- Baseball Geeks
- 2019年8月5日(月) 11:00
トラックマンやスタットキャスト(Statcast)に代表されるトラッキングシステムの導入により、野球界には「革命」が起こっています。見えなかったものが見えるようになり、野球の「真実」が、徐々に解き明かされ始めています。
連載「それってホント? 野球の定説を検証」では、「あのときの僕」が信じていた野球の定説をデータやスポーツ科学を使って検証。観る人・プレーする人・支える人すべてに、野球の真実・野球の新たな面白さをお届けします。
第9回は「先発タイプとは?」。

プロ野球ではシーズンも終盤に差し掛かり、いよいよ優勝争いも佳境を迎えつつある。また同時に、来季の編成に向けた動きも本格化する時期でもある。
ドラフト候補や新外国人選手といった新戦力投手の選手評では「先発タイプ」「救援タイプ」といったように分類されていることも多い。しかし、この「タイプ」は評価者の主観で定義した曖昧な基準である場合が多いのではないだろうか。
「先発タイプ」とはいったい何なのか。一要素で決められるものではないと前置きしつつも、今回は「持ち球」にフォーカスした上で、メジャーリーグのデータからその適性を探っていきたい。
多くの球種を投げる先発投手
まずは持ち球の「数」に注目してみる。本稿では2018年に先発で80イニング以上投球した145人を先発投手、救援で50イニング以上投球した146人を救援投手と定義し比較した。
投球割合が1%以上であった球種を持ち球と定義し、持ち球の数を先発投手と救援投手で比較すると、先発投手の持ち球は平均4.7球種で、救援投手よりも約1球種も多かった。

救援投手は2〜3球種の投手も多い一方で、先発だと2〜3球種で勝負するような投手はほとんどいなかった。救援投手はショートイニングの登板で同一打者と複数打席対戦することは少ないため、得意な球種を次々と投げ込み勝負するのに対し、先発投手は打者に目を慣れさせないよう多くの球種を駆使して勝負しているのかもしれない。
救援投手は多くの球種を必要としていない可能性もあれば、多くの球種を投げ分けるのが苦手であるため、得意球を中心に勝負できる短いイニングを任せられている可能性もある。

日本人投手をみても、田中将大(ヤンキース)、ダルビッシュ有(カブス)、前田健太(ドジャース)ら長年活躍する先発投手の持ち球は5〜6球種であるのに対し、救援投手である平野佳寿(ダイヤモンドバックス)の持ち球は2球種であった。メジャーリーグで先発投手として活躍するには、多くの球種を駆使することも必要な能力の一つであるのだろう。