国枝調教師に聞く、新しい時代への挑戦 アーモンドアイが見つめる先に

注目の今季緒戦

 昨年のジャパンCで、3歳牝馬ながら2分20秒6という驚異のレコードを叩き出したアーモンドアイ。古馬となっての動向は早くから話題に上がっていましたが、今季緒戦を今週末のドバイミーティングに定め、年明けから着々と調整が進められました。

 まずジャパンC後にジックリと充電。美浦に帰厩したのが2月22日。3月12日に検疫厩舎へ移り、20日に成田から関西空港を経由してアラブ首長国連邦ドバイへ、というスケジュール。この間、美浦の検疫厩舎へは、環境の変化による影響を最小限にと配慮し、ドバイには帯同しない僚馬(キングスヴァリュー)を付き添わせるなど、万全の態勢を敷いて送り出しました。

 そうして現地に到着したのが21日未明。30日のドバイターフ(GI・芝1800m)を目指して、不安材料は伝わってきておらず、順調な調整が進められているようです。

ドバイターフに挑むアーモンドアイ、現地で順調に調整されているとのことだ 【写真:REX/アフロ】

 管理する国枝調教師も、かなり早くからドバイ遠征の可能性を口にしていた一人。3歳牝馬で4冠を達成した先輩ジェンティルドンナの歩んだコースを、少なからず意識していたからでもあります。

 国枝厩舎は目下、今年すでにJRA14勝(2019年3月28日現在)。昨年はアーモンドアイの活躍もあって勝ち鞍を伸ばし、一昨年にマークした自身最多勝利数48に迫る45勝を挙げましたが、昨年の同時期の勝利数は6(ちなみに一昨年は8)ですから、ここ2年の勢いを爆発的に加速させたかのような活躍ぶりを見せています。

「マーフィー(昨年12月から年明け1月いっぱい短期免許を取得して日本で騎乗。国枝師が身元引受調教師)が乗った馬は、その後どんどん走るようになるんだよ」

 と国枝師は笑いますが、

「真面目な話、彼が乗って馬を動かすことで、走法自体がしっかりしてくるんじゃないのかな。凄いジョッキーだと思うよ」

 といろんな面から好調さを分析することも忘れません。

チームとしての戦いを

 その勢いを駆ってのドバイ遠征。実は国枝師がドバイに挑戦するのは今回が初めて。

 過去、自厩舎で海外遠征したのは08年の香港にマイネルシーガル10着(チャンピオンズマイル)、マツリダゴッホ8着(クイーンエリザベス2世カップ)。11年香港マイルにアパパネ13着。そして15年香港マイルにダノンプラチナ7着と、ことごとく“世界の壁”に跳ね返されてきました。

 3冠牝馬アパパネの大敗にはさすがにショックがあったかと思われますが、

「ショック……う〜ん、というか、こんなはずはないのにな、という感じかな。なんでこんなことになったかな、というのはあったよね。だけど、他の馬も含めて、それもこれも全部経験だと思うんですよ。これまで別々のスタッフで香港に遠征してるんだけど、それはつまり厩舎全体で海外遠征のノウハウを身につけるってこと。それができれば、次につながると思うんですよね。そういうことの積み重ねが大事なんじゃないかな。アーモンドアイのドバイ遠征だって、そういう経験があってこそ。アーモンドアイの今回の遠征そのものも、次に生かせると思うんです」

 具体的には、まず海外遠征の際には当然のしかかる空輸の問題。

「飛んでしまえば自動車よりも揺れが少ないし、信号の影響なんかも受けないから、楽と言えば楽なんですよ。スペースも3頭分のところを広々と1頭で使わせてもらうことにしたし、10時間程度のフライトなら、馬運車で小倉に行くのより短くて済むんだもの。ただ、飛行機での空輸の影響なんて、やっぱりやってみなくちゃわからないでしょう」

 そして現地の環境への適応力。

「アウェーではあるわけだし、いつものようにしていられるか、ですよね。レース前には花火が上がるそうだし、そんなところも含めて、どう対応してくれるかでしょう。
 そんな様子を見て、レースを走らせてみて、そうしてどういう結果が出るのか。それがあまり芳しくないようだったら、次のことも考え直さなきゃならないかもしれないし」

 と厳しいラインを引いています。それもこれも“次”を睨んでのこと。

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著者プロフィール

中央競馬専門紙・競馬ブック編集部で内勤業務につくかたわら遊軍的に取材現場にも足を運ぶ。週刊競馬ブックを中心に、競馬ブックweb『週刊トレセン通信』、オフィシャルブログ『いろんな話もしよう』にてコラムを執筆中。

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