東京2020 THE WAY to 2020

挫折したスイマーが転向、無職を経て
トライアスロン・福岡啓は道を切りひらく

 2020年東京大会そして世界に向けて、それぞれの地元から羽ばたくアスリートを紹介する連載企画「未来に輝け! ニッポンのアスリートたち」。第32回は神奈川県出身、トライアスロンの福岡啓(ふくおか・ひらく/横浜こどもスポーツ基金)を紹介する。

水泳で挫折も、トライアスロンで急成長

神奈川県寒川町で生まれ育った福岡にとって、湘南の海は「ホーム」そのもの。普段も練習場所として活用しているという
神奈川県寒川町で生まれ育った福岡にとって、湘南の海は「ホーム」そのもの。普段も練習場所として活用しているという【写真:高木創】

 湘南の海にほど近い神奈川県寒川町で生まれ育ち、特技は木登り、趣味は海釣りと話す福岡は、自然を愛する天真爛漫(らんまん)な24歳だ。東京農業大では理科と農業科の教員免許を取得し昨春に卒業。現在はプロ選手として、2020年の東京五輪を目指している。


 福岡は身長155センチの小さな体でスイム1.5キロ、バイク40キロ、ラン10キロ(※オリンピック・ディスタンス)という過酷な競技に励むが、始めたきっかけはひょんなことだった。大学時代にアルバイトをしていた水泳教室で複数の同僚がトライアスロンをしていて、話を聞いているうちに「モヤモヤした気持ちを晴らしたい」という気持ちになった。


 幼い頃から水泳を始め、中学時代には50メートル平泳ぎで全国大会に出場するほどの実力だったが、桐蔭学園高で挫折を味わった。記録が伸びずに人数の少ない自由形長距離へ転向。国立理系コースに在籍しながらも授業前と放課後の練習で、多い日には1日に3万メートルを泳いだ。それでも結果は振るうことなく「すべてが水の泡になったような気分でした」と不完全燃焼で競技を離れた。


 だが、そこで培った心と体がトライアスロンで大いに生きた。競技歴わずか10カ月で出場した2014年の日本選手権で15位に入ると、15年と16年の日本学生選手権、16年と17年のアジアU23選手権でそれぞれ連覇を達成。転向後から本格的に取り組んだバイクやランも右肩上がりで成長を続け、若手のホープとなっていった。筆者も16年に取材をしたが、いい意味で怖いものなしで右肩上がりの急成長を遂げているのは話ぶりからも大いに伝わってきた。

大学卒業後、無職に…孤独の中で手に入れたもの

W杯入賞やU23アジア選手権連覇など実績を出していたが、大学卒業後の2年間は苦しい日々を送った。それでも自分自身と見つめ合うことで精神的に強くなったという
W杯入賞やU23アジア選手権連覇など実績を出していたが、大学卒業後の2年間は苦しい日々を送った。それでも自分自身と見つめ合うことで精神的に強くなったという【(C)Satoshi TAKASAKI/JTU】

 一方で大学卒業から現在に至る2年弱は「いろいろありましたね。トライアスロンが楽しくなくなったこともありました」と話すように、苦しい日々を送った。


 まず、大学卒業直前に「もう一歩自分で道を切りひらいて強くなりたい」と、所属していたクラブチームを退団。これまで歩みをともにしてきたチームやスポンサーからのサポートをあえて断つ意志を示した。また、卒業で同級生たちが社会人になる中で無職の状態となり、小学生が通う塾で講師を務めるアルバイトをした。


 周囲の応援も最初からそこまで大きかったわけではなく、またひとりで行う練習でモチベーションを高めることにも苦労した。


「とりあえず『強くならないと』『結果を残さないと』と思っていて、とにかく不安で不安でしょうがなくて」と振り返る。心が奮い立たない時は、海外選手のインスタグラムを見て「こんなに練習してる! やらなきゃ」と発奮させた。


 そんな孤独と戦う中で手に入れたものもある。


「毎日毎日反省して、自分と見つめ合う日々が続きました。でもその中で目標を達成する楽しみをあらためて感じたり、精神的に強くなれたのかなと思います」


 そしてスポンサーや応援してくれる人々も徐々に増えていった。昨年はW杯の中国・威海大会で6位入賞を果たし、『NTT トライアスロン・ジャパンランキング』でも過去最高の6位に入った。そして今年からは日本代表のヘッドコーチを務めるパトリック・ケリー氏の紹介でオーストラリアのチーム(ELOTIK Pro Triathlon)でも練習を行うようになった。

高木遊

1988年、東京都生まれ。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。関東を中心に全国各地の大学野球を精力的に取材。中学、高校、社会人などアマチュア野球全般やラグビーなども取材領域とする。

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