波乱に始まり歓喜に終わった岡崎慎司の1年 スペインで取り戻した点取り屋の感覚

エルゴラッソ

ひときわ輝きを放ったリーグ終盤戦

最終節では芸術的なヒールでのゴラッソを決めるなど、岡崎(中央)は37試合で12ゴールをマークしている 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 リーグ中止の可能性もあったが、幸いにも約3カ月の期間を経てリーグ戦は無観客で再開されることになった。そして中断期間が明けて、迎えたリーグ終盤戦で岡崎は真価を発揮する。昇格をかけたプレッシャーに加え、ほとんどの試合が中2日という厳しい日程の中にも関わらず、岡崎は第35節のカディス戦で貴重な先制ゴールを決めると、第37節のラス・パルマス戦、第39節のアルコルコン戦ではチームを勝利に導く決勝ゴールを決める大仕事を成し遂げた。自身のゴール数も二桁にのせ、調子の良さを周囲に証明した。

 そして、今季のハイライトとも言えるのが第41節のヌマンシア戦だ。この試合に勝てば最終節を残して2位以上が確定し、昇格が決まるという重要な一戦でまたしても岡崎は魅せる。2-0とウエスカがリードしている中で迎えた78分、右サイドの同僚FWラファ・ミルからのグラウンダーのクロスを鮮やかなバックヒールで流し込むゴラッソを決め、クラブの昇格を決定づけた。試合はそのまま3-0で勝利しウエスカ2度目の1部昇格が決定したのだ。こうして岡崎は自身が掲げた目標を1年で達成することとなった。

 リーグ最終節も、昇格を決めたウエスカはその勢いのまま1-0で勝利を飾る。すると、なんと首位のカディスが0-1で敗戦したことで、ウエスカは最終節で勝ち点2差をひっくり返して大逆転での2部優勝が決まるという、劇的なクライマックスで今シーズンを締めくくることとなった。

 この印象的な優勝劇に、岡崎の古巣レスターも公式Twitterで反応し、岡崎とウエスカの活躍を祝福している。

 最終的に、今季岡崎は37試合出場で12ゴールを記録し、チーム得点王としてクラブを昇格に導く活躍を見せるなど、移籍1年目から堂々たる結果を残した。この活躍を受け、ラ・リーガの公式Twitterも岡崎の今季の成績を取り上げて称賛している。

 ちなみに今季、岡崎はVARによって8ゴールも取り消されているそうだ。常にオフサイドラインギリギリで勝負している、いかにも岡崎らしいエピソードである。このデータは、レスター時代には果たせなかった純粋なストライカーとしての役割を、ウエスカで全うしていることを証明しているとも言えるのではないだろうか。

 こうして点取り屋としての感覚を再び取り戻した岡崎は、昇格決定後のインタビューで来季への意気込みを、「自分が2部に来てでも1部でやりたいという夢がこれで叶ったので、来シーズンはビッグクラブがひしめく1部の舞台で、ウエスカ初の残留を果たすために自分がゴールをとってチーム貢献できるように頑張りたい」と語っている。



 33歳という年齢で新たな地へ降り立ち、苦悩しながらいくつもの壁を乗り越え、自身の活躍でつかみ取った悲願の一部昇格。来シーズンはクラブ史上初の一部残留へ向けて、自身の夢の舞台と語るラ・リーガで躍動する“点取り屋”岡崎の姿に期待したい。

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著者プロフィール

サッカー新聞エル・ゴラッソ。通称エルゴラ。国内外の最新サッカーニュースを日本代表の番記者、J1・J2全40クラブの番記者、海外在住記者が、独自の現地取材をもとに、いち早くお届けします。

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