【新日本プロレス】棚橋が飯伏に勝利し3年ぶりのG1制覇 「逸材、完全復活」で王者返り咲き

高木裕美

真夏の祭典「G1 CLIMAX 28」は棚橋弘至の3年ぶり3度目の優勝で幕を閉じた 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 新日本プロレスの真夏の祭典「戦国炎舞 -KIZNA- Presents G1 CLIMAX 28」最終戦となる12日の東京・日本武道館大会では、優勝決定戦などが行われ、札止めとなる1万2112人を動員した。またこの日、来年の1.4東京ドーム大会「WRESTLE KINGDOM 13 in TOKTO DOME」の開催も正式に発表された。

 今年のG1は20選手が2ブロックに分かれ、総当りリーグ戦で激突。メインイベントの優勝決定戦では、Aブロック1位の棚橋弘至とBブロック1位の飯伏幸太が激突し、G1歴代最長タイムとなる35分の激闘の末、棚橋が3年ぶり3度目の優勝を決めた。

怒涛のハイフライフロー3連発で決着

G1歴代最長タイムとなる35分の激闘は、棚橋(上)のハイフライフロー3連発で決着 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 飯伏と棚橋はシングルで過去に3度対戦。飯伏は以前から棚橋を「神」と崇めており、シングル初対決となった3年前の7.20札幌でのG1開幕戦では、棚橋が20分53秒、ハイフライフローで勝利。だが、昨年の8.1鹿児島では20分40秒、飯伏が初公開の技となった両手をつかんでのヒザ蹴りで勝利。その新技は「神を超えた」ということで、『カミゴェ』と命名された。同年11.5大阪では、IWGPインターコンチネンタル王座を賭けて再戦し、29分26秒、ハイフライフローで王者・棚橋が王座防衛に成功している。

 棚橋のセコンドには昨年4月から長期欠場中の戦友・柴田勝頼が、そして飯伏は「ゴールデン☆ラヴァーズ」の盟友ケニー・オメガがアシスト。生え抜きの新日本プロレスvs.インディー団体DDTプロレスリングからの成り上がりという図式が、観客の声援をさらに熱くさせる中、ついにゴングが打ち鳴らされた。

 グラウンドの攻防から飯伏がムーンサルトプレス、エプロンでのフットスタンプを放ち、ひとでなしドライバーで脳天からマットに突き刺せば、棚橋もグラウンド式ドラゴンスクリュー2連発からテキサスクローバーホールドで捕獲。さらにロープ越しのドラゴンスクリュー、場外へのハイフライアタックとたたみかける。しかし、飯伏も飛びつき式フランケンシュタイナー、スワンダイブ式ケブラーダ、雪崩式フランケンシュタイナーと得意の空中戦へ。さらにハーフネルソンスープレックスからついにカミゴェを狙いに行くが、棚橋は腕をクロスして防御。飯伏の掌底、棚橋の張り手、エルボー合戦と打撃戦になり、棚橋がスレイングブレイド、ダルマ式ジャーマン。しかし、ハイフライフローはヒザ剣山でブロックされてしまう。

 30分を超え、飯伏はボマイェ風ヒザ蹴り、その場飛びムーンサルト式ダブルニーアタック、やり投げ、スワンダイブ式ジャーマンスープレックス、シットダウン式ラストライドと猛ラッシュをかけるも、カミゴェはまたも不発。手をつかんだままの飯伏に対し、棚橋もツイストアンドシャウト2連発、ドラゴンスープレックスを繰り出すと、怒涛のハイフライフロー3連発。うつ伏せ、スタンド、そしてダウンした状態で食らった飯伏がついに力尽きた。

セコンドの柴田から「新日本プロレスを見せろと言われた」

優勝旗とトロフィーを持って、観客の大声援に応えた棚橋 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 昨年の34分35秒を超える35分00秒の優勝劇に、エースの復活を待ちわびていた観客は拍手と大歓声で祝福。柴田が棚橋を肩車してリング上を1周すると、その歓喜の声は最高潮に達した。敗れた飯伏は超えられなかった“神”と向かい合うと、握手は拒否し、オメガと肩を並べて退場した。

 テレビの実況解説を務めていた元サッカー日本代表の中山雅史から優勝トロフィー、“黒のカリスマ”蝶野正洋からは優勝旗を贈られた棚橋は、リング上から「G1優勝したぞーっ!」と絶叫。「G1、生き残りました。それはすなわち、新日本プロレスで生き残ったということ。これから先、1.4東京ドームも、さらにその先も、オレが引っ張っていきます」と訴えると、恒例のエアギターの後、「今日はありがとうございました。逸材、完全復活。見ててください。武道館の皆さん、愛してまーす!」と絶叫。3年前、リング上で旗を折ったアクシデントを思い出してか、優勝旗を控えめに振り回すと、右手にトロフィー、左手に優勝旗を持って、コーナーでポーズを決めた。

 バックステージで優勝インタビューに応じた棚橋は、「今まで、苦しんだ分……苦しんでない、楽しんで、喜んでやってきたけど結果が出なかった分、今日はいつもよりうれしいです」と、率直に頂点へ返り咲いた今の思いを打ち明けた。

 1999年10月に新日本でデビューして以来、闘魂三銃士が去った2000年代の冬の時代をエースとして支え、12年にはIWGPヘビー級歴代最多連続防衛記録となるV11を樹立。だが、その直後にオカダ・カズチカにベルトを奪われ、今年5月にはその記録すら塗り替えられた。17年には、これまで6年連続で勤め上げてきた1.4東京ドーム大会のメインイベントの座からも陥落。度重なる負傷と欠場の繰り返しで、タイトル戦線からも遠ざかり、今年春の「NEW JAPAN CUP」では、「必ず頂点に返り咲く」と宣言しながらも、決勝戦でザック・セイバーJr.に敗れて準優勝止まり。41歳となった肉体は全身ボロボロで、全盛期のような若さや躍動感あふれるファイトはできなくなった。周囲からは「棚橋、お疲れ様」と世代交代を求める声も挙がる中、それでも「今の自分の体で、できる技で、全力で戦う」ことで、勝利を積み上げ、再び太陽の光が当たる頂点へと、返り咲くことができた。

 それを支えてくれた仲間の存在もあった。この日、セコンドに就いてくれた柴田は、かつて中邑真輔と共に「新闘魂三銃士」とも呼ばれた同世代のライバル。「粋ですよね。セコンドで、新日本プロレスを見せろと言われました」という言葉が後押ししてくれたように、そこには、DDTから始まり10年間にわたって友情&ライバルストーリーを紡ぎ上げてきた飯伏とオメガに対する敵対心とプライドもあっただろう。

 G1優勝の先のプランについて棚橋は「1.4東京ドームのメインに戻る。IWGPのチャンピオンにもう1回なります」とキッパリと宣言。15年2月以来となるIWGPチャンピオンに返り咲き、もう一度、自分色に新日本プロレスを染め上げて、新たな黄金期を築き上げることを誓った。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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