最新技術でコロナと戦う立花学園 できることに全力を注ぎ「その時」を待つ
Twitterアカウントは高校野球部全国2位のフォロワー数
17年から2年連続で夏の神奈川大会8強に勝ち進むなど、着実に力をつけている立花学園(写真は2019年秋のもの) 【写真提供:立花学園野球部】
「横浜スタジアムで戦うことをイメージしてほしくて、この背景にしています。夏の大会、何とかやってほしいのが本音ですね」
今年で34歳となる、就任4年目の志賀監督。2017年夏、18年夏ともに神奈川大会で8強に勝ち進み、横浜スタジアムで戦うも、1度目は日大高、2度目は横浜に敗れた。
まだ甲子園の経験はないが、19年1月から始めた野球部公式ツイッターの効果で、ツイッター界では知名度が高い。ほぼ毎日、立花学園ならではの取り組みを発信していて、フォロワー数は5月12日時点で1982人。高校野球部の公式アカウントとしては、武田(広島)に次ぐ多さとなる。
あえて、情報を発信しているのには狙いがある。志賀監督に意図を聞くと、4つのキーポイントを挙げてくれた。
1.見られている意識を持つ(専用球場は県西部の松田町にあり、周りは山と畑ばかり。ネット上であっても、誰かに見られている意識を持つことで、行動が変わる)
2.ネットリテラシー教育(ネット上での発信が、良くも悪くも影響を与えることを体感する)
3.ブランド化(球の回転数や回転角度を計測できる「ラプソード」やドローンなど、最新の機器を活用している様子を発信。他校との差別化を図り、立花学園で野球をやっていることに誇りを持つ)
4.立ち読み感(取り組みを見てもらうことは、書店やコンビニで雑誌を立ち読みする感覚に近い。立花学園の野球部を知ってもらえるチャンス)
現在の臨時休校期間中も、吉田大育コーチが中心になって、ツイートを続けている。指導者と選手がオンラインでつながり、「リモートベースボール」に取り組む様子を発信中だ。
朝7時からZoomでミーティング
オンラインミーティングでは指導者だけが話すのではなく、選手同士で行うプレゼンを積極的に取り入れている 【写真提供:立花学園野球部】
「3月のはじめはZoomを使ったミーティングで、サインやフォーメーションの確認をしていました。4月の県大会の開催が決まると同時に、『実戦練習を始めるから』と伝えていたのですが、県大会の中止が決定。練習の再開がいつになるかも分からない。そこからは思考を変えて、いろいろなことをやるようになりました。一番の心配が、生活リズムが乱れることだったので、日曜以外は朝7時からZoomでミーティングを開いています。メッセージだけでは心が離れていく心配もあるので、顔を見て話せるのがいいですね」
部員は、入部予定の1年生も加えておよそ130名。全員が自分のスマートフォンにZoomをダウンロードしている。ミーティングでは、指導者からの話だけでなく、選手同士でプレゼンも行っている。テーマは、野球とは関係のないことが多い。
「大会があるか分からない状況で野球のことばかり考えさせても、ちょっと遠すぎるので、野球以外のことをあえて学ぶ時間にしています。大学の経済学部に興味を持つ3年生は、お金に関することを調べて発表したり、動物看護に興味がある部員は殺処分について喋ったり、さまざまですね。自分の考えを発表する訓練になっています」
4月からは教え子や知り合いに頼んで、30分ほどのZoomセミナーを開くようになった。社会で活躍する大人から、エネルギーや刺激をもらっている。
「共通していたのは、『失敗してもやり直しがきく年齢だから、まずはやってみよう』ということでした。海外留学に興味を持つ生徒もいたので、学びの機会になりました」
また、保護者に向けて、Zoomで説明会を開いた。議題は「大学野球」だ。どのような視点で大学を選び、4年間野球をするとなればどのぐらいのお金がかかるのか。例年は練習試合で保護者が集まっているときに直接話していたが、今年は集まれる状況ではない。それならば……と思いついたのが、Zoomでの説明会だったという。