初戦で浮き彫りになった“大迫依存” 優勝には「7試合勝ち抜く采配」が不可欠
謎に包まれた初戦の相手
2ゴールの活躍でエースの貫禄を示した大迫(写真右) 【写真:松尾/アフロスポーツ】
問題は、対戦相手のトルクメニスタンの「正体」が見えづらいことだ。最新のFIFA(国際サッカー連盟)ランキングによれば、日本の50位に対してトルクメニスタンは127位。グループFでは最もランクが下で、今大会の参加24カ国の中では下から2番目である。数字だけを見れば日本の優位は間違いないが、気になるのがスカウティング担当を当惑させる、情報の少なさである。
何しろ最後に試合を行ったのは、アジアカップ予選の最終ラウンド(対バーレーン戦)で、昨年3月27日のこと。以後、彼らは1試合も行っていない。イエメンやシリアのように内戦に見舞われているわけでもなければ、キルギスのように国内経済が厳しいわけでもない(トルクメニスタンは天然ガスが世界第4位の埋蔵量を誇る資源国である)。2004年の中国大会以来となる、久々のアジアカップ出場を果たしたにもかかわらず、積極的な代表強化が行われていないのは本当に謎というほかない。
そういえば前日会見の時、こんなやりとりがあった。ヤズグリー・ホジャゲルディエフ監督に、日本の記者から「トルクメニスタンはどのようなスタイルのサッカーを志向しているのか教えてほしい」という質問があった。すると通訳のスタッフは、監督と二言三言やりとりしてから「そんなことはネットで調べてください」と英語で返してきた。「ネットで調べても分からないから聞いている」と記者が食い下がるも、結局うやむやとなってしまった。余談ながらトルクメニスタンサッカー連盟には、公式サイトというものが存在しない。かの国のサッカーがいかに謎めいているか、この一件からも十分にご理解いただけるだろう。
予想を裏切る展開となった前半
ボランチには青山ではなく、若い冨安が起用された 【写真:松尾/アフロスポーツ】
この日の日本のスターティングイレブンは以下のとおり。GK権田修一。DFは右から、酒井宏樹、吉田麻也、槙野智章、長友佑都。MFはボランチに柴崎岳と冨安健洋、右に堂安律、左に原口元気、トップ下に南野拓実。そしてワントップには大迫勇也。注目点は何といっても、ボランチに計算の立つ青山敏弘でなく、若い冨安が起用されたことだろう。すでにセンターバック(CB)としては、A代表でフル出場している冨安だが、本職とはいえないポジションでどれだけユーティリティを発揮できるのか。それ以外では、中島翔哉の代役に原口が入り、しばらく別メニューが続いていた大迫がスタメン起用されたのが目を引く。
試合が始まってみると、4バックで来ると思われていたトルクメニスタンが、5バックで日本に挑んできた。システムは5−4−1。要注意人物は右MF、8番のルスラン・ミンガゾフである。父親も元トルクメニスタン代表で、15年前のアジアカップに出場。当人は17歳でラトビアの強豪スコント・リガに移籍して主力選手となり、現在はチェコのプジーブラムに所属する、チームで唯一の「欧州組」だ。味方の守備ブロックに日本が手を焼いているうちに、ミンガゾフは次第に本領を発揮するようになる。
前半17分、トルクメニスタンは自陣からのロングフィードを受けたミンガゾフから、FWバヒト・オラサヘドフへパス。左に流れてのオラサヘドフのシュートは、権田のスライディングに阻まれたが、これがミンガゾフが演出した最初のビッグチャンスだった。そして27分には、堂安のパスミスを奪うと自らドリブルで持ち上がり、左サイドのMFアルスラン・アマノフにボールを託す。するとアマノフは中へ切れ込み、ノープレッシャーの状況から右足を振り切った。弾道は権田のグローブをかすめて、そのままゴールイン。大方の予想を裏切り、トルクメニスタンが先制する。