競馬界に走った激震とその行方 12/28開催と名伯楽勇退を今一度考える

12月28日開催の再検証

年末年始の競馬界で大きな話題となった2つの問題、クラシックを前に今一度考えたい(写真は17年ホープフルS) 【写真:中原義史】

 昨年暮れの有馬記念を制してGI勝利数を最多タイの7勝に伸ばし、通算獲得賞金のレコードを更新したキタサンブラック。国民的歌手である馬主が所有し、“競馬界の顔”が騎乗するスーパースターが引退レースで偉業を達成。2017年は、まさに大団円の一年で終わるはず、でした。

 ところが、その余韻が覚めやらぬ4日後の木曜日、JRAではもう一日だけ競馬開催が行われました。2015年に改正された施行規則で可能になった12月28日の開催を、JRAの従来の“週末”の括りを外した木曜日に実施。賛否両論というより、否定的な意見が大勢を占める中で、どのような一日として定義づけられることになるのか注目されました。

新たな付加価値とともに

ホープフルSをメインレースに開催された12月28日開催は新たな価値をもたらしたのか? 【写真:中原義史】

 12月28日木曜日は、中山、阪神の開催で、阪神には重賞が設けられず、両場のメインレースとして、GIに昇格したホープフルSが据えられました。

 興行的側面を言えば、ホープフルSの前年売上比が362.9%。GIIとGIの比較ですから、このくらいの売上比は驚くほどではないかもしれませんが、同じ2歳GIの朝日杯FSが約133億円の売上に対し、ホープフルSが112億円。20億円も差があった、なのか、それほど遜色ない、なのかの捉え方は人それぞれですが、とりあえず有馬記念後の“買い疲れ”は杞憂に終わりました。

 この結果を見て、28日開催が一応の成果を出した、と捉えるとすると、そのひとつの要因のヒントが、地方競馬とのコラボレーション企画『ヤングジョッキーズシリーズ』にあるかもしれません。

 こと細かい概要は省略しますが、JRAと地方競馬の若手騎手46名が地区毎にブロックに分けられ、全国11場を舞台にトライアルラウンドを戦い、地区毎のポイント上位騎手が12月27日大井、28日中山で行われるファイナルラウンドに進む、というシリーズで、つまり優勝者は東京大賞典の前日である28日の中山競馬で決定するわけです。

 28日開催の今後の在り方として、この企画に限りませんが、地方競馬とのコラボは最重要ポイントに位置づけされそうです。

山積する課題

 そうは言うものの、28日開催を控えた有馬記念の前年売上比98.4%は無視できないことではあります。昨年の有馬記念は、客観的にみてキタサンブラックのラストランに焦点が集まるばかりで、正直なところ全体のレベルとして馬券的妙味が薄かったこともあり、結論を急ぐことはできないのですが。

 そして、結論を急げないのは、28日開催そのものについても言えること。

 何しろ代替開催が厳しい年末の28日。雪などで中止になった場合にどうするのか、という冬季開催を実施する際に、大前提として内包した問題への説明はされていませんし、年明けの3日間開催の出走数不足の現象にどう影響していたかも未検証なのですから。

 また、前述した地方競馬とのコラボも、やろうと思えば28日でなくともできますし、仮に興行面を追求するにしても、安直な判断は避けるべきなのではないでしょうか。

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著者プロフィール

中央競馬専門紙・競馬ブック編集部で内勤業務につくかたわら遊軍的に取材現場にも足を運ぶ。週刊競馬ブックを中心に、競馬ブックweb『週刊トレセン通信』、オフィシャルブログ『いろんな話もしよう』にてコラムを執筆中。

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