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ブンデスリーガ特集2020-21
クラブ事情があれども、ふたりは中軸
フランクフルト、長谷部と鎌田の現在地

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ともにフランクフルトでは欠かせない存在となった長谷部(左)、鎌田(右)
ともにフランクフルトでは欠かせない存在となった長谷部(左)、鎌田(右)【Getty Images】

 アイントラハト・フランクフルト(以下、アイントラハト)が苦しんでいる。今季はヨーロッパリーグへの出場権を逃し、国内タイトルに専念する環境が整えられたにもかかわらず、その成績が上向かない。DFBポカールは1回戦でブンデスリーガ3部の1860ミュンヘンに2-1で辛勝して来年1月の2回戦へ駒を進めているが、ブンデスリーガでは2勝8分2敗の9位に留まっている。12試合で2敗しかしていない点は評価できるものの、実情は第3節のホッフェンハイム戦を2-1で制して以降、9試合連続で勝ち星がないジレンマに陥っている。


 近年のアイントラハトの戦力補強アクションは非常に控えめだ。それは2019年にルカ・ヨビッチ(→レアル・マドリー/スペイン)を6300万ユーロ(約76億円)、セバスチャン・アレ(→ウェストハム/イングランド)を5000万ユーロ(約63億円)で放出しても変わらない。このクラブは巨額な移籍金を得ても、いわゆるビッグネームの獲得には走らずに健全経営の維持に努めている。その成果は今年のコロナ禍でも経営基盤が揺らがなかった点に集約されているが、緊縮な姿勢が現場にもたらす影響は深刻で、チームを束ねるアディ・ヒュッター監督にはクラブ方針を遵守しつつ現有戦力を駆使するという、知己に富んだ采配が求められている。

長谷部の起用法には事情がある

リベロとしての力量はもちろん、チームリーダーとしても影響力を発揮する長谷部
リベロとしての力量はもちろん、チームリーダーとしても影響力を発揮する長谷部【写真:アフロ】

 今季のアイントラハトにはふたりの日本人選手が在籍している。ひとりは今季のブンデスリーガ最年長選手の長谷部誠、そしてもうひとりは、森保一監督率いる日本代表にも常時選出されている鎌田大地である。


 長谷部を評する際、本来ならば“リーグ最年長”という枕詞を用いたくない。今の彼にはヨーロッパのトップシーンで戦い抜くだけの実力が備わっていると思うし、その経験に裏打ちされたプレースキルは時を経るごとにむしろ向上しているとさえ思うからだ。年齢の差異なくチームのベストメンバーを選出する概念で論じれば、長谷部は現状においてもアイントラハトの中軸であることに疑いの余地はない。しかし、これをクラブの健全経営の概念から捉えると、ヒュッター監督の長谷部に対する起用法に特殊なフィルターがかかっていることが分かる。


 今季の長谷部はブンデスリーガ開幕から7試合連続で先発した後は4試合連続で不出場に終わった。長谷部がピッチに立てなかった理由について、ヒュッター監督は第10節のボルシア・ドルトムント戦後のオンライン会見の場でこう述べている。


「マコトがプレーすればマルティン・ヒンターエッガー、エヴァン・エンディカのうち、ひとりがプレーしないことになる。エンディカは若いプレーヤーであり、その才能とクオリティから近未来には高額な移籍金で売却することになるかもしれない。したがって(長谷部の起用は)『諸刃の剣』とも言える。」


 指揮官の言葉からは、アイントラハト特有の難しいチームコーディネイト術がにじみ出ている。先述したアイントラハトの健全経営術の幹は、若く将来性のある選手に試合経験を積ませ、その実績を外部にプレゼンテーションしたうえで高額移籍金を勝ち取り利益計上する点にある。ヨビッチやアレの例は典型的であり、今のアイントラハトは彼らのケースをロールモデルとして新たなる経営戦略に着手しているとも言える。その観点から見ると、現状で2250万ユーロ(約28億円)の価値があるとされる21歳のフランス人DFエンディカは格好の素材で、彼をスターティングメンバーに据えることがいかにクラブにとって有益であるかが分かる。しかしプロサッカークラブにおいて、公式戦でピッチに立てる選手の数は限られている。また、陣容構築はチームが用いるシステム、戦術、戦略、そして既存選手個々のパーソナルスキルなどの多岐に渡るファクターを参考にして熟慮されなければならない。その結果、ヒュッター監督はひとまずチーム成績に影響を及ぼさない範囲で、長谷部をベンチに置く決断をしたと思われる。


 他にもヒュッター監督が考える長谷部起用の条件がある。そのキーワードは“大型FW”だ。

島崎英純

1970年生まれ。東京都出身。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当記者を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動。現在は浦和レッズ、日本代表を中心に取材活動を行っている。近著に『浦和再生』(講談社刊)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信。ほぼ毎日、浦和レッズ関連の情報やチーム分析、動画、選手コラムなどの原稿を更新中。

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