波乱に始まり歓喜に終わった岡崎慎司の1年 スペインで取り戻した点取り屋の感覚
劇的な1部昇格劇に貢献した岡崎(中央)だが、ここに至るまでは紆余曲折の道のりがあった 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
突然訪れた予想外のトラブル
ところが、思わぬ不運が岡崎を襲う。所属するマラガがリーグのサラリーキャップ制度に違反していたために、選手登録が行えない状況に陥ってしまったのだ。新たに加入した岡崎はその影響を受け、シーズンが開幕しても選手登録が行われていないため、公式戦出場が認められないという異例の事態に巻き込まれてしまう。その後も事態は好転しないまま、迎えた9月2日の移籍市場最終日に、マラガから岡崎との契約解消が発表された。当時はまさかの出来事にショックを受けたファンも多かったはずだ。なんと岡崎はマラガで公式戦を1戦も戦うことなく、急遽(きょ)次の移籍先を探すこととなってしまったのである。
ウエスカが救いの手を差し伸べるも、シーズンは中断へ……
ウエスカでは、岡崎(左)本来の特徴である、攻撃的なFWとしての輝きを取り戻した 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
こうしてウエスカ移籍後、さっそく岡崎は第4節のスポルティング・ヒホン戦に途中出場し念願のスペインデビューを飾ると、第8節のジローナ戦ではラ・リーガ2部での初ゴールを決める順調な滑り出しを見せる。その後の前半戦は得点こそ少なかったものの、随所で結果を残した。後半戦ではコンスタントに得点を積み重ねていき、ウエスカの選手としてファンやチームメートから認められる存在へと成長を遂げていった。そして何より、守備的役割を担っていたレスター時代とは打って変わり、ウエスカでは純粋にFWとして得点にこだわる本来の岡崎の姿が戻ってきていた。そんな岡崎の調子と比例するようにチームの成績も好調で、十分に昇格を狙える位置を維持した状態で終盤戦へと向かう。
そんな最中、3月には新型コロナウイルスがスペインで大流行した影響でリーグ戦が中断することになってしまう。岡崎自身は、中断直前の第30節エストレマドゥーラ戦、第31節フエンラブラダ戦で2試合連続ゴールを決め、コンディションの良さを見せていたところだっただけに、残念な知らせとなった。