連載:シント=トロイデン買収の真相

【ノンフィクション】シント=トロイデン買収の真相 最終回 新たな戦略とともに19-20シーズンへ

飯尾篤史
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ベルギー1部のシント=トロイデンVV(STVV)をDMM.comが買収した計画の始動から今夏まで、激動の3年半の舞台裏に迫った。

「日本人の仕事スタイルはディーゼルエンジンに似ている」

18-19シーズンの戦いを前オーナーのドゥシャトレは高く評価している 【飯尾篤史】

 念願のプレーオフ1にはあと一歩、届かなかった。

 2018-19シーズンのジュピラー・プロ・リーグのレギュラーシーズンで、プレーオフ1圏内の5位をキープしていたSTVVは、ラスト3試合で1分け2敗と失速し、7位に順位を落としてしまうのだ。

 プレーオフ2でもSTVVは最後に息切れをして、グループAの2位に終わった。

 つかみかけていた夢の舞台への切符が手のひらからこぼれ落ちた――。

 しかし、開幕前には、メディアから2部降格すら予想されていたのだから、及第点と言えるだろう。

「私の印象では、かなり良い成績が残せたんじゃないか、と思いますよ」

 前オーナーのローランド・ドゥシャトレもこう語る。

「私はビッグ5のクラブとSTVVの予算規模がいかに違うかを知っています。圧倒的な差があるのに、よく最後までプレーオフ1出場の可能性を残した戦いができたと思います。ぎりぎりのところで目標を逃してしまったのは、残念ですがね」

 レギュラーシーズンの最終節である30節は6位のKAAヘントとの直接対決となった。プレーオフ1に進出するためには勝利しか許されない状況で、STVVはホームで敗戦を喫し、プレーオフ1への道を絶たれた。

「それでも、STVVはよく戦いました。日本人選手も良かったが、監督のマーク・ブレイスの日本人選手の生かし方が非常にうまかったと思います。日本人選手のスピードや敏捷性を生かした戦い方をしていましたから」

 STVVを売却した今も、ドゥシャトレはホームスタジアムであるスタイエンのオーナーを務めている。STVVの運営や成績はおおいに気になるところだ。

「見ていて感じるのは、日本人の仕事のスタイルはディーゼルエンジンに似ているということ。最初は時間が掛かるが、回り始めるとスッとうまくいく。ベルギーリーグのことをもっと理解すれば、もっと良くなるでしょう。日本人選手がヨーロッパに来るには、まだまだハードルが高い。でも、今はSTVVという扉が開いている。ヨーロッパに日本人選手が来やすいシステムを作りあげたのも、素晴らしいことだと思いますよ」
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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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