「読む力」と「精神力」でスパート対応を 箱根1区ココに注目 中村匠吾(駒大OB)

折山淑美
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 今年も箱根駅伝が近づいてきた。東京・大手町から箱根・芦ノ湖までの全10区間、合計217.1キロのコースでは、さまざまな難所が選手を待ち受ける。コース攻略の鍵となるのはどこか。走った者だけが知りうる意外なエピソードとは。過去に箱根路を彩った名ランナーたちが、自身が走った区間を解説する。

 往路1区(21.3キロ)は、駒澤大OBで現在は実業団の富士通で活躍する中村匠吾さん。箱根路は3度走り、3年時(2014年大会、区間2位)と4年時(2015年大会、区間賞)で1区を担当。4年時には主将としてもチームを引っ張った中村さんが、1区のエピソードや攻略法について明かしてくれた。

焦ってしまった初めての箱根1区

3・4年時に1区を快走した中村さんに話を聞いた 【スポーツナビ】

 3年では出雲駅伝と全日本大学駅伝で1区を走りましたが、箱根駅伝では自分が2区を走って(同級生の)村山謙太(現・旭化成)が1区か3区に回った方がタイム差を稼げるかな……などといろいろなパターンを考えていました。ただ、出雲と全日本は、自分が1区で1位になりそのまま逃げ切って優勝するパターンできていました。他の大学が自分を1区と予想して強い選手を持ってくることも考えると、「やはり自分が1区にいくしかない」となったんです。

 初めての箱根駅伝の1区は、早稲田大の大迫傑選手(現・ナイキオレゴンプロジェクト)が出ていて、スタートも他のレースと違って注目度が高く、「出遅れてはいけない」という他では味わえない緊張感がありましたね。大迫選手がいるのでハイペースになると予想して、それに対応しなければいけないと思っていました。実際のレースも、作戦を考えるというより、速いペースでずっと押し続けていく感覚でした。
 ただ、仕掛けどころが早くなってしまったのがミスでした。本番2週間くらい前に足を痛めてしまって1週間くらい走れない期間がありましたし、同じ1区を走った日本体育大の山中秀仁選手(現・Honda)は調子がいいと感じていました。日本体育大は5区に前年区間賞の服部翔大選手(現・Honda)がいたので、(リードを広げなければと)少し焦ってしまったんです。ラスト1キロ手前で自分が先に動いてしまったために、ラスト5〜600メートルで山中選手が前に出た時に対応できませんでした。仕掛けどころをもう少し見極めていたら区間賞を取れたかもしれないし、11秒遅れ(区間2位)でたすきを渡したので2区の謙太も少し無理をして(突っ込んで走り)両足のけいれんが起きたのかもしれない……と反省しました。
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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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