勝負勘光った中村匠吾、暑い中で強さ発揮 MGC男子レースを上野裕一郎氏が解説
最後の代表1枠を懸けた争いにも注目を
東京五輪への切符をつかんだ中村(左)と服部に上野氏が期待することとは 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
今までのレースを見る限り、中村選手は試合でのレース勘、勝負勘は持っていますので、ケガをしないで継続した練習をして、暑さの中で東京五輪で粘りを見せれば、高い順位にたどり着けるのではないかと思います。
服部選手は汗をかくタイプなので暑さに弱いように思われがちですが、今日のように暑い中で汗をかいても走り切って、暑さへの対応能力も見られたので、面白い存在だと思います。服部選手はマラソン適性が高く、後半に(ペースが)落ちない。優勝した昨年12月の福岡国際マラソンもそうでしたが、彼は後半にペースを上げられる脚を持っています。30キロまでそんなにすごいハイペースにならなければ(力を)蓄えられますし、後半10キロをうまく上げていく能力は、中村選手より服部選手の方が上です。そういった能力が高いのは、マラソン適性の高さだと思います。
マラソンは42キロあります。いくらスピードがあって、25キロまでどれだけ余裕を持っていても、そこからの17キロを走り切れない。でも、彼らはそこまでサラサラと走って、その先もサラサラと行ってしまう。トレーニングだけではどうにもならない部分の能力が、服部選手はかなり高いのではと思います。中村選手もそういった部分はありますが、彼にはレース勘があります。ここぞという勝負所で仕掛けられる度胸も、五輪では強みになるのではと思います。
――4位以下には、長い距離を淡々と走れる選手が入ってきた印象です。今冬からは、代表の最後の1枠を決める「MGCファイナルチャレンジ」が始まりますが、彼らへの評価はいかがでしょうか。
第2グループはハイペースではなかったので、長い距離や暑さが得意な選手が前の方に残ってはいました。ただ、MGCに関しては上位3人に入らないと意味がない大会です。ですから、こうした経験をした選手の中で、(「MGCファイナルチャレンジ」の内定条件である)2時間5分49秒を切って代表を狙うという方向転換をできる選手が何人出てくるか。設楽選手や井上大仁選手(MHPS)ら若い選手の動向が楽しみです。逆に、ベテランの選手はこれで引退する選手も出てくると思います。今井正人選手(トヨタ自動車九州)や中本健太郎選手(安川電機)、佐藤悠基選手(日清食品グループ)、山本浩之選手(コニカミノルタ)は同世代なので、彼らがマラソンを辞めてしまうのか、もう一度挑戦するのかというのも楽しみにしています。
国内レースで2時間5分台を出すのは正直難しいと思います。3位の大迫選手は代表に内定したわけではありませんが、彼は今後のレースの結果を待つことになります。その中で、他の選手が2時間5分49秒をどう切っていくかを、これから見ていこうと思っています。