連載:ドイツ2部で戦う男たち

1部返り咲きへ、酒井高徳が抱く危機感 「どうせ2部」という気持ちがあった

島崎英純
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ドイツ2部でザンクトパウリと史上初のダービー

1年での1部返り咲きを目指し、ブンデスリーガ2部で奮闘する酒井高徳に話を聞いた 【写真:アフロ】

 ドイツ北部、北海へ流れ込むエルベ川河口から約100キロ上がった支流・アルスター川沿いにあるハンブルクは、すでに6世紀ごろから街として存在して幾多の歴史を紡ぎながら、現在ではドイツ第2の都市規模を誇る港湾都市として名を馳せている。
 この都市には市民を二分化するようなサッカークラブが存在する。一方はハンブルガー・シュポルト=フェアアイン(以下、HSV)、もう一方はFCザンクトパウリ。かつては互いのサポーター層の職種、階級などに特徴があったらしいが、現在は出自、思想、職業の貴賎(きせん)なく、共に多くのサポーターを擁する2大人気クラブである。

 2つのクラブが本拠とする場所には明確な違いがある。HSVのホーム「フォルクスパルク・シュタディオン」が市内東部郊外の森に佇む一方、ザンクトパウリのホーム「ミラントア・シュタディオン」は国内屈指の歓楽街「レーパーバーン」に近接している。

 現地時間2019年3月10日、猥雑なその街中にそびえる「ミラントア・シュタディオン」でHSVとザンクトパウリがダービーマッチを戦うのは8年5カ月ぶりのことだった。ブンデスリーガ2部での対戦は史上初めてのこと。今季のブンデスリーガ2部は昨季1部から降格した1FCケルン、HSVにウニオン・ベルリン、ザンクトパウリ、キールらが追随するし烈な昇格争いが繰り広げられ、3月10日の時点ではHSVが勝ち点47の2位、ザンクトパウリが勝ち点43の4位で肉薄していたこともあり、ハンブルク市内は『ハンブルガー・スタット・ダービー』の話題一色に染まり、その緊張感も極限まで高まっていた。

酒井「ダービーマッチに対して苦手意識がある」

HSVでキャプテンを務める酒井。ダービーの重みを語る 【島崎英純】

 究極のサバイバルマッチを4日後に控えた午後。HSVの酒井高徳は市内中心部・内アルスター湖畔にあるカフェにいた。

 普段の酒井は柔和で穏やかな表情を絶やさない好漢だが、サッカーの話題に話が及ぶと言葉に熱が帯びていく。そんな彼に、さっそくダービーのことを聞いてみた。

「去年の9月に僕らのホームで戦ったときはお互いに慎重になって0−0のスコアレスドローで終わったんですよね。今季の僕たちは昇格を目標としているだけに、どんな試合にも勝利を目指して戦っていますけれど、それでもパウリにだけは絶対に上へ行かれたくない思いがある。でも、今回の試合はどうなりますかね。まったく違う展開になるかも」
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著者プロフィール

1970年生まれ。東京都出身。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当記者を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動。現在は浦和レッズ、日本代表を中心に取材活動を行っている。近著に『浦和再生』(講談社刊)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信。ほぼ毎日、浦和レッズ関連の情報やチーム分析、動画、選手コラムなどの原稿を更新中。

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