スケボー世界女王は和歌山の高校2年生 金メダル候補に躍り出た四十住さくら

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 2020年東京大会そして世界に向けて、それぞれの地元から羽ばたくアスリートを紹介する連載企画「未来に輝け! ニッポンのアスリートたち」。第33回は和歌山県出身、スケートボードの四十住(よそずみ)さくら(ファイブクロス・スケートパーク)を紹介する。

世界を席巻する“初代女王”コレクター

スケートボードで快進撃を続ける四十住さくらに話を聞いた 【写真:中西祐介】

 東京五輪で初採用されるスケートボードで、世界を席巻する“初代女王”コレクターが日本にいる。四十住さくら、16歳。和歌山県内の公立高校に通う2年生だ。高校生で競技歴10年という選手が珍しくない世界で、小学6年から始めた四十住の競技歴は5年ほど。それでも、おわん型の湾曲した面を組み合わせたコースで行うパーク種目で、昨年5月に初開催された日本選手権を制覇すると、初採用された8月のアジア大会でも優勝。さらに、11月に初めて開かれた世界選手権を制し、国内外の主要タイトルを総なめにした。

「全部“初代”で『運、ついてるなあ……』って(笑)。初代ってやっぱり違いますよね。すごくうれしいです。実は、全部初代ということはあとから気づいたんですよ。世界選手権後に高校に行ったら、先生が『絶対優勝すると思った。初代、初代ときていたから』と言ってくださったんです」

 世界への足がかりとなったのは、日本選手権直後の6月に行われた、パークの世界最高峰プロリーグ「VANSパーク・シリーズ(VPS)」の初戦、サンパウロ大会だった。これまで海外大会はたったの3度、それも「バート」というハーフパイプを滑る種目にしか出場したことがなかった。それが、並みいる強豪を抑えていきなり優勝。これをきっかけに活躍の場が世界へと広がり、Xゲームズ・ミネアポリス大会3位、アジア女王、そして世界女王へと一気に駆け上がった。世界的には無名だった日本の女子高生スケーターは、一躍、東京五輪の金メダル候補となった。

海外遠征が技に磨きをかけた

スケートボードは「嫌いになったことがない」と四十住。始めた当初から夢中になって練習してきた 【写真:中西祐介】

「好きこそ物の上手なれ」ということわざを体現するようなスケーターだ。競技を始めたのは、もともと趣味でスケートボードをしていた13歳年上の兄の影響だった。お兄ちゃんっ子だった当時小学6年の四十住は「ただ単にお兄ちゃんと一緒に遊んで滑るのが楽しくて」スケートボードのとりこになった。以来、学校が終わると母親の車で隣県府の三重や大阪のスケートパークに通い、夜10時半まで練習する日々。多忙を極めるが「(スケートボードは)ずっと楽しいですよ。嫌いになったことがないし、悩んだこともない(笑)」と白い歯がキラリ。「今が一番楽しい?」と聞くと迷うそぶりもなく「そうですね」と言ってはにかんで見せた。

 時間を惜しまず努力を続けられるのは、彼女の大きな強みだ。日本代表の西川隆監督は、5月の日本選手権後に四十住を「非常に持ち技が多い。どちらかといえばトリッキーな感じ」と表現した。オリジナリティーが重視されるスケートボードでは、難易度や独創性が高い技(トリック)が高く評価される。負けず嫌いを自認する16歳は、“誰にもできないトリック”に対するこだわりが強い。女子選手がなかなかできない技にも果敢に取り組み、レベルを上げてきた。中には、完成まで2年かけたトリックもあるという。

海外遠征が増え、才能が一気に開花した。写真は昨年の「デュー・ツアー」のもの 【Getty Images】

 四十住を成長させたもう一つの要因は、海外遠征の増加にある。日本はまだ練習環境に恵まれているとは言えず、パークの選手は木製のランプやボウルと呼ばれるコースで練習することが多い。しかし国際大会はコンクリートのコースで行われる。スケートボードの本場・米国など海外にはコンクリートのボウルが数多く存在し、四十住も、こうした本番さながらの練習環境の中でめきめきと腕を上げた。素人目にはその違いが分かりづらいが、木製とコンクリートでは滑る時に大きな違いがあるようだ。四十住はこう説明する。

「トリック自体は、できる人も多いと思うんです。でも、それをコンクリートでやるのが難しい。木だと(滑りの途中で)引っかからないけど、コンクリートだと引っかかりやすい。それに、コンクリートは転ぶと痛いし、恐怖心が違います。コンクリートで練習するほど上達できるか、ですか? そうだと思いますね」

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