MLB、7月開幕に大きく前進? 選手とオーナーの“銭闘”はまもなく決着か
コミッショナーと選手会が直接会談
マックス・シャーザー「ロブ・マンフレッドとオーナーたちは勝手に前言を翻している」 【Getty Images】
6月17日、MLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーが発表したそんな声明文は、ファンに期待を持たせるには十分であった。こんな前向きなコメントはいつ以来か。まだ合意したわけでなく、越えなければいけないハードルは多いとしても、これまでの泥沼交渉と比べればはるかにポジティブに感じられる。
・70日間で60試合を開催
・開幕は7月19日か20日
・年俸は日割りで全額を保証
・2020、21年はプレーオフ進出チーム枠が拡大(各リーグ8チームずつ)
こうしてやっとポジティブな地点にたどり着くまで、MLBと選手会の話し合いは極めて難航した。争点は新型コロナウイルスの中でプレーするための安全対策ではなく、前述通り、お金。もちろんMLBはビジネスなのだから、互いに利益を主張しあうこと自体は理解できる。オーナー側がパンデミック下で赤字を増やしたくないことも、健康を危険にさらす選手が大幅減俸を飲みたくないことも、それぞれ当然ではある。
ただ、たとえそうだとしても、5月上旬には再開案が出されながら、以降、延々と責任のなすりつけ合いを繰り広げたのはいただけなかった。両者のメディアを通じたやりとりは皮肉と批判に満ちており、周囲をうんざりとさせるもの。特に強硬姿勢が目立ち、一部は今季のキャンセルを望んでいるとされたオーナーサイドへの批判は日に日に大きくなっていった。それと同時に、オーナー、選手会の両方と意思の疎通が図れていないように見えたマンフレッド・コミッショナーへの風当たりも強くなる一方。その反発は、15日、ESPNの番組に出演したコミッショナーが「(今季開催は)自信がない。残念ながら100%実現するとはいえない」と答えたことでピークに達した。
シャーザー「いつ、どこで試合をやるのか言ってくれ」
マックス・シャーザー(ナショナルズ)「ロブ・マンフレッドとオーナーたちは勝手に前言を翻している。ファンにこんな仕打ちはふさわしくない。もう1度言おう。いつ、どこで試合をやるのか言ってくれ」
6月11日のMLBの提案(年俸は日割りの70%で72試合)では選手は今季年俸の31%を受け取るはずだったが、今回のプランではそれが37%までアップ。今後、さらに継続した話し合いの中で、オーナー側が年俸の日割り全額を崩さない限り、遠からず合意に向かうことも不可能ではないだろう。
もちろんここまでこじれにこじれたのだから、依然として楽観はしきれないという声もある。トップの2人が枠組みで合意したとしても、最終的には各チームのオーナー、代表が一枚岩になる必要がある。選手会がさらなる試合数の増加をもくろみ、MLBがそれを拒むか、再び給料のカットを持ち出すようなことがあれば、また泥沼にはまり込むこともありえるのかもしれない。
これらの懸念をクリアし、メジャーリーグは今夏、全米に球音を響かせることができるのか。これからしばらくが正念場だろう。コロナウイルスと人種差別問題で大揺れに揺れるアメリカで、ミリオネア(選手)とビリオネア(オーナー)の“銭闘”はまもなく大詰めを迎えようとしている。
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