連載:錦織圭、グランドスラム制覇への道

錦織圭、言葉から探る強さの秘密「いつでもだれでもラッキーはくる」

秋山英宏
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2016年全米オープン準々決勝、錦織は格言通り最後まであきあめずに戦い、大熱戦を制した 【Getty Images】

 少し前なら、リオデジャネイロ五輪の男子シングルス準々決勝ガエル・モンフィス戦。第3セットのタイブレークで3−6と3本のマッチポイントを握られる絶体絶命のピンチから、5連続ポイントで逆転勝ち。最近では、今年1月の全豪オープン4回戦パブロ・カレノブスタ戦。セットカウント0−2から追いつき、5時間を越える死闘を制した。

 最終セットにもつれたときの錦織圭の勝率75%は男子ツアーの歴代1位。190センチを超える巨漢がランキング上位を占める男子テニスにあって、178センチの錦織が勝ってきたのは、気持ちの強さ、そして集中力があったからだ。ここでは錦織の過去の発言から、彼の気持ちの強さの理由を探してみたい。

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中学生の頃にハマった格言作り

「いつでもだれでもラッキーはくる、そう思え!」(中学生の頃、自宅で)

 錦織は中学生の頃、自分なりの格言作りにハマったことがある。ちょうど相田みつをがブームで、それに感化されたと聞いた。「格言」のいくつかはメディアでも取り上げられたが、なかでも傑作はこれだろう。

「いつでもだれでもラッキーはくる、そう思え!」

 試合でどうもついてないな、と思っても、運は誰にでも平等だ。やるべきことをやっていれば、必ず自分にも運が向いてくる……。10代前半の錦織は、そう考えて自分を励ましたのだろう。

 なんともほほえましいが、一方で、格言作りは自分なりに工夫したメンタルトレーニングとも解釈でき、その一途さ、少年の覚悟には胸を打たれる。

 勝負に運不運はつきものだ。運が向かないときは、じっと耐えて荒波をやり過ごし、追い風を待つ。1試合の中でも、1シーズンの中でも、そして選手のキャリア全体でも通用しそうな格言だ。
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著者プロフィール

テニスライターとして雑誌、新聞、通信社で執筆。国内外の大会を現地で取材する。四大大会初取材は1989年ウィンブルドン。『頂点への道』(文藝春秋)は錦織圭との共著。日本テニス協会の委嘱で広報部副部長を務める。

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