連載:逆境に立ち向かう球児たち

最新技術でコロナと戦う立花学園 できることに全力を注ぎ「その時」を待つ

大利実

「この期間をどれだけ意味のあるものにできるか」

できることに全力で取り組みながら、部活動再開の日を待ち望んでいる 【写真提供:立花学園野球部】

 朝のミーティングが終わったあとは、それぞれの自宅近くで、3密を避けたうえでの自主練習が始まる。監督と選手はすぐにオンラインでつながることができるので、「素振りを見てください」というリクエストも多い。Zoomを使えば、遠隔指導も可能となる。

「動画を見せながら、客観的に説明することができます。映像があることで、生徒も理解が深まる。動画を活用することは、部活が再開してからも続けていきたいですね」

 自主練習の内容は自由だ。何をやろうとも構わないし、やらなくてもいい。そこは、彼らのことを信じている。

「メニューは一切与えていません。冬の練習から、各自がやりたい練習を選ぶやり方にしています。バッティング練習をやるとしたら、時間だけは決まっていて、その中で何をやるかは自由。目指すべきスイングスピードや体重は設定してあり、そこにどう持っていくかは選手次第です。自己管理能力が高い選手は、この休校期間中にも成長しています」

 何をどのぐらいやったかは、日々の練習内容やコンディションを記録するアプリ「Atleta(アトレータ)」を活用し、指導者全員が把握できるシステムになっている。

「この期間をどれだけ意味のあるものにできるか。学校が再開したときに、その差が大きく出るのは間違いありません。指導者も選手も、今できることに最大限の力を尽くしていくことが大事になるはずです」

 志賀監督自身、どうしても会いたかった県外の指導者に、Zoomを通して話を聞くことができた。本当なら直接足を運びたかったが、現状では難しい。「ぜひ、Zoomで」とお願いすると、快く引き受けてくれた。「もう本当、Zoomのおかげですね」。ただ、チームで1カ月近く当たり前のように使っていると、マンネリを感じる選手も出てきたという。

「昨日『どうしたらZoomをもっと楽しく使えるか、みんなの案を聞かせてほしい』と問いかけたんです。そうしたら、『個別に話したい』と言ったので、5〜6人のグループを作って、ブレイクアウトセッションをやるようにしました。面白そうに話していましたね」

 本当は、実際に顔を合わせて会話できるのが一番いいが、現状では難しい。今できることに全力を注ぎながら、部活動再開の日を待ち望んでいる。

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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