鮮明になってきた春3冠の課題点 宝塚の売上前年比90.9%、要因どこに?

ファンの反応は、見事なまでにストレートだった

“春の古馬三冠”2年目で浮かんだ課題とは?(写真は今年の宝塚記念) 【写真は共同】

 JRAの上半期を締めくくるグランプリレース、宝塚記念。昨年、GIに昇格した大阪杯、伝統の天皇賞・春とのセットで、“春の古馬3冠”として新しい歴史がスタートしました。

 この“春の古馬3冠”には、近年増え続けるスターホース達の海外遠征によって生じる国内戦のレベル低下の阻止や、暮れの有馬記念に並ぶ“グランプリレース”としての宝塚記念の権威づけ、といった狙いがあったと想像されますが、スタート当初から懸念されたことも少なくありませんでした。

 筆者も昨年、こちらで触れましたが、改めて記しておきましょう。

 まず大阪杯2000m→春・天皇賞3200m→宝塚記念2200mのシリーズ化が可能かどうか。

 そして4月中に大阪杯、天皇賞が行われ、約2カ月間隔が開いて梅雨時の宝塚記念。

 この2つの要素がうまく機能し、シリーズとして成立するのかどうかは、正直、疑わしく感じられたものです。

 昨年はキタサンブラックという国民的(?)スターがいてくれたおかげで、シリーズがそれなりの盛り上がりを見せましたが、過去、この3レースを全勝した馬はおらず、キタサンブラックとてその壁は破れずに終わりました。

 これらを踏まえて、2年目の今シーズンの在り方が注目されましたが、少頭数でGI馬が4頭だった昨年に比べると、フルゲートでGI馬5頭。一見、メンバーに不足はないように感じられました。なのに売上は前年比で90.9%。

 ファンの皆さんの反応は、見事なまでにストレートだったと言えるでしょう。

ステップの多様化の影響

今年の宝塚記念に出走したGI馬5頭のうち、“春の古馬3冠”に出走していたのはサトノダイヤモンド1頭だけだった 【スポーツナビ】

 先に挙げたGI馬5頭ですが、1番人気に支持されたサトノダイヤモンドに、昨年の覇者サトノクラウン、昨年の菊花賞馬キセキ、そして牝馬のヴィブロスに香港馬ワーザー、という顔ぶれでした。この5頭は今季、宝塚記念まで未対戦。“春3冠”に出走していたのも、サトノダイヤモンドの一頭に過ぎず、出走馬16頭を見渡しても、大阪杯、春の天皇賞の両レースに出走した馬は牝馬のスマートレイアー1頭のみ。一方で、海外遠征から帰国後ぶっつけで駒を進めて来た馬が3頭。ステップレースが多様化したことは間違いありません。

 そのことが昨年、今年の馬単配当1万0330円、1万9630円の波乱につながっているのなら、穴党には歓迎材料になるかもしれません。しかしグランプリレースが、掴みどころがないレースとして定着すると、本質的な部分で、どこまでファンの興味を惹けるでしょうか。

 前年比90.9%の数字の原因を、キタサンブラックのような「スターホースの不在」だけに求めていいものでしょうか。

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著者プロフィール

中央競馬専門紙・競馬ブック編集部で内勤業務につくかたわら遊軍的に取材現場にも足を運ぶ。週刊競馬ブックを中心に、競馬ブックweb『週刊トレセン通信』、オフィシャルブログ『いろんな話もしよう』にてコラムを執筆中。

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