日本代表で輝く松島幸太朗の“変幻自在” 「全部万能にできるようにしたい」

斉藤健仁

“過去最強”のフィジー代表に快勝

慣れ親しんだFBではなくWTBで活躍した松島幸太朗 【斉藤健仁】

 東日本大震災の被災地でもあった岩手・釜石鵜住居復興スタジアムで初めて行われた日本代表のテストマッチ。もっとも輝きを見せたのは、慣れ親しんだ15番ではなく14番のジャージに身をまとったWTB松島幸太朗だった。
 7月27日、ラグビー日本代表(世界ランキング11位)はパシフィック・ネーションズカップ(PNC)開幕戦で、世界ランキングで2つ格上のフィジー代表を迎えた。過去3勝14敗と大きく負け越している相手で、現在のフィジー代表は過去最強の呼び声高く、昨秋はフランス代表を、2週間前には62年ぶりにマオリオールブラックス(先住民族マオリ系の選手で構成)を下した強豪だった。

 松島は2015年ワールドカップ(W杯)も経験し、ジェイミー・ジョセフHC体制でも中心選手として存在感を見せていた。ただ昨秋は太ももの負傷のため代表活動に参加せず、桜のジャージを着てプレーするのは昨年の6月以来、そしてWTBとしての先発は2年ぶりとなった。

 釜石での試合ということで松島は「移動中、バスから風景を眺めていて、津波の被害の跡が残っている印象があった。そういった人たちに試合を見てもらって、何かモチベーションを上げられるような試合にできれば」と静かに闘志を燃やしていた。

松島「今回はWTBなので、トライを取り切る」

リーダーグループの一人としてもチームを支えている 【斉藤健仁】

 日本代表は、ディフェンスではカウンター能力の高いフィジー代表を3トライに抑えて、アタックではあまりキックを蹴らずボールポゼッション重視の戦略で、松島の2トライを含む5トライを挙げて34対21で快勝。ジェイミー・ジャパンとなり初めて世界ランキング上位に勝利し、フィジー代表相手には8年ぶりの白星となった。
「あまりアンストラクチャー(崩れた局面からのアタック)をやっていないが、今日の試合を通してどちらもできることが証明できた」(松島)

 そんな松島は6月の宮崎合宿までは「FBでの出場を強くアピールしたい」と15番へのこだわりを公言していたが、ジョセフHCは「Xファクターを持っている」と期待してWTBに起用した。試合の週になると、リーダーグループの一人でもある松島のコメントにやや変化が見られた。

「与えられたポジションでどれだけ自分の能力を出せるかというのを試されている。そこをプレッシャーに感じず、どんなポジションでも自分の持ち味を出せるかというところを楽しめたら。今回はWTBなので、トライを取り切る、フィニッシュにこだわりたい。ボールをもったらラインブレイクを狙いにいく意識でやっていきたい」

「地獄の宮崎合宿」を乗り越え、好調を実感

フィジー代表戦では3トライに絡む圧巻のパフォーマンス 【斉藤健仁】

 今年2月から、松島はサンウルブズに合流することなく日本代表候補合宿でフィットネスやフィジカル、基本スキルを高めることに注力した。3月末からも「W杯イヤーなので、サンウルブズではなくウルフパックでプレーする方がいいのでは」とジョセフHCの下で、徐々に実戦を積んでいった。さらに、6月から7月にかけて33日間の「地獄の宮崎合宿」も乗り越えたこともあり、「調子が良かったので、いいパフォーマンスができれば」と自らも調子の良さを実感していた

 その言葉通り、松島はWTBとしてサイドに張るだけなく、セットプレーからのファーストレシーバーやサインプレーの中軸となり、結果的に3トライに絡む圧巻のパフォーマンスを披露して勝利に貢献した。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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