日本代表で輝く松島幸太朗の“変幻自在” 「全部万能にできるようにしたい」
2トライの活躍「スペースを突けたのが良かった」
後半15分には、ラグビーボールでは難しいドリブルからトライを決めた 【斉藤健仁】
前半23分のトライも、ラインアウトからロングスローの受け手となりゲインし、左右に振って最後はCTBラファエレ ティモシーのトライをアシストした。さらに試合が膠着した後半15分、ラファエレが相手にタックルして、こぼれたボールを足にかけて、うまくドリブルでコントロールし、自らボールを押さえてトライを挙げた。
松島は「ディフェンスでしっかり上がるところを最後まで意識した。相手がプレッシャーを受けてミスしたのを取れたので、しっかりフィニッシュできたのが良かった」、また「宮崎ではきつくなった時の行動がキーポイントだったので、今日も暑い時、疲れていたと思うが、その成果が出た」と胸を張った。このシーンは、おそらくフィジー代表のアタックラインの方が枚数は多く、もし展開されたらピンチになっていたはずだ。人数が少なくても、疲れがたまってくる後半の中盤でも、組織としてしっかり前に上がったことが功を奏した。
ブラウンコーチが語る「FB2人」の効果
攻守のさまざまな局面で、多彩な能力を発揮した松島幸太朗 【斉藤健仁】
相手のSHからのボックスキックに対してはハイボールに強いFBウィリアム・トゥポウがライン際に位置し、松島は中央の広いエリアをカバーしていた。いずれにせよ2人のFBで後方を守るという陣形であり、松島にとってはまったく問題なかった。またタックルでも身体を張り、フィジー代表対策の一つとしていたパスコースに入って相手のパスをインターセプトするシーンもあり、ターンオーバーになったらすぐに戻る意識も高かった。
試合を振り返って松島は「合宿でコミュニケーションが取れていたので、やりにくさはまったくなかった。自然と今の役割の部分ですっと入れた」と言い、やはり15番で出たいのかと聞かれると「WTB、FB以外でもしっかり頭の中に入れて、全部万能にできるようにしたい」と、どのポジションで出場しても自分の役割を果たすつもりだ。
W杯へ闘志「プール戦を全勝するという気持ちで」
W杯に向けて「決勝トーナメントに行けるように」と語る 【斉藤健仁】
また日本代表は過去、テストマッチシリーズの初戦やPNC初戦では苦戦することが多く、また試合の入りもあまり良くないことも多かった。ただこの試合に関しては違った。
松島は「リーダー陣でいつも入りが悪いと話していたが、いいスタートダッシュができた。意識のところでみんな変わった。この1週間、しっかり最初から自分たちの役割を果たそうとやっていた。今までやってきたことが試合に出たのかな」と個人だけでなくチームの成長も実感していた。
チームで2番目に若い22歳で出場した前回のW杯は、4試合にWTBとして出場したが、チームを引っ張る存在ではなかった。だが、2017年度にはトップリーグの年間MVPを受賞し名実ともに日本を代表する選手へと進化を遂げて、キャプテンのFLリーチ マイケル以下9人いるリーダー陣の一人としてチーム内の存在感も大きく増している。
2度目、そして自国開催でのW杯に向けて26歳となった松島は「1日無駄にすると損するので、そうしないためにも自分ができることを自分から積極的にやっていきたい。そしてしっかり決勝トーナメントに行けるように、プール戦を全勝するという気持ちでやりたい」。決して雄弁な選手ではないが、その発する言葉ひとつひとつに覚悟と責任を感じる。