コロナ禍における韓国プロ野球の対策 NPBより早い開幕、工夫するにも限界が?
独自アプリで選手、家族の健康を管理
無観客で開幕した韓国プロ野球。その対策にNPBやMLBも注目しているという(写真はSKワイバーンズvs.ハンファ) 【写真:ロイター/アフロ】
NPB(日本野球機構)が3月2日にJリーグとともに「新型コロナウイルス対策連絡会議」を設置したように、韓国は同月16日に予防医学の専門家なども参加するコロナ対策のタスクフォース(プロジェクトチーム)を構成、運営を始めた。
同19日にはコロナ対応マニュアルを各球団に配布。約1カ月後の4月16日には内容をアップデートさせた第2弾が各所で共有された。NPBでも入手したというそのマニュアルは、A4サイズで44ページにわたる。
項目は大きく以下の9つに分かれている。
1.新型コロナウイルスの基本事項
2.KBOリーグの(新型コロナに対する)基本方針
3.コロナ対応プロジェクトチームの運営概要
4.選手、関係者の感染予防のための遵守事項
5.審判、記録員などの感染予防のための遵守事項
6.発症、感染の恐れがある場合の対応
7.外国人選手の入国管理の方案
8.シーズン開幕時の運営方案
9.メディアによる取材、中継制作のガイドライン
この中で選手に関しては、毎朝起床後と球場に向かう前に検温が義務付けられ、その数値をKBO独自のアプリに入力。家族の健康状態に異常がある場合も報告が必要と記されている。
選手個々の体調管理のほか、球団が最も神経を尖(とが)らせているのが、選手の外部との接触だ。マニュアルにはビジターチームが球場に到着してからロッカールームに入るまでの動線が、全球場分、細かく記されている。
また、試合中に関しては素手でのハイタッチや握手の自粛、唾を吐くことや噛みたばこの禁止、ベンチ裏でのマスクの着用程度だが、一、三塁コーチにはグラウンド上でもマスクの着用が義務化され、審判もマスクと衛生用のゴム手袋の使用が必須となっている。
何よりつらかった「開幕が決まらない」
チアリーダーもマスク着用。審判や一、三塁コーチは試合中もマスクが義務付けられている 【写真:SKワイバーンズ】
選手や球団関係者だけではなく、球場に出入りする外部業者であっても発熱症状があれば、各地に点在する検査場で検査を受けることを求めている。また症状がなくても外部業者に事前の検査を求め、陰性判定が出た人のみ、球場内に入れるようにしている球団もある。
マニュアルには発熱症状があり、PCR検査を受けた16の事例とその後の対応が記されている。検査の結果はいずれも陰性だった。
KBOリーグ10球団の中でも、2月19日に集団感染が発覚した大邱(テグ)を本拠地とするサムスンライオンズの場合、この問題に他の球団よりも深刻に対応していた。球団職員はこう話す。
「3月上旬にキャンプ地から帰国後、他球団との練習試合が始まる4月21日まで、選手の運営チームを除く社員全員が在宅勤務だった。不便かどうかというよりも『そうしなければいけない』という気持ちが強かった。もし自分が感染したらリーグ全体がストップする。それは避けなければいけない、とみんなが思っていた」
この球団職員に5月5日の開幕に至るまで、何が最も精神的に厳しかったかを尋ねると、「職員だけではなく、選手たちもそうだと思うが、『開幕がいつか決まらない』という不安感を抱えることが一番つらかった」と振り返った。