連載:「パ・リーグ優勢の時代」はなぜ来た?

楽天・石井GMが直面する「パ」の過酷さ “2強”の存在がリーグを強くする

小西亮
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昨オフに積極補強を敢行した楽天。強いパ・リーグで勝ち抜くために編成のタクトを振るう石井一久GM(左)に話を聞いた 【写真は共同】

 パの覇権を奪うのは、想像を絶するほど難しい。東北楽天の石井一久ゼネラルマネージャー(GM)は、チーム編成を統括する身として日々そう痛感している。「力が拮抗(きっこう)している」という現在のパ・リーグを作り上げてきた一因として、「世代No.1」と呼ばれる投手たちの存在が大きいとみている。現役時代は東京ヤクルト、埼玉西武に在籍して両リーグでプレーした元メジャー左腕は、自身の経験として感じてきた配球の違いも指摘。超一級品の球を攻略しようとして打者も成長していく好循環に、し烈極めるパの源流があるのだろうか――。

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“超一級品のストレート”に感じる「投手力」の優位性

石井GMは、現役GMとして今のパ・リーグの現状をどう分析しているのだろうか? 【撮影:スリーライト】

――過去15度の交流戦でセ・リーグが勝ち越したのは2009年の1度のみで、パ・リーグ優位が揺るがない近年。その要因は「投手力」にあると以前おっしゃられていましたが?

 そうですね、それはすごく思いますね。ひとつは、注目されるピッチャーがパ・リーグに結構入っている。昨年のドラフトは、それが顕著に出ていると思います。大船渡の佐々木(朗希)くんに行ったのが、西武、日本ハム、ロッテ、楽天。パ・リーグしかいない。星稜の奥川(恭伸)くんには巨人、阪神、ヤクルトで、すべてセ・リーグ。これは2人のどっちが上とか下とかを言っているのではなく、その年に一番騒がれたピッチャーにパ・リーグは行く傾向にありますよね。佐々木くんなんて、どこが指名権を獲得しようが、パ・リーグに行くわけですから。

――確かに近年のドラフトを見ても、09年の菊池雄星(西武〜マリナーズ)、12年の大谷翔平(北海道日本ハム〜エンゼルス)、13年の松井裕樹(楽天)、14年の有原航平(日本ハム)ら目玉と言われた投手はパ・リーグ球団に入っている印象があります。

 やっぱり、ドラフトで多くパ・リーグに行っているなっていうのは感じますよね。その根拠は何もなくて、僕の勝手な印象なんですけどね(笑)。そういう「世代No.1」と呼ばれたピッチャーたちが順調に育っているのも確かで。まあ、ソフトバンクの千賀(滉大)くんは育成出身なので別ですけど、単純にレベルの高い投手がパ・リーグに入ってきているという感じはしています。セ・リーグに超一流のピッチャーがいないっていう話じゃないですよ。巨人の菅野(智之)投手なんかは、トータルで抑えにいく超一流ですよね。

――そんな球界を代表する投手たちに共通しているのは、強烈な直球を投げるという点でもあります。

 パ・リーグのピッチャーは真っすぐの力が強い。精神論も込みで言うと、一番打ちにくいのって気持ちの入った真っすぐだと思うんです。それに対して力負けしないように打ち返すっていうシンプルな力比べですよね。ただ、それは単純なものではない。ただ球が速い、強いというだけじゃなくて、ハードスライダーやハードフォークを投げられるレベルが高いピッチャーが多い。真っすぐがありながら変化球もあって、また真っすぐにも対応しなければいけないという状況で日々やっていることが、バッターにとっても相乗効果になっているんじゃないかと。
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