連載:遠藤保仁 632分の1の真実

遠藤保仁、“楽しんだ先”の632試合目 遊び心もすべてはサッカーのため

二宮寿朗
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最終回

試合のパフォーマンスを上げていくには、やっぱり練習と語る。練習後、グラウンドの外周を黙々と走る姿もおなじみとなっている 【写真は共同】

 練習グラウンドに遠藤保仁はいつも早くやってくる。

 コンディショニングの観点から夏でも長袖のトレーニングシャツやジャージを用意してもらっている。練習前のストレッチは入念に。数年前からヨガを取り入れているとあって、呼吸を強く意識するという。

「胸の奥まで空気を入れて、酸素を多く体内に取り入れることで体の可動域も広がっていくし、それがケガ予防にもなると思っていますから。練習後のストレッチでも意識してやっていますね」

 ウオーミングアップはボールと戯れながら。1日1日ちょっとずつ違うボールの感触を確かめながらチューンアップを済ませる。

 全体トレーニングに入れば、そこは勝負の場と捉える。40歳のベテランだろうが、18歳のルーキーだろうが年齢は関係ない。

「日本代表で試合をやってクラブに戻って(練習メニューを)軽くしてもらったことはありましたけど、練習で今の自分の100%を出さないと監督に認められないし、そこはずっとやっていること。試合よりも練習する時間の方が圧倒的に長いわけじゃないですか。試合のパフォーマンスを上げていくには、やっぱり練習なので。

 年齢のことは別に隠そうとも思わないですよ。すべてはフィールド上で決まると思っていますから。若い選手よりいいパフォーマンスを出していけば、おのずと試合にも出ると思うし、試合に出たら出たで違いを見せていけばいいだけのこと」

倉田秋「紅白戦でヤットさんが相手にいると今でも嫌」

 飄々(ひょうひょう)と見えるが、それはいつも接するチームメートが一番よく分かっている。

 倉田秋は言う。

「紅白戦でヤットさんが相手にいると今でも嫌ですね。こちらからしたら一番嫌なことをされる。ここにパス出されたら嫌やなと思った瞬間に、的確に出してきますから。あのサッカーセンスはホント、ヤバいっす(笑)」

 次の試合に向けてコンディションを上げて、センスを見せて、勝負の場で出し切れば終わりではない。練習後、グラウンドの外周を黙々と走るのはおなじみの光景だ。

 東口順昭は言う。

「もうずっとやってますもんね。ブレへんなって思いますよ。普通、選手って調子が悪かったり、試合で負け込んだりすると、ルーティンを変えたくなったりするじゃないですか。僕だってそうですよ。“これを続けていいんだろうか”って不安になってしまいますから。でもヤットさんはきっとそういうことも思ってない。あれだけ長く、同じことをコツコツ続けられるってすごいと思います」
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著者プロフィール

1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技 、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。 様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「 松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)「 鉄人の思考法〜1980年生まれ、戦い続けるアスリート」(集英社)など。スポーツサイト「SPOAL(スポール)」編集長。

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