JRA平成最後の改革は新時代への宿題か 騎手育成、売上…怠れぬ課題の追求
売り上げ増に乗って
いくつかの改革案が実施される2019年度のJRA競馬、新時代へ向けてどのような影響をもたらすのか 【写真:中原義史】
4兆円を突破した平成9年をピークに、売上は徐々に減少。東日本大震災が発生した平成23年に約2兆2936億円まで落ち込みますが、その年を境に再び上昇に転じ、7年連続で前年比プラス、ということになっています。
これはJRAに限らず生産界をはじめ、競馬産業全体にとっても、またファンの皆さんにとっても歓迎すべきこと。
この活況時に、次の一手として打ち出されたいくつかの改革案が、今年度の番組に表れています。
この改革案、新しい元号の時代の競馬に、どのように影響を及ぼすのか。大いに注目していく必要がありそうです。
改革案の骨子
〇お客様とともに
〇夢と感動とともに
〇信頼とともに
〇社会とともに
〇そして未来へ
これらは「将来にわたる事業運営の安定化と経営基盤の強化を図る」とともに、「競馬の施行を通じた社会貢献を果たす」ことを目指すもの。
そして具体的な重点事項として(1)競馬番組の充実と質の高い競走の提供、(2)キャッシュレス投票をはじめとした勝ち馬投票施策の充実、(3)競馬場やウインズにおけるホスピタリティ等の向上、(4)東京2020オリンピック・パラリンピックへの協力および社会的ニーズへの的確な対応、の4項目が挙げられています。
この4つのうち、馬券を買って楽しむファンにとっては、(1)の競馬番組の充実、質の高い競走の提供こそ、最も気になる項目なのではないでしょうか。
すぐには出せない結論
そんな中で、具体案として昨年3月の時点から提示されていたのが、リステッド競走の格付けです。
非重賞競走、いわゆるオープン特別について、グレード格付け管理委員会が審査、承認したレースが、今年度からリステッド競走として格付けされました。おおよそですが、オープン特別の約半数近くのレースが“リステッド”扱いになるようです。その承認、認定の過程はさておくとして、明確にオープン特別とは賞金に差がつけられ、とにかくオープン特別は二通りに分けられることになりました。
これ、すでに発表になっていた“降級制度の廃止”によるオープン馬の増加、それによって生じかねない魅力低下を避けるため、なのでしょうか。クラス自体を細分化することで、出走馬のレベルをある程度、均等に保つことを狙って。しかし、その効果は実際にやってみないとわかりません。
セリ名簿の記載方法に新しいファクターが追加されるわけで、一部の皆さんには喜ばしい制度と言えますが、一般ファンの感覚として、おいてけぼり感がないでしょうか。
おぼろげにわかるのは、降級制度がなくなることで、競走資源としての馬の“サイクル”が早くなるであろうこと。
これだって、競馬人気、馬券の売上にどう影響するのか、実際に新ルールでの施行がスタートしてみなくてはわかりません。
競走サイクルの加速
また、秋の2歳未勝利戦が増加されたりすると、そのサイクルはもっと早い段階から加速することになります。あくまで噂話の段階に過ぎませんが、年明けの新馬戦も見直しの検討対象に入っているとか何とかで……。
こういった馬=競馬の主役達、の活躍するサイクルが早くなることも、競馬人気にどう影響するのか。これからの検証を待つことになります。
少し脇道にそれますが、定着するかどうかわからない、と言えば“競走条件の呼称変更”もそのひとつ。
例の500万を「1勝クラス」、1000万を「2勝クラス」、1600万を「3勝クラス」に、という、さんざんネット上でも評判が芳しくない変更案です。
仕事柄の笑い話になりますが、今年度からは新聞紙上に「未勝利、1勝クラス、2勝クラスと、目下3連勝中」なんてよくわからない文章が出てきかねません。これ、慣れるのにどれくらいかかりますか……。
先のオープン細分化のケースでも、「重賞はもとよりリステッドでも荷が重いからオープン特別を使うことにした」なんて談話が出てくるのでは?
ま、本音としてはそういうことになるんでしょうけど……。