ピルロ新監督の就任に期待と不安… 来季ユヴェントスの行末はどうなる?
サッリ監督の後任として新たにユヴェントスの監督に就任したクラブOBのアンドレア・ピルロ。監督経験の乏しい彼の抜擢にファンからも不安視する声は多い 【Getty Images】
選手としてのユヴェントスでの輝かしい功績
そんな細身のテクニシャンの才能が全世界に伝わったのが、2001年に移籍した後のACミラン時代だろうか。2001-02シーズンの途中で監督に就任したカルロ・アンチェロッティ監督の下で、トップ下ではなくローン中のブレシアでも経験したアンカーのポジションで攻撃のタクトを握ることで自身の才覚を発揮し始める。
その後の活躍は周知の通りである。ミラン時代には2002-03シーズンと、2006-07シーズンにチャンピオンズリーグの優勝を経験。リーグ優勝に関しては、インテルが黄金期を迎えていたこともあり2回に留まったが、2011年にユヴェントスに移籍して以降は4シーズン連続でリーグ優勝。特に加入初年度は、前年まで2年連続で7位とかつての輝きを失っていたビアンコネーロをセリエA復帰後初のスクデット獲得に無敗優勝という形で導く大活躍を見せた。
しかもピルロはただのOBではない。身体能力は低くともその技術と、何より知性を生かしたプレーで試合をコントロールするピッチ内の指揮官でもあった。だからこそユヴェントスファンに限らず、全世界のファンがこの急な監督人事に沸いているのだ。
拭えない不安要素
クリスティアーノ・ロナウドをはじめ、ユヴェントスには世界トップクラスの能力を持つ選手も多い 【Getty Images】
こうした下積みを経ていないピルロが、いきなりユヴェントスのように毎年優勝が義務付けられているチームを率いることがいかに難しい挑戦となるかは想像に難くない。事実、そんなピルロの監督就任を不安視する声も多い。
ミランやイタリア代表としてピルロとともに戦い、現在はナポリの監督を務めるジェンナーロ・ガットゥーゾはイタリア衛星放送『Sky Italia』にて「ユヴェントスで監督生活をスタートする彼は幸運だ。だが、監督という職業は偉大な選手としてのキャリアだけで務まるものではない。選手と監督は全く異なるものだ。常に勉強を重ねて懸命に働く必要がある。今に眠れなくなるだろう」と監督の先輩としてピルロへ忠告している。
確かに彼のプレーを見る限り戦術眼などに対しては何の疑問はないが、スター選手たちのコントロールに関しては未知数過ぎる。特にクリスティアーノ・ロナウドという、能力もエゴも世界的にもトップオブトップの選手がいるだけに、不安がゼロと言えばうそになる。
元日本代表監督でユヴェントスでの監督経験もあるアルベルト・ザッケローニもイタリア国営放送『Rai』のテレビ番組『ドメニカ・スポルティーヴァ・エスターテ』にて、ピルロ新監督就任について「フットボールにおいて監督交代は常にリスクを伴うものだ。サッリを招聘(しょうへい)したことも賭けだったが、ピルロにおいても同じことが言えるだろう。ユヴェントスのチーム全体の組織力が高いことは事実だが、このチームを管理するためには他の要素も必要だ」と述べている。
一方でザッケローニは続けて「今季のユヴェントスはプレーヤーの質の高さのおかげで優勝することができた。クラブはピルロにサッリ政権時には見られなかった戦略性の高い試合を見せること、そして選手への求心力についても期待していることだろう。監督経験のないピルロがその期待に答えることができるかどうかは分からないが、彼が周りの力を借りて選手の心をつかむことに期待したい」との見解を示している。
マンマネジメント面に対しては不安もあるが、ザッケローニのいう通り、周りの力をうまく使えば、それも乗り越えられるかもしれない。実際ユヴェントス内や周辺には彼の味方も多いのだ。