連載:それってホント? 野球の定説を検証

ストライクを生む魔法「フレーミング」 捕手の評価として設定する球団も

Baseball Geeks

フレーミングとは

近年、捕手に必要な能力として注目される「フレーミング」に迫っていく 【Getty Images】

 「フレーミング」という言葉をご存知だろうか。近年注目されている捕手の技術であり、メジャーリーグでは評価方法の一つとして獲得基準にしている球団もある。具体的には、ストライクゾーンに投球されたボールを確実にストライク判定にする、またボールゾーンに投球されたボールをストライク判定に変えるといった捕手のキャッチング技術のことである。

 今回は、昨シーズンのメジャーリーグのデータを使い、このフレーミングの秘密を探っていきたい。

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トラッキングデータでの分析

 メジャーリーグでは全試合でトラッキングデータを測定している。このデータの中には投球がホームベースのどこに到達したかが分かる座標データがある。到達位置がセンチ単位で分かるようになったため、実際の判定とどのような差異が生まれたのかが定量的に示せるようになった。

 回りくどい説明になったが、具体的には「ボールゾーンに来たのに見逃しストライクを奪った」や「ストライクゾーンに来たのにボール判定された」事象が毎球分かるようになったため、これまで曖昧であった捕手のフレーミング能力を探れるようになったのである。

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チーム別フレーミングランキング

 では実際に、チームごとにフレーミング能力のランキングを見てみよう。まずはストライクゾーンにきたボールをどの程度ストライクにしているのかを比較する。

【Baseball Geeks】

 打撃を除くすべてのストライクゾーンへの投球のうち、最も「ストライクをストライクにした」チームはダイヤモンドバックスであった。なんと最下位のレッズとは約6%も差があり、100球をストライクゾーン内に投球したと仮定すると、6球も判定に差が出てしまう。一球の判定が勝敗を分ける事もあり、大きな差だと言えるだろう。

 「ビッグデータ・ベースボール(トラヴィス・ソーチック,桑田健 2016)」によると、現ドジャースのラッセル・マーティンは2007年からの5年間で、フレーミングにより70点の失点を防いでいたとも言われている。これは、フレーミング技術は勝敗にも関わりうる非常に重要なデータであることを裏付けている。

メジャー屈指のフレーミング技術を持つラッセル・マーティン 【Getty Images】

 続いて「ボールをストライクに変えた」チームを見てみる。ストライクゾーンからボール1個分外れたゾーンを設定し、そのゾーンに投球されたボールの中で最もストライク判定を稼いでいたチームを調べてみると、1位はこちらもダイヤモンドバックスであった。

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 ボールゾーンで見逃しストライクを奪えると、投手有利なカウントに持っていくだけでなく、その後際どいコースで空振りを誘う上でも有効である。最下位のレッズとは10%以上も差がついており、キャッチング技術に差があることがうかがいしれる。

 ダイヤモンドバックスとレッズを比較すると、低めのコースや両サイドで判定に大きな差が見られており、それらのコースを上手く捕球することが改善のポイントとなるかもしれない。

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 また、興味深い点は、先ほどのランキングと少し違ったチームも登場してきている事である。どちらも好成績を残すダイヤモンドバックスのようなチームもあれば、ドジャースのように「ボールにさせない事」よりも「ストライクに変えること」に注力しているチームもあった。近年メジャーリーグでは「キャッチングコーチ」を配置するチームも急増してきており、フレーミングの意識や戦略は今後も重要視されていくだろう。

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著者プロフィール

株式会社ネクストベースが運営する最先端の野球データ分析サイト。「ボールがノビるって何?」「フライボール革命って日本人には不可能?」など、野球の定説や常識をトラッキングデータとスポーツ科学の視点で分析・検証していきます。 "野球をもっと面白くしたい" "野球の真実を伝えたい"。これがベースボールギークスの思いです。 書籍『新時代の野球データ論 フライボール革命のメカニズム』(カンゼン)が7/16より絶賛発売中。

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