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シント=トロイデン買収の真相
第9回 日本国内における重要なミッション

ベルギー1部のシント=トロイデンVV(STVV)をDMM.comが買収した計画の始動から今夏まで、激動の3年半の舞台裏に迫った。

繰り広げられる他クラブとの“空中戦”

STVVはプレーオフ1進出に向けて邁進していたが……
STVVはプレーオフ1進出に向けて邁進していたが……【(C)STVV】

 2019年2月、STVVは依然としてプレーオフ1出場圏内の5位をキープしていた。


 2月10日に行われた25節のワースラント=ベフェレン戦では、1月18日にSTVVに加入したばかりの長身ストライカー、木下康介が途中出場でデビューを果たし、決勝ゴールを決めてみせる。


 この頃、鎌田大地のゴールラッシュには陰りが見えたものの、パートナーを務めるヨアン・ボリが2月25日、27節のシャルルロワSC戦でハットトリックを決めるなど、チームはプレーオフ1進出に向けて邁進していた。


 だが、そんな時期に思わぬ方向から横槍が入る。


 リーグから「プレーオフ1では人工芝のスタジアムは使用できないという条項を検討する」という発表がなされたのだ。


 ベルギーリーグの会長は、「ビッグ5」と呼ばれるアンデルレヒト、KRCへンク、KAAヘント、スタンダール・リエージュ、クラブ・ブルージュの会長が持ち回りで務めている。6席ある議席もその5クラブが5席持っており、すべての決定が「ビッグ5」に有利に働くような仕組みになっている。


 STVVのホームスタジアムであるスタイエンのピッチは人工芝。STVVの存在が「ビッグ5」にとっての驚異となり、嫌がらせを仕掛けてきた、ということだろう。


「シーズン中も人工芝のピッチに対して、われわれはずっと文句を言われてきました」

STVVのホームスタジアムが人工芝であることで、思わぬ横槍が入る
STVVのホームスタジアムが人工芝であることで、思わぬ横槍が入る【(C)STVV】

 強化部のアンドレ・ピントが告白する。


「人工芝の状態があまり良くないので、アウェーチームはやりづらいと。われわれがホームで(ロイヤル・)アントワープを2-0で下したあと、彼らはかなり文句をつけてきました。でも、われわれはアウェーでも3-1で勝ったから、関係ないでしょって。アンデルレヒトにもホームで4-2と完勝しましたけれど、アウェーだって退場者を出しながらドローを演じていますから」

日本国内でのもう一つの戦い

日本国内でのスポンサー営業を担う松岡
日本国内でのスポンサー営業を担う松岡【スポーツナビ】

 リーグ戦に加え、そうしたビッグ5からのプレッシャーとも戦う一方、日本国内ではまた別の戦いが繰り広げられていた。


「そもそもお客さんが会ってくれない、アポが取れない。話すら聞いてもらえない状況でした。かなり売りにくい商材であることは確かだと思います」


 そう嘆くのは、ジャパンブランチ営業部長の松岡昌平である。


 そもそもSTVVというベルギーのクラブを日本企業が運営していること自体、広く知られているわけではない。


 日本のクラブであれば、ホームスタジアムに招待したり、スポンサーデイを開催したり、分かりやすいお返しができるが、拠点がベルギーだとそれも容易ではない。


 また、冨安健洋、遠藤航といった現役日本代表選手を抱えていても、彼らがいつ移籍してしまうか分からないから、所属選手を前面に押し出すわけにもいかない。


「だから、“メリット押し”はしない。いわゆる“プロジェクト押し”です。STVVのプロジェクトを理解していただき、そこに至るまでのストーリーを一緒に描きませんか、一緒に世界に挑戦しましょうと。あるいは、何周年という記念を迎える企業に対して、その記念事業として、うちのクラブを使って一緒に広告宣伝をしませんかと」


 学生時代に野球をしていた松岡は、スポーツ紙の『スポニチ』に入社し、カメラマンとして活躍。その後、メジャーリーグ担当として米国に渡り、広告代理店勤務、アルビレックス新潟のミャンマーサッカースクールのインターン、米国放浪を経てDMM.com(DMM)に入社した変わり種である。


「とにかくアポが取れないので、初めの頃は倉田さんの人脈頼みでした」

飯尾篤史
飯尾篤史

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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