世界基準の日本人セーラー・高橋レオ 夢は五輪メダルとアメリカズカップ出場

高樹ミナ

新リーグ「SailGP」にも参戦

高橋は新リーグ「SailGP」にも参戦。日本チームの一員として名を連ねる(右から2人目が高橋) 【Getty Images】

 また、昨年は願ってもないチャンスが舞い込んだ。アメリカズカップの流れを受け継ぐ新たなプロヨットリーグ「SailGP(セール・ジーピー)」からの参戦オファーだ。18年10月に発足、19年2月にシドニーで開幕戦を迎えたSailGPはセーリング強豪国のオーストラリアを筆頭にイギリス、フランス、アメリカ、中国、日本の6チームによる国別対抗戦。初年度は世界5都市でレースを行う。

 高橋に白羽の矢を立てたのは日本チームで、チームでもリーグでも最年少。ポジションは「グラインダー」と呼ばれるウィングセールを調節するための動力を供給する役割で、パワーが求められる。初年度はリザーブとしての起用だが、開幕戦のシドニー大会では予選にあたるフリートレース、そして決勝にあたるマッチレースの両方で出番があった。優勝は地元オーストラリアに譲ったものの、高橋は日本チームの2位フィニッシュに貢献した。

 日本チームの大黒柱には、オーストラリア代表として12年ロンドン五輪49er級で金メダル、16年リオ五輪49er級で銀メダルを獲得したネイサン・アウタリッジがいる。舵取り役の「ヘルムスマン」としてチームを引っ張るネイサンは、アメリカズカップにも出場している。同じ49er級で五輪出場を目指す高橋にとって憧れの存在であることは言うまでもなく、チームメートとして共に戦うことで得るものはとてつもなく大きい。

「SailGPで使うヨット(F50双胴艇)と49er級のヨットは違いますけれど、スピードと風の使い方はよく似ている。五輪金メダリストのネイサンからはセールの使い方や操船のスキル、チームメートとのコミュニケーションなど、たくさんのことを学んでいます。とにかく一緒にいるだけでプラスになるし、自分もいつかはネイサンのように信頼されるリーダーになりたいです」

日英を操る語学力も武器

東京五輪出場と24年パリ五輪でのメダル獲得、そして父も出場したアメリカズカップ参戦を夢見る高橋(写真中央) 【写真は共同】

 ニュージーランドでの生活が長い高橋だが、かつて暮らした沼津の風景や友達と遊んだことをよく覚えている。今でも日本に来た時には江ノ島を練習拠点にしていることから、「日本の食べ物や文化がすごく好き」と話す。インタビューには日本語と英語の両方で応じるが、「自分の日本語は時々、ヘン」と謙遜し、日常的に使っている英語で話す方が楽だという。この語学力も世界の舞台で活躍するための武器となっている。

 近年は国際結婚の親を持つ若い日本人アスリートが増えた。最近ではプロテニスプレーヤーの大坂なおみの活躍が目覚ましい。ありきたりだとは思いつつ彼女も21歳ということで、その話題を高橋に振ると、すぐさま「よく比較されます」と答えが返ってきた。

「大坂さんは素晴らしいアスリートのロールモデル。グランドスラムの全米オープンと全豪オープンで優勝する実力を兼ね備えていて、日本のファンからも海外のファンからも愛されています。自分もいつかそういう存在になって、セーリングが日本でも人気スポーツになるように貢献したい」

 同世代のアスリートに敬意を払いながら、「でも日本語は僕の方が勝ち」と笑う高橋は来年の東京大会で五輪出場を果たし、次の24年パリ五輪でメダルを手にする青写真を描く。そして父も乗ったアメリカズカップに出場するのが大きな夢だ。

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著者プロフィール

スポーツライター。千葉県出身。 アナウンサーからライターに転身。競馬、F1、プロ野球を経て、00年シドニー、04年アテネ、08年北京、10年バンクーバー冬季、16年リオ大会を取材。「16年東京五輪・パラリンピック招致委員会」在籍の経験も生かし、五輪・パラリンピックの意義と魅力を伝える。五輪競技は主に卓球、パラ競技は車いすテニス、陸上(主に義足種目)、トライアスロン等をカバー。執筆活動のほかTV、ラジオ、講演、シンポジウム等にも出演する。最新刊『転んでも、大丈夫』(臼井二美男著/ポプラ社)監修他。

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