JRA平成最後の改革は新時代への宿題か 騎手育成、売上…怠れぬ課題の追求

女性騎手の減量制度

3月1日から女性騎手の減量制度がスタートする 【写真は共同】

 騎手の育成問題についても、いくつかの改革案が挙げられています。

 若手騎手競走への騎乗資格緩和、ヤングジョッキーズシリーズの継続施行、といった項目とともに、もうひとつ、新聞、メディア等でも話題になったのが、女性騎手の負担重量の減量制度導入です。期間を区切らず、女性騎手には一般競走に限り永久に減量(マイナス2kg)が利く、というもの。

 3月1日にスタートするルール。この導入については以前から検討されてきたようですが、藤田菜七子騎手の存在が決定打になったことは間違いないでしょう。女性の、競馬界への参加を促す案として、或いは男女の機会均等の一環として、等々。

 しかしこれ、男女差別云々を持ち出すのはちょっと違っているような気がしないでもありません。

 馬術競技では、オリンピック・パラリンピックで、「全競技中、唯一、男女が同じ舞台で競う」ことの意義を謳っていて、それは、そこに馬が介在するからであることを、全面的に押し出しています。

 勿論、馬術競技では斤量の規定自体がありませんから、競馬と同じように語れないのは重々承知しているつもりです。が、現実問題、世界的にこの制度を導入している主要国は現状フランスくらいだと聞いていますし、競馬の魅力を謳う場合の要素として、自分のイメージするところとはちょっと違うかな、と感じています。

 大体ですよ、“減量”の恩恵があることで女性騎手が増えたとして、12頭立てで8人くらいが女性(減量)騎手、みたいなことが起きた場合、まあそれはそれで興味深いですけど、対戦する中堅レベルの男性騎手から“逆差別”的不満は出てきま……せんか?

 今のところは他愛のない笑い話かもしれませんが、どう転ぶのか、これもやってみなくてはわかりません。

 新ルールを生かして女性の参加、活躍を促すのは結構です。が、それと同時に、いや以上に、また別の方策(例えば女性が働きやすい環境作りとか)を模索することも重要になってくるでしょう。

模索からの将来を見据えて

 以上のように、今年導入された改革案の多くは、すぐに結論を出せるようなものではありません。現時点での拙速な判断は慎まなくてはならないでしょう。

 騎手の育成問題についても、将来的な人材確保、という観点からすると、実は競馬界全体にとって最も、と言っていいくらいの重要な懸案事項。こればかりは別の場所で、本格的に論じられるべき案件ですから、それこそここで迂闊に触れることは避けなくてはなりません。

 ともかく冒頭に触れた通り、売上面で好調な現在だからこそ、挑戦的かつ実験的な改革案を模索するのは決して間違いではありません。ただ、活況を呈しているからと言って、何の問題意識も持たないでいていいのか、という話。当の売上面で、気になるファクターもなくはないからです。

有馬記念(写真)の前年比98.8%をはじめ、JC、宝塚記念など古馬の主要GIレースは軒並み売上が落ちた 【写真:中原義史】

 昨秋に行われた日本を代表する2つのGIレース。国内最高賞金を誇るジャパンCと有馬記念ですが、売上はそれぞれ前年比92.3%、98.8%。昨年は宝塚記念も90.9%の大幅減でしたが、全体の売上が増えている一方で、耳目を集めて、本来売れるはずのビッグレースの売上は落ちている……。

 全体の売上増には海外競馬発売や、昨年ですとJBC開催もありましたし、Win5が安定して売れていることも後押ししているのでしょう。それでいてのジャパンC、有馬の売上減は、何が原因なのか。ちょっとしたほころびの予兆でなければいいのですが……。

 それらのことも念頭に置きながら、新しい時代を前に打ち出された改革案について、ひとつひとつをしっかりチェックしつつ、将来を見据えて冷徹に検証する姿勢を失ってはならない、と思うのです。

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著者プロフィール

中央競馬専門紙・競馬ブック編集部で内勤業務につくかたわら遊軍的に取材現場にも足を運ぶ。週刊競馬ブックを中心に、競馬ブックweb『週刊トレセン通信』、オフィシャルブログ『いろんな話もしよう』にてコラムを執筆中。

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