連載:FC東京 首都クラブの矜持「強く、愛される」

森重真人の覚悟と健太トーキョーの進化「意図的に優勝という言葉を発している」

飯尾篤史

FC東京在籍10年目、気づけばチーム最古参。森重真人はリーダーとして、キャプテンの東慶悟をサポートしながら、チームをけん引している 【新井賢一】

 2010年に大分トリニータから加入して、今季で10年目。その間、獲得したタイトルは12年元日の天皇杯ただひとつ。「少なすぎますよね」と森重真人は苦笑する。FC東京にとって悲願のリーグ優勝――。しかし、森重に悲壮感はまったくない。2年前に負った足首のケガは癒え、新境地を見いだしたセンターバックは長谷川健太監督とチームメートとの挑戦を、心の底から楽しんでいる。

悲観していない天王山・鹿島戦での敗戦

――9月14日に行われた天王山の鹿島アントラーズ戦(●0-2)に敗れてしまいました。試合後、何を思ったのか。本音を聞かせてください。

 本音ですか? やっぱり、決めるか、決めないか、その差が出たなって。

――それを痛感した。

 ええ。攻めているチームが決められずにいると、相手に仕留められてしまうっていうのは、サッカーではよく起こること。まさしく、そういう展開だったなと。でも、悲観することはなかったですね。何が問題なのか、はっきりしているので。むしろ、ラスト9試合というタイミングで鹿島と対戦して、ああいう結果になったのは、良い意味で、良かったんじゃないか、って捉えています。

――気持ちの整理がすぐにできた、と。

 気持ちの整理というか、そういう流れなんだなと。起きた出来事には必ず理由があるというのが、自分の考え方なので。だから、大一番で鹿島に敗れたことにも、理由は必ずある。そのこととラスト9試合のタイミングで向き合えるのは、良いことなんじゃないかな、って思いましたね。

少しずつ歩みを進めて、ひとつの山場に

長谷川監督の下、日々充実したトレーニングを積む森重。代表に選ばれている橋本や室屋、永井ら中堅から良い刺激を受けてもいる 【新井賢一】

――鹿島戦のあと、相手の内田篤人選手が「FC東京の背中がハッキリ見えるところまで僕らが来て、彼らが、どんなプレッシャーを感じているのか分かる」と話していました。やはり、追われる者のプレッシャーを感じていますか? それとも、そのプレッシャーを楽しめている?

 いや、プレッシャーを感じるも何も、僕たちは優勝したことがない。最終的に1位で終えるために戦っているので、今首位だろうと、10節を終えた時点で1位だろうと、まったく関係ないですね。最後にどこにいるのかが大事。それを分かっているので、僕はあまり気にしてないですね。

 ただ、この先「プレッシャーがあるんじゃないか」って、周りから聞かれることが増えると思うので、必要以上に意識してしまう選手がいるかもしれない。そういう意味では、周りの雑音との戦いでもあるな、と感じています。そこは、やってみないと分からない。でも、鹿島戦で課題が明白になったので、そこにみんなで取り組めるのは、ひとつの救いだと思います。

――その課題とは?

 もちろん、決めきるところ。決められなければ、引き分けか、負けなので。攻撃の選手たちだけじゃなく、みんなで取り組んでいかないと、勝ち点を積み上げていくことは難しいと思っています。

――鹿島戦には敗れましたが、それでも今季のFC東京が、隙のないチームになってきたのは確かです。1-0で勝ちきれるようになったし、連敗も一度きりと、勝負強くなってきた。2010年から在籍する者として、どこが変わってきたと感じていますか?

 まずはそうやって、「勝負強くなってきた」と言ってもらえることが、大きく変わったところですよね(笑)。これまで散々、「勝負弱い」と言われてきたし、中位をウロウロしているチームだと言われてきたので。この時期まで優勝争いをしているというのが大きな変化だと思います。ただ、それもタイミングだと思っていて。

(高萩)洋次郎くんや丹羽(大輝)ちゃん、僕といったベテランがいて、中堅では(東)慶悟がキャプテンとしてチームを引っ張ってくれている。それに、(永井)謙佑、(室屋)成、(橋本)拳人、(ナ・)サンホは代表にも選ばれて充実しているし、(渡辺)剛をはじめ若手も出てきて、今、すごくバランスがいい。それに昨季、経験豊富な監督が就任したことも、タイミングのひとつ。東京が少しずつ歩みを重ねてきて、ようやく今、ひとつの山場を迎えているんじゃないか、って感じています。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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