世界基準の日本人セーラー・高橋レオ 夢は五輪メダルとアメリカズカップ出場

高樹ミナ
 2020年東京大会そして世界に向けて、それぞれの地元から羽ばたくアスリートを紹介する連載企画「未来に輝け! ニッポンのアスリートたち」。第38回は静岡県出身、セーリングの高橋レオ(たかはし・れお)を紹介する。

日本セーリング界きっての有望株、20歳の高橋レオ 【写真は共同】

 東京五輪に向けた各競技での日本代表争いが過熱している。それはセーリングも例外ではない。

 五輪で男女合わせて10種目が採用されるセーリングは、スペイン・マヨルカ島で開催されたプリンセスソフィア杯(3月29日〜4月6日)から日本代表選考が始まった。この大会で選考対象となったのは日本が得意とする男女470(ヨンナナマル)級と五輪種目の花形といわれる男子49er(フォーティーナイナー)級および女子49erFX級。いずれも2人乗りの種目で、日本セーリング界きっての有望株と期待される20歳の高橋も49er級でペアの小泉維吹とともに自身初の五輪出場を狙っている。

高い操船技術は元プロセーラーの父親仕込み

 彼に会って最初に驚くのは日本人離れした恵まれた体格だ。ニュージーランド人の父と日本人の母を持つ高橋は身長192センチ、体重85キロと欧米の選手に引けを取らない。とりわけパワーが必要とされる49er級にもってこいと言える。

 49er級は五輪種目の中で2番目に大きい全長4.9メートル、全幅2.9メートルのヨットを使う。セールサイズも大きく風を受ける面積が広いため、スピードは五輪種目随一の最大時速40キロを超える。さらに海水との接地面積が小さい艇体はバランスを取るのが難しく、操船には高い技術も求められる。テクニックとパワーの両方を兼ね備えていなければ到底扱えない代物なのだ。

 高橋のセーリング技術はかつてプロセーラーとして活躍した父親仕込み。父はヨットレースの最高峰・アメリカズカップにもニッポン・チャレンジの一員として挑戦した実績の持ち主である。

 高橋がセーリングを始めたのは9歳の時だった。母の故郷である静岡県熱海市に生まれ、沼津市で幼少期を過ごした後、7歳の時、父の故郷・ニュージーランドのオークランドへ家族で移住。ニュージーランドはアメリカズカップ優勝や五輪の金メダリストも輩出する強豪国で、練習環境に恵まれている。しかし、セーリングを始めた頃の高橋少年は、「最初はセーリングが嫌いでした。風が強くて雨が降っている日に海に出るのがイヤだったから」と振り返る。それもレースに出場するようになるとヨットを扱う面白さに目覚め、瞬く間に海の虜になった。

自ら語る49er級の魅力

高橋が乗る49er級は2人乗りの種目。ペアの小泉維吹とともに出場した、江の島でのワールドカップで決勝レースに進む活躍を見せた(写真右が高橋) 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 高橋が五輪出場を夢見るようになったのは、セーラーとして活躍した父の影響にほかならない。2015年、17歳で日本セーリング連盟のナショナルチーム入りを果たし、16年に49er級に乗り始めた。その時点で高橋のセーリング歴は9年になろうとしていたわけだが、それでも「49er級のヨットは他の種目に比べバランスを取るのが難しいし、スピードも出るので、乗りこなすまでに1年くらいかかりました」と話す。

 実際にレースを見ると、その迫力に驚く。平均時速20キロ、最大時速40キロを超えるヨットはちょっとバランスを崩すだけで転覆しそうになるが、それを2人のセーラーが海に身を乗り出し必死にコントロールする。49er級はまるで海の上の暴れ馬のようだ。

「技術とパワー、接近戦での緻密な戦術、そしてペアのコンビネーションが重要。そこが魅力なんです」と高橋は言う。

 ちなみに東京五輪のセーリング競技は、神奈川県の江の島ヨットハーバーを拠点に7月26日〜8月5日の日程で行われる。10種目の内訳は、1人乗り種目がウインドサーフィンを使う「男女RS:X級」、「男子レーザー級」および「女子レーザーラジアル級」、セーリング最古の種目と言われる「男子フィン級」の5種目。2人乗りの種目は「男女470級」、「男子49er級」と「女子49erFX級」、そして16年リオデジャネイロ五輪で採用された「男女混合フォイリングナクラ17級」の5種目となっている。

 高橋が乗る49er級は00年のシドニー五輪から採用された比較的新しい種目だが、見る者を魅了する派手な操船スタイルとスピードレースで花形種目と呼ばれている。

 その49er級で高橋/小泉ペアは昨年9月、東京五輪のテスト大会を兼ねたセーリングワールドカップシリーズ江の島国際大会で初めて決勝レースへ進み、総合10位に食い込んだ。同級で当時まだ2年程度のキャリアだったことを考えれば評価に値する成績で、一躍代表候補に躍り出た。

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著者プロフィール

スポーツライター。千葉県出身。 アナウンサーからライターに転身。競馬、F1、プロ野球を経て、00年シドニー、04年アテネ、08年北京、10年バンクーバー冬季、16年リオ大会を取材。「16年東京五輪・パラリンピック招致委員会」在籍の経験も生かし、五輪・パラリンピックの意義と魅力を伝える。五輪競技は主に卓球、パラ競技は車いすテニス、陸上(主に義足種目)、トライアスロン等をカバー。執筆活動のほかTV、ラジオ、講演、シンポジウム等にも出演する。最新刊『転んでも、大丈夫』(臼井二美男著/ポプラ社)監修他。

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