連載:ドイツ2部で戦う男たち

異色の経歴を持つ奥川雅也の素顔に迫る 京都でプロ昇格後、すぐに海を渡った理由

島崎英純
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キールに期限付き移籍中の奥川に、これまでのキャリアを振り返ってもらった 【島崎英純】

 日本からドイツまでの直行便が就航するフランクフルトからドイツ高速鉄道「ICE」に乗車して約5時間半。ドイツ第2の都市ハンブルクからさらに90キロほど北へ向かった先に、シュレスビヒ=ホルシュタイン州の州都キールがある。

 この街はデンマークとドイツの国境が引かれるユトランド半島の南東に位置し、北海とバルト海を分かつ半島のバルト海側に面している。夏場はドイツ国民の避暑地としても有名で、瀟洒(しょうしゃ)な建物やヨットハーバーが連なる海岸には「シュトゥラントコルプ」と呼ばれる屋根付きのビーチチェアが並び、そこでは観光客がビールやワインを片手にくつろぐ姿が見られる。

「いやー、でも、僕がここに来たときにはすでに夏が過ぎていて、今では海岸線のレストランなども期間閉鎖しているから、未だそんなリゾート気分を味わえてはいないですけどね(笑)」

 そう言って笑う奥川雅也。しかし、すでにこの街のクラブ、ホルシュタイン・キールの一員としての自覚を備え、堂々とした風格を携えているように見える。

とても親切なクラブ広報に迎えられる

 キールは1900年に創設され、ドイツ・ブンデスリーガ発足以前にはドイツチャンピオンの座にも就いたが第二次世界大戦後は低迷し、1963年のブンデスリーガ創設以降は主に2部や3部での戦いが続いている。しかし2017−18シーズンはブンデスリーガ2部で3位に入り、1部16位だったボルフスブルクとの入れ替え戦に臨んで惜しくも敗れるなど、ドイツのサッカーシーンでにわかに脚光を浴びつつある。

 キールの練習場は市内中心部にある中央駅から鈍行列車でひとつ目の駅で降りて約2キロ先にある。事前に場所を調べて最寄り駅でタクシーでも拾おうかと思ったが、その駅は無人でタクシーも停車しておらず、仕方がないので小雨が降る中、約20分の道のりをのんびりと歩いた。

 練習場は市民が利用できる「FUSSBALL PARK(サッカー公園)」の中にあって、小ぶりだが綺麗なクラブハウスが市民用施設と練習グラウンドを挟んだ位置にぽつんとたたずんでいた。ガラス張りになった室内を見ると、全体練習前の筋力トレーニングに励む選手たちの中で、外側を向いてエアロバイクを漕ぐ奥川の姿をすぐさま確認できた。

 キールのクラブ広報はとても親切だった。
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著者プロフィール

1970年生まれ。東京都出身。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当記者を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動。現在は浦和レッズ、日本代表を中心に取材活動を行っている。近著に『浦和再生』(講談社刊)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信。ほぼ毎日、浦和レッズ関連の情報やチーム分析、動画、選手コラムなどの原稿を更新中。

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