勝負勘光った中村匠吾、暑い中で強さ発揮
MGC男子レースを上野裕一郎氏が解説
MGCを制した中村匠吾(写真)と2位の服部勇馬が東京五輪のマラソン代表に内定。序盤から目まぐるしい展開となったレースを上野裕一郎氏が解説
MGCを制した中村匠吾(写真)と2位の服部勇馬が東京五輪のマラソン代表に内定。序盤から目まぐるしい展開となったレースを上野裕一郎氏が解説【写真:築田 純/アフロスポーツ】

 2020年東京五輪マラソン日本代表選考レースの「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」は15日、東京・明治神宮外苑を発着点とする42.195キロのコースで行われ、中村匠吾(富士通)が2時間11分28秒で優勝、服部勇馬(トヨタ自動車)が2時間11分36秒で2位に入り、ともに代表に内定した。


 日本記録保持者の大迫傑(Nike)は服部から5秒遅れの2時間11分41秒で3位。東京五輪の男子マラソン代表の残り1枠は、12月から20年3月にかけて行われる「MGCファイナルチャレンジ」で派遣設定記録2時間5分49秒を切るランナーの最上位が選ばれるが、記録を切る選手が現れなかった場合は、大迫が代表に内定する。


 勝負を分けたポイントとはどこか。立教大陸上競技部で男子駅伝監督を務める上野裕一郎氏に解説いただいた。

「中村にもワンチャンスある」指導者の見る目もポイントに

――設楽悠太選手(Honda)がスタートから飛び出し、37キロ過ぎに2位集団が逆転、その中で中村選手がスパートをかけ優勝を勝ち取りました。レースを振り返っての感想を教えてください。


 設楽選手がスタートから(飛び出して)行くと予想している人はいましたし、事前に自身が掲げていた30キロから仕掛けるかどちらかかと思っていたので、選手も観ている人も、彼がスタートから行くのは何となく分かっていたのではと思います。設楽選手が大差で先行したので、後続の選手の中には、集団から2人(が内定する)というのはないと思っていた人もいたかもしれません。それが、思惑とは違う結果になり、設楽選手が落ちてきて後ろの選手が代表2枠を確保しました。私は設楽選手は(代表の1枠を)取れるかなと思いましたが、暑さが後半に響いたと思いました(結果は14位)。


――設楽選手は25キロ以降、だんだんと失速していきました。


 私も前半から行くタイプで設楽君とは似ていると思いますが、気温が上がっている中で最初から行くとなると絶対的なスタミナが必要ですし、能力だけではどうしようもならないのがマラソンかなと、今日の設楽選手を見ていて思いました。スタートから飛び出したのは勇気ある行動だったと思いますが、代表は2枠と決まっていたので……。彼は今後、そうした部分を学んでいくのではないかと思います。


――その中でMGCを制したのは中村選手でした。


 実は10日ほど前、菅平で最終調整をしている中村選手に偶然会ったのですが、「調子は悪くない」と言っていて、コーチの方々も「暑くなれば中村にもワンチャンスある」と。「暑さには強い」ということもおっしゃっていたので、面白い存在かなと思っていました。指導する福嶋(正)監督が、暑さという部分を読んで、練習メニューを組み立ててやってこられたのは、中村選手の能力ももちろんですが、指導する人たちのノウハウもすごく大事だったのではないかと思います。


 また、彼は最後の最後、自分の決めたスパートで行き切る能力があります。トラックでも「ここから出る」というところで出ますし、マラソンでも勝負勘と言いますか、自分でいけると思ったところで思い切って行って、最後まで行き切る。それは、高校・大学と培われてきたものがあるのではと思います。

ゴール直線で大迫(左端)をかわした服部(中央)。ラストスパートをかける力を脚に残していた
ゴール直線で大迫(左端)をかわした服部(中央)。ラストスパートをかける力を脚に残していた【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――2位には、大迫選手とのデッドヒートを制した服部選手が入りました。


 よーいどんで走ったら大迫選手の方に断然分があると思いますが、42キロ走ってきていて、最後に競り合うための脚が大迫選手には残っていなかった。一方の服部選手は、スプリントが決して得意というわけではありません。それでも勝ち切れたのは、自分の体を知っていて、粘り強さがあってのこと。もっと上のタイムを狙うようなレースもいけるのではないかと、今回あらためて思いました。


――3位の大迫選手についてはいかがでしょうか。


 彼は日本記録保持者ということで力もありますし、中村選手がスパートをかけた時にしっかり反応して勝ち切るというのを考えていたのではないかと思います。ただ、そこまで脚を残せなかった。私が言うのはおこがましいですが、彼は自ら米国に渡るなど、(トラックを含めて)どの種目でも自分で物事を進めていく力のある選手である一方、マラソンに対してはもう少しストイックになってもいいかなと思いました。でも、さすがの調整力と言いますか、途中棄権した今年3月の東京マラソン以外はすべてピンポイントで(ピークを)合わせてきています。そういう意味では、単身で米国に渡ってやってきたことが大きかったと思います。

構成:スポーツナビ

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