連載:未来に輝け! ニッポンのアスリートたち
男女を超越するストライカー・菊島宙 恐怖心を克服し、5人制サッカーの星へ
5人制サッカー屈指のストライカーである菊島(10番)。一般のサッカーと同じドリブルを駆使して、ボールを運ぶ 【提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄】
にもかかわらず、日本には世界に誇る女子選手がいる。
それが、菊島宙だ。
男子に負けないスピードと正確さ
フィールドプレーヤーは、全員アイマスクを着用し視力を完全に遮断する。ドリブルの際、足元からボールが離れてしまうと、正確にボールに追いつくことが難しい。そのため、両脚の間にボールを挟むような状態で、足の内側でダブルタッチしながら運ぶことが多い。スピードは落ちるが、確実に攻撃ゾーンに切り込める。一般のサッカーとの違いは、このドリブルにあると言えるだろう。
菊島のドリブルは、前にポーンと蹴り出し、ボールに追いつくとまた前に蹴り出すスタイル。一般のサッカーと同じドリブルを駆使し、ボールをスピーディに運ぶ。女子選手は国内大会では男女混合チームの一員として戦っている。周囲はほぼ男子だが、菊島は敵3人が取り囲んでいてもステップでかわし、ターンをして必ずシュートで終わる。
速い! そのスピードと正確さに、思わず誰もが「おおお!」と感嘆の声をあげてしまう。菊島は、男女の差を超越した5人制サッカー屈指のストライカーなのである。
5人制なら、もう一度サッカーができる!
5人制サッカーに出会ったのは小学4年の時。中学進学後から本格的に始めた 【スポーツナビ】
菊島がサッカーを始めたのは、保育園に通っていた頃のこと。社会人クラブでプレーする父に連れられ試合や練習に行くと、ボールを蹴って遊んでいた。小学1年生の時に、父に手ほどきを受けるようになる。
「普通、パスとかトラップから練習しますよね。でも、父はいきなりシュートから教えてくれたんですよ」
地面に置いたボールを蹴って5mほど先の壁に当てる。
「しかも、インステップで。思い切り蹴ってミートする感覚が、もう、本当に楽しかった!」
小学2年で地元の女子チームに入団。スタメンでピッチに入る機会は少なかったが、コーナーキックやフリーキックなどでは菊島が活躍した。
5人制サッカーに出会ったのは、小学4年の時。日本ブラインドサッカー協会が主催するブラサカキッズキャンプに参加した。6年までは、月に1回程度の練習会、ブラサカ・キッズトレーニングに参加し、女子チームのサッカーと並行させていたという。
中学に進学すると、視力が低下しクラブチームの練習を続けることが困難になった。
「パスされてもボールを受けることができない。もう、この先大好きなサッカーができなくなってしまうのかなって」
幼い時からボールを蹴って遊んでいた。サッカー以外のスポーツをやったこともない。
「ブラサカ(5人制サッカー)があるじゃないか!」
父の言葉ではっと我に返った。
そうだ。5人制サッカーなら、もう一度サッカーができる! 菊島は改めて5人制サッカーのチーム、埼玉T.Wingsに入団することを決意した。