NPB斉藤コミッショナーが語る特別な1年「プロ野球をやらない選択肢はなかった」

田尻耕太郎

9月19日、政府によるイベント入場制限が緩和され開催されたプロ野球。慎重に、そして確実に前進してきた 【写真は共同】

 特別なシーズンとなった2020年のプロ野球。

 一時はペナントレースの開催自体が危ぶまれたが、そんな難局の中でもプロ野球は6月19日に無観客での開幕を迎え、7月10日から有観客、そして9月19日より観客制限緩和と、慎重ながらも確実に前進を続けてきた。

 まもなく終盤戦。セ・パ両リーグの優勝争い、そして頂点をかけた日本シリーズへの佳境に突入する今、NPB(日本プロフェッショナル野球組織)の斉藤惇コミッショナーは何を思うのか。独占インタビューに応じてくれた。

「今年はもう野球はできない」声も上がったが…

NPBの斉藤惇コミッショナーが独占インタビューに応じてくれた 【スポーツナビ】

――まず、9月19日より入場制限の上限緩和(※)が行われました。球場の光景をご覧になった率直な感想はいかがですか?

 多くのファンの方に、球場に足を運んでいただけたことが素直に嬉しかったです。みなさんが楽しんでいらっしゃる感じも伝わってきました。しかし、ここに至るまでは本当に多くの関係者や専門家など、多岐にわたる方々のご支援のもとで、このような環境を整えることができました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。

 さらに、新型コロナウイルス感染症に立ち向かう医療従事者のみなさまのご尽力により、現在もプロ野球が開催できています。医療に携わる方々への感謝と敬意の気持ちも尽きません。

(※)無観客で始まったペナントレースだったが、9月19日より、感染拡大を防ぐために行われていたイベント開催における観客制限が緩和。従来から設けられていた収容人数の半分までという制限は維持されつつも、もう一つの条件だった5,000人という上限が撤廃となった。9月22日の福岡PayPayドーム(福岡ソフトバンクvs.オリックス)には19,909人、27日の東京ドーム(巨人vs.中日)には17,116人が来場。プロ野球の一軍戦については、事実上の大幅な入場制限緩和が実現している。

――プロ野球12球団とNPBでは医療従事者や医療機関の支援を目的に、チャリティーグッズを発売されています。

 シーズンが開幕をする前の頃から、医療従事者の皆様に感謝の拍手を送る『クラップ・フォー・ケアラーズ』とか『フライデーオベーション』のような動きはプロ野球界の中でも始まっていましたが、何か金銭的な面でもご支援をするために、今回の企画を立ち上げました。グッズの売上から経費を差し引いた全額を、医療支援または「新型コロナウイルス感染症対策」を目的とした各団体に寄付します。

 グッズは、12球団マスコットが集合したデザインで、トートバッグやタオルをはじめとした4アイテム・全5種類です。いずれもインターネットによる受注販売と、一部球場などでは店舗販売も行っております。今年はオールスターゲームが中止になってしまい、12球団のマスコットやマークが一斉に集まったグッズをお届けする機会がなかったので、ファンの皆様にもぜひ喜んでいただきたいし、かつ医療関係者の方々への感謝もお伝えできればと考えております。

プロ野球12球団とNPBでは、球団マスコットが集まったチャリティーグッズの販売を行っている 【写真提供:NPB】

――今季もまもなく佳境ですが、振り返れば開幕自体が危ぶまれた時期もありました。改めて振り返っていかがですか?

 オープン戦の大半が無観客開催となり、その後は再三の開幕延期となり見通しがなかなか立たない時期もあり、チームは大変難しい調整を強いられたと思います。内々の話になりますが、一部オーナーから「今年はもう野球はできない」という声も上がりました。しかし、私としては“やらない”という選択肢は最初からなかった。どうしたら開催できるかをテーマにやっていました。

 その中で読売ジャイアンツの山口(寿一)オーナーからのアイデアもあり、Jリーグと一緒に「新型コロナウイルス対策連絡会議」を立ち上げて、感染症の専門家の先生方にもご協力をお願いして話し合いを進めてきました。9月末時点で16回にわたり行ってきましたが、その中でプロ野球開催に向けての体制づくりがだんだんとでき上がっていったのです。

 まず我々より先に台湾や韓国のプロ野球が開幕をしていましたから、そこからヒントも得ながらJリーグとも協力して、ガイドラインを作成していきました。現在一般に公開されているものが100ページ弱で、都度更新をしています。

 本当に初めの頃は分からないことだらけ。アルコール消毒がいいと聞けば、それを探し回りました。しかし当時は流通量が減っており、確保するのに苦労もしました。それに一体どれくらいの量が必要なのか、そこから考えないといけませんでした。マスクも同様ですよね。3密を避けるためのソーシャルディスタンスも現在ではある程度認知されていますが、最初の頃は大変苦労しながら決めていきました。ガイドラインには新型コロナウイルスの基本情報や手洗いの仕方など、行動模範なども掲載をしております。

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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