波乱に始まり歓喜に終わった岡崎慎司の1年 スペインで取り戻した点取り屋の感覚

エルゴラッソ

劇的な1部昇格劇に貢献した岡崎(中央)だが、ここに至るまでは紆余曲折の道のりがあった 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 プレミアリーグ優勝を経験した日本人ストライカーの実力は色褪(あ)せていなかった。30代も折り返し地点に近づいてきているベテランFW岡崎慎司は、新天地スペインでも躍動し、スペイン2部に所属するウエスカで1部昇格に貢献した。しかしその道のりは、決して順風満帆だったわけではない。

突然訪れた予想外のトラブル

 昨年の夏、岡崎は2015年から4年間所属し、プレミアリーグ優勝も経験したレスター・シティから契約満了により退団。33歳にして新天地へ向かう決断を下した。監督交代による出場機会の減少が主な要因だったが、岡崎自身はレスター退団後もヨーロッパでのプレーを続けることを明言していた。その中で岡崎が次の舞台として選んだ場所は、かねて憧れの地と語っていたスペイン。次の活躍の場はスペイン2部に所属するマラガとなるはずだった。

 ところが、思わぬ不運が岡崎を襲う。所属するマラガがリーグのサラリーキャップ制度に違反していたために、選手登録が行えない状況に陥ってしまったのだ。新たに加入した岡崎はその影響を受け、シーズンが開幕しても選手登録が行われていないため、公式戦出場が認められないという異例の事態に巻き込まれてしまう。その後も事態は好転しないまま、迎えた9月2日の移籍市場最終日に、マラガから岡崎との契約解消が発表された。当時はまさかの出来事にショックを受けたファンも多かったはずだ。なんと岡崎はマラガで公式戦を1戦も戦うことなく、急遽(きょ)次の移籍先を探すこととなってしまったのである。

ウエスカが救いの手を差し伸べるも、シーズンは中断へ……

ウエスカでは、岡崎(左)本来の特徴である、攻撃的なFWとしての輝きを取り戻した 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 肝心のスペイン挑戦が白紙に戻り、窮地に陥っていた岡崎に手を差し伸べるクラブが現れる。そのクラブは、同じくスペイン2部に所属するウエスカだ。以前から岡崎に興味を示していたウエスカは、状況をみて即座に獲得を決断すると、マラガとの契約解消からわずか2日後の9月4日に岡崎のウエスカ加入が発表された。この急展開により、間一髪のところでスペイン挑戦の旅を継続することが可能となった。

 こうしてウエスカ移籍後、さっそく岡崎は第4節のスポルティング・ヒホン戦に途中出場し念願のスペインデビューを飾ると、第8節のジローナ戦ではラ・リーガ2部での初ゴールを決める順調な滑り出しを見せる。その後の前半戦は得点こそ少なかったものの、随所で結果を残した。後半戦ではコンスタントに得点を積み重ねていき、ウエスカの選手としてファンやチームメートから認められる存在へと成長を遂げていった。そして何より、守備的役割を担っていたレスター時代とは打って変わり、ウエスカでは純粋にFWとして得点にこだわる本来の岡崎の姿が戻ってきていた。そんな岡崎の調子と比例するようにチームの成績も好調で、十分に昇格を狙える位置を維持した状態で終盤戦へと向かう。

 そんな最中、3月には新型コロナウイルスがスペインで大流行した影響でリーグ戦が中断することになってしまう。岡崎自身は、中断直前の第30節エストレマドゥーラ戦、第31節フエンラブラダ戦で2試合連続ゴールを決め、コンディションの良さを見せていたところだっただけに、残念な知らせとなった。

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著者プロフィール

サッカー新聞エル・ゴラッソ。通称エルゴラ。国内外の最新サッカーニュースを日本代表の番記者、J1・J2全40クラブの番記者、海外在住記者が、独自の現地取材をもとに、いち早くお届けします。首都圏の駅売店およびコンビニエンスストア・関西地域の主要駅売店にて発売中。

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