【新日本プロレス】平成最後の雪の札幌でよぎった昭和の悪夢 内藤W戴冠宣言、棚橋&オカダは不安の船出

高木裕美

ロスインゴが鈴木軍に圧勝

平成最後の「雪の札幌」。3日はロスインゴが3連勝と勢いを見せつけた 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 新日本プロレスは2月2日、3日に北海道・北海道立総合体育センター(北海きたえーる)で「THE NEW BEGINNING in SAPPORO 〜雪の札幌2連戦〜」を開催。3日はロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン(L・I・J)対鈴木軍による3大タイトルマッチが開催され、L・I・Jが3連勝で圧倒的な人気と勢いの差を見せ付けた。

 メインイベントのIWGPインターコンチネンタル王座戦では、大歓声を浴びて花道に登場した王者・内藤哲也を、鈴木軍の飯塚高史が背後からラダーで襲撃する「テロ」が発生。ダウンした内藤に挑戦者のタイチも花道上でブラックメフィストをぶちかまし、医務室でのドクターチェックの結果、一度は試合不可能という判断が下された。だが、内藤はBUSHIの肩を借りてリングに戻ると、試合のゴングを要請。タイチに首を攻められながらも、逆にお株を奪うテーブル上へのパイルドライバーなどを繰り出し、デスティーノで勝利した。

大歓声の花道で内藤は飯塚の襲撃を受ける 【写真:SHUHEI YOKOTA】

「平成最後の雪の札幌」で起きた35年前の再現に、「昭和の悪夢」が脳裏をよぎったオールドファンも多いだろう。1984年(昭和59年)2月3日、今はなき札幌中島体育センターを舞台に、全国生中継された衝撃事件。藤波辰爾とのタイトル戦に向かう長州力を、当時ほとんど無名であった藤原喜明が花道で奇襲。長州は血まみれのままリングに向かうも、無効試合となった。「名勝負数え歌」をブチ壊した”戦犯”となった藤原だが、この一件をきっかけに一躍「テロリスト」として名を馳せ、69歳の現在でも「関節の鬼」として活躍中だ。

 ちなみに、「平成のテロリスト」といえば、2000年3月11日に横浜アリーナの駐車場で故・橋本真也さんを襲撃した村上和成(一成)である。この時は試合前かつ会場の外だったため、事件を目撃したのはごくわずかなファンとマスコミのみ。今のようにSNSも存在しない時代だったため、いざメインイベントが始まって、トレードマークのハチマキを血に染めた橋本が登場しても、ほとんどの観客は意味が分からず呆然としていた。なお、村上もまた、この一件で大ブレイク。今回、内藤を襲った飯塚は、すでに今月21日に引退試合が決定しているが、村上とは「魔性のスリーパー」で浅からぬ縁があるだけに、運命を感じる。

内藤が狙うのは米国でのベルト奪取か 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 試合後、内藤は「ICを保持しながら、同時にIWGPヘビー級を狙う。史上初を狙っていきますよ」と宣言。同王座への挑戦権を得られるトーナメント「NEW JAPAN CUP」(3.8後楽園ホール開幕)への出場を予告した。もし内藤がNJCを制覇すれば、4.6米国マディソンスクエアガーデン(MSG)での同王座挑戦が決定的。世界的な「格闘技の殿堂」での王座返り咲きなら、元プロレスファンであった内藤にとっては最高のシチュエーションだが、「内藤哲也の存在はベルトの価値を超えてしまった」と言わしめた16年4月の初戴冠時のように、またも至宝は投げ捨てられてしまうのだろうか。

 なお、IWGPタッグ戦では、王者組のEVIL&SANADA組が、鈴木みのる&ザック・セイバーJr.組に辛勝。挑戦者組の関節地獄に苦しめられながらも、前日のシングル戦ではみのるのゴッチ式パイルドライバーに沈んだSANADAが、ラウンディングボディプレスでリベンジした。また、IWGPジュニアタッグ王座戦でも、BUSHI&鷹木信悟組が前王者の金丸義信&エル・デスペラード組からベルトを死守。最後は鷹木vs.金丸の「山梨県出身対決」となるも、鷹木のパンピングボンバーから合体技のリベリオンで振り切っている。5本のベルトに沸くL・I・Jに対し、惨敗を喫した鈴木軍から次なる一手は飛び出すのか。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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