旧東ドイツに息づくウニオン・ベルリン ブンデスリーガを席巻するまでの熱き物語

2019年、ウニオンはクラブ史上初のブンデスリーガ昇格を決めた 【写真:Stuart Franklin/Bongarts/Getty Images】

 2020-2021シーズンの今季、並み居る強豪と肩を並べてドイツ・ブンデスリーガのトップシーンに君臨する小さなクラブがある。その名はウニオン・ベルリン。旧東ドイツで創設され、ベルリン南東部の田舎町で土壌を育んできたサッカークラブには、サポーターたちの無償の愛が満ちあふれている。財政面でハンディを負い、その規模も限られる一介のクラブは何故、これほどまでに魅力的なのか。長くベルリンに住み、その一挙手一投足を目撃してきたドイツ人記者が、その実情を明かす。

1部昇格の歴史的な日

 2019年5月27日の月曜日は、1966年にドイツ民主共和国(通称・東ドイツ。以下、東ドイツと表記)で創設されたウニオン・ベルリン(以下、ウニオン)のクラブ史上で最も偉大な日とされている。この日の夜、ウニオンはブンデスリーガ1部への昇格を懸けたプレーオフでVfBシュツットガルトと対峙(たいじ)していた。

 ウニオンは2018-19シーズンのブンデスリーガ2部で3位に入りプレーオフへの出場権を得たが、そのプレーオフは1部・16位で臨むシュツットガルトが当然有利とされていた。しかし第1戦の2019年5月23日のゲームではウニオンがアウェーで2-2の貴重なドローを手にした。そして第2戦はベルリン南東部の街・ケーペニックに建つウニオンのホーム、『シュタディオン・アン・デア・アルテン・フェルステライ』が決戦の場である。それでもスイス人指揮官のウルス・フィッシャー監督率いるウニオンが置かれた状況は予断を許さなかった。勝利すれば昇格決定だが、3点以上のドロー、もしくは敗戦でその夢は絶たれる。緊張感に包まれた両チームスコアレスの試合終盤はウニオンにとって、まったく時計の針が進まない焦燥のときだった。小さなミスひとつで失点すれば、それは“終わり”を意味する。そんなスリリングな状況下で、試合は0-0で終了する。その瞬間、ウニオンのサポーターたちはピッチへとなだれ込み、英雄と化した選手たちは熱狂的な渦に包まれた。そのお祭り騒ぎは数日間続き、ベルリン中がウニオンのチームカラーである赤と白に染まった。

 これにより、ウニオンは『アウトサイダー』、あるいは『アンダードック』としてドイツのトップカテゴリーであるブンデスリーガへ初参戦することになった。限られた予算で謙虚に戦い続け、小規模なクラブの立場でビッグクラブに抵抗する『アンダードック』というイメージは、東ドイツ時代からウニオンに冠されてきた誇り高き称号でもある。
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