラーだ。


川崎ブレイブサンダース
 昨季の川崎は中地区を制し、全体の勝率も3位だった。佐藤賢次・新HCの就任など選手やスタッフの大きな入れ替えもあったが、それがハマった1年だった。熊谷尚也、大塚裕土の両ウイングが主力級の活躍を見せ、薄かった選手層が改善された。

 今季の陣容は大よそ現状維持。日本代表の主将も務めるPG篠山竜青、昨季のベスト5に輝いたPG藤井祐眞、SG辻直人らのバックコート陣も健在だ。

 日本代表でも活躍するニック・ファジーカス、ジョーダン・ヒースは昨季に大活躍を飾った二人。も序盤戦の立役者だったマティアス・カルファニが負傷から戻り、スペイン代表の実力者パブロ・アギラールも再契約を果たしている。連携も積み上がりそうで、率直に楽しみだ。

千葉ジェッツ
 千葉は経営規模、集客とBリーグ最大のクラブ。2017年から天皇杯の3連覇も達成しているが、今季こそは悲願のB1制覇を手中にしたい。

 チームの中心はもちろん富樫勇樹。シュート、パス、ドリブル、状況判断とすべてを兼ね備えたPGで、167センチというサイズへの懸念も今や完全に払拭(ふっしょく)している。27歳で開幕を迎える今季はキャプテンを任され、名実ともに千葉の柱となる。

 ギャビン・エドワーズは走れて跳べて、3ポイントもしっかり決める万能ビッグマン。今年1月に日本国籍を取得し、今季は「帰化選手枠」でのプレーとなる。ジョシュ・ダンカン、セバスチャン・サイズ、シャノン・ショーターの外国籍選手トリオも、そろって千葉の“堅守速攻”に合うタイプだ。

 新加入の佐藤卓磨、赤穂雷太も頼もしい。佐藤は25歳、赤穂は22歳と若く、身長がいずれも190センチ台後半。しかも守備も含めてよく動き、リバウンドを自分で取って走れるタイプで、3ポイントシュートも苦にしない。千葉のウイング陣(SG/SF)は昨季も田口成浩、原修太、コー・フリッピンと人材ぞろいだったが、違う持ち味を持つ有望な人材が加わったことは大きい。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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