連載:FC東京 首都クラブの矜持「強く、愛される」

FC東京、人を呼び込むための仕掛けの数々 「王道」「本物」になって23区攻略へ

馬場康平
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2018年にマネジメントダイレクター兼マーケティング統括部長に就任し、さまざまな施策を仕掛ける川崎渉。その効果は来場者数に早くも表れている 【飯尾篤史】

 FC東京が進化しているのは、ピッチ内にとどまらない。この2シーズン、チケッティングやプロモーション、マーケティングにおいて新たな試みにトライし、攻めの姿勢を貫いてきた。今季のホームゲームの平均入場者数が3万人を超えているのは、そうした施策の成果だろう。首都クラブのあるべき姿とは果たして何か。川崎渉マネジメントダイレクター兼マーケティング統括部長にこれまでの施策の数々と、クラブの未来像について聞いた。

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ビッグクラブは街クラブの延長線上にない

――これまで川崎さんは、いくつかのJクラブでマーケティングやプロモーションに関わってこられていますね。

 そうですね。経営コンサルティング会社からDeNAで新規事業を立ち上げ、その後、東京ヴェルディ、名古屋グランパスを経て、2018年の2月からFC東京で仕事をしています。

――実際に中に入ってみてどう思いましたか?

 まず感じたのは、20年間地域密着を掲げ、積み上げてきたものがあるということでした。その一方で、クラブ全体としてこのままでいいのか、という危機感を抱いているということも感じました。

 これまで“街クラブ的”にやってきて、積み重ねてきたものがある。それはクラブにとって大切なことで、だからこそ今の数字があるのだと思います。ですが、首都クラブやビッグクラブは、街クラブの延長線上にはないとも思っています。そこに関しては、ビジネス面も含めてやらなければいけないことは多いと考えています。

――まず手掛けたのは、どういった事業でしたか?

 最初に着手したのは、チケットを含めた集客の部分です。より多くの方に来ていただくため、イベントを含めた施策を打ち出していましたが、これまでは次につながっていなかった。せっかくチケットを購入していただけても、丁寧にフォローしているわけでもなく、試合日が来て「来場客数はこれだけありました。じゃあ次」という流れになっていた。それを組織として積み上げられるようにしたいと考えたのです。

 お客さんの声をまったく聞いていないわけではなかったと思います。ただ、ホームタウンを含め、手の届く範囲の声を拾う一方で、プロモーションとしてスタジアムに芸能人のゲストを呼んだりもする。こうした極端な振れ幅の中で、その間が存在しなかったので、これまでつながっていなかった点と点を、線としてつなげなければいけないと感じました。

――そのために具体的にどんな取り組みをしたのでしょう?

 これまでは、チケットの販売チャネルを広げる方向性で動いていました。根底にあったのは、少しでも興味を持った方々が、自分の生活圏内で購入できるようにしておきたい、という考え方だったと思います。その考えを否定するつもりはありませんが、そこまで広げた結果、顧客データを含めて統合ができていなかったんです。

 トータルでの販売数は分かりますが、例えば、ある試合でチケットを購入したAさんが、何回目の来場かも分かっていなかった。毎試合スタジアムが満員になる人気コンテンツであれば、販売チャネルを広げるところまでで十分だったかもしれません。ですが、初めて観戦に来たお客さんに少しずつファン・サポーターになってもらうために、顧客と接点を持ち、より良い情報を届けられる仕組みにしなければいけないと思いました。

 そこで18年からの変更に向けて動き出し、19年から「Jリーグチケット」をチケット販売のメーンに変更しました。データベースを活用したマーケティングを推進していくために、ファン・サポーターのみなさまに「JリーグID」を取得していただくことも目的でした。「JリーグID」を取得していただくことで、チケットやグッズの購入や、来場履歴などが一括で管理できるようになりました。これにより顧客認識の精度が増し、より一人ひとりに則した有益な情報などを直接届けられるようになりました。
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著者プロフィール

1981年10月18日、香川県出身。地域新聞の編集部勤務を経て、2006年からフリーに。現在、『東京中日スポーツ』等でFC東京担当記者として取材活動を行う。2019年に『素直 石川直宏』を上梓した。

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