連載:ラ・リーガセミナー「#TodayWePlay」

なぜベティスはスペインで人気がある? 観客動員数、視聴者数は3強に次ぐ4位

工藤拓

ベティスはスペイン全国区の人気クラブ。労働者のチームとして愛されている 【写真:ロイター/アフロ】

 ラ・リーガがスペイン政府の文化機関インスティトゥト・セルバンテス東京と共同で開催するオンラインセミナー「#TodayWePlay」。7月20日の第7回はレアル・ベティス・バロンピエのビジネスディレクター、ラモン・アラルコン氏による講演が行われた。

その人気からレアルの称号を授かる

 導入でクラブとセビージャの町、そしてラ・リーガの注目度を示すデータなどを紹介した後、アラルコン氏は誇らしげにこう言った。

「ベティスを語る上で重要な点は、とても人気のあるクラブであることです。われわれのファンはスペイン中にいます。ベティスは多くの人々にとってトップ3のお気に入りクラブに入る存在なのです」

 彼が言う通り、ベティスは全国区の人気クラブである。ニールセン社の調査によれば、国内に散らばるファンの総数は146万9000人。これは国内5番目の多さだという。スタジアムの年間シート所有者は5万人おり、9000人以上が空席待ちのウェイティングリストに登録している。4万9000人弱の平均観客動員数、昨季のベティス戦のテレビ視聴者数2660万人は、いずれもバルセロナ、レアル・マドリー、アトレティコ・マドリーの3強に次ぐ4位の数字だ。

 クラブの規模も成績もビッグクラブとは差があるにもかかわらず、なぜベティスは人気があるのか。その理由はクラブの成り立ちにあるのだと、アラルコン氏は説明する。

「19世紀、フットボールはイングランドからスペイン南部の工業地域に伝わってきました。元々はそれらの工場のオーナーや幹部たちがプレーしていたのですが、ベティスは彼らのチームに入れない地元の労働者たちによって作られました。そのような由来もあり、ベティスは市民のチーム、労働者のチームとしてスペイン全土で愛される人気クラブになったのです。その人気により、王室からレアルの称号も授与されました」

 しかし、ベティコ(ベティスサポーター)最大の特徴は数より質、その熱量である。有名なのは「マンケピエルダ」の精神だ。

「われわれのファンはマンケピエルダ、つまり『たとえ負けても、常にチームに寄り添い続ける』というモットーで有名です。これまで何度もスペインのベストサポーターに選ばれています。2部に降格した際、1部在籍時より年間シート所有者の数が増えたこともありました」

ユーチューブ再生回数は欧州で10位

ビジネスディレクターのラモン・アラルコン氏は積極的なSNS展開を強調した 【スポーツナビ】

 続いてテーマは、今やサッカークラブのブランディングには欠かせない存在となったSNSにおける戦略へ。いわく、昨季のSNSのエンゲージメント総数は7800万回以上を記録。2017年8月から18年5月にかけてのユーチューブの再生回数は2740万回を超え、国内ではバルセロナ、レアル・マドリーに次ぐ3位、ヨーロッパ全体でもマンチェスター・ユナイテッドやアーセナルに続いて10位に入ったという。

 ベティスはクラブ独自のメディアも運営しており、オンラインで視聴できる「ベティスTV」や「ラジオ・ベティス」を配信。それらのコンテンツはSNSでも活用されているのだと、アラルコン氏は力説する。

「こういったSNSの成長は人気度の指標となるだけでなく、クラブのリアルな日々を伝えるという意味でも重要視しています。われわれはそれぞれのアカウントで特有のコンテンツを作っており、インスタグラムとツイッターでは内容が異なります。国別のアカウントでは内容を翻訳するだけでなく、オリジナルのコンテンツも作っています」

 市民のクラブであるベティスは、総合スポーツクラブとしての側面も持つ。16チーム計1000人以上の選手を抱える男子サッカーのアカデミーに加え、女子サッカー、フットサル、バスケットボールのチームはトップリーグに所属。他に障害者リーグ「ラ・リーガ・ジェヌイン」に参加しているサッカーチーム、eスポーツのチームなども抱えている。その理由をアラルコン氏は次のように説明している。

「われわれは市民のクラブとして、ひとりでも多くの、あらゆるタイプの人々に近づけるよう、さまざまな競技に参加することを決めました。多くのスポーツチームを抱えることで毎週末、多くの子どもたちがベティスのユニホームを着るようになり、クラブとのシンパシーを生み出すのです」

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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