ラグビー界最高の司令塔、ダン・カーター 来日で「自分自身に試練を与えたい」
フラストレーションも「僕が求めていたチャレンジ」
ニュージーランド代表(オールブラックス)で活躍してきたダン・カーターが、今季から神戸製鋼でプレーする 【写真提供:WOWOW】
2カ月前までフランス「TOP14」で戦っていたカーターに、これから始まるTOP14、そして自身の新しいチャレンジについて語ってもらった。
――トップリーグはもうすぐ開幕(8月31日)ですが、それより早く、25日にフランス・TOP14が開幕します。
もう開幕するのか。ワオ。そうだな、アレ(がんばれ)・ラシン!
――TOP14のラシン92で3季プレーしましたが、どのようなリーグでしたか。
3シーズンというか、2シーズン半だね、1シーズン目の前半はワールドカップがあって、フランスではシーズンの半分しかプレーできなかったからね。でも、僕の全般的な経験はグレートだったよ。
ニュージーランドで長い期間プレーしてきて、新しいチャレンジが必要だった。だから、フランスでプレーすることは、まさにそういうチャレンジだった。リーグの形式からして全く異なるし、新しいコーチ陣、新しいチームメートと、そしてゲームの中身もそれまで経験してきたこととは全然異なっていた。それは、僕にとってはチャレンジングだったよ。時にはフラストレーションも感じた。でも、それ自体が僕が求めていたチャレンジ。だから、僕はTOP14でプレーしたかったんだ。
――フランスで感じたフラストレーションとは?
トレーニング方法やプレーの進め方が違っていたんだ。ニュージーランドでは、選手自身がチームを引っ張って行くことが大事だと教わってきた。でもフランスでは、チームを引っ張って行くのはコーチの役割で、選手にはあまり発言権が無かった。そういう意味でも、かなり違う環境だったね。そういうことに最初はフラストレーションを感じた。でも、コーチ陣は素晴らしい人たちだったので、僕がいた間に、いくつかの点について変更してくれた。
新しい環境に入った場合、それまであったすべてを変えてしまうことはできないよね。「ニュージーランドではこうやっていたから、ここでも同じようにやるべきだ」という風にはならない。僕としては、まずフランスのやり方に自分を合わせないといけなかった。
その上で、僕が自分のキャリアの中で学んだ、あるいは経験から身につけた、チームに役立つと思ういくつかの点については、ラシン92のコーチや選手たちに伝えることができたと思うよ。
――フランスで得たものを教えてください。
たくさんあったよ。まずは自分自身について。フランスで、どういうプレーをするのかということに向き合えたことだね。フランスのラグビーはそれまで経験していたものとは全く違うスタイルだ。日本やニュージーランドよりも、もっとフィジカルで、もっと格闘技的だった。だから、自分のゲームの運び方を、それに合わせていく必要があったね。
ゲームはニュージーランドよりも多少スローであり、より戦術的であり、キックが多用されていた。だから、僕としては、自分のオプションのそういう部分をより意識する必要があった。
それから、とてもシーズンが長いね。チームとは1年の内、11カ月一緒にいる。その内、約10カ月試合が続く。そういう意味では、自分の身体について、とても良く考えたし、理解することができたね。僕はキャリアの終盤に入ってきているから当然だけど、最高の力を発揮するためには、自分自身の身体のマネジメントをきちんとしないといけなかった。なぜなら、11カ月連続で、ずっと最高のレベルでトレーニングすることはできないからね。休養も含めて、自分自身の身体のマネジメントが必要だ。だから、自分の身体について、そして、適切なトレーニングの負荷などについて、とても多くのことを学んだよ。それは良かったね。
今季から日本でプレー「決断は簡単だったよ」
「格闘技的だった」フランスリーグからも多くを学んだという 【写真:ロイター/アフロ】
昨シーズンを終えるにあたって、ラグビーを続けるには、フランスにそのまま残るか、日本に来て神戸製鋼でやるのか、どちらかの選択があった。でも決断は簡単だったよ。なぜなら、今、日本では、ラグビーがとても盛んになっていて、正しい方向に向かっている。僕としては、日本で暮らして、日本でラグビーをしたいと思ったんだ。
これから、来年のラグビーワールドカップ、さらには、2020年の東京オリンピックも控えている。これからの数年は、ここで暮らすこと以外は考えられないくらい、とてもエキサイトしている。
それと、新しい環境、新しいチャレンジの中で、自分自身に試練を与えたかった。フランスに行ったときもそうだったけど、キャリアの終盤では、自分のモチベーションのために、こういうチャレンジが必要なんだ。
もうひとつは家族のことだね。日本ではフランスほどシーズンは長くないから、フランスにいた時よりもニュージーランドに帰ることができる。それは家族にとっても良いことだと思った。というように、日本に決めた理由はたくさんあったんだ。
――日本での目標は?
目標としては、もちろん神戸製鋼が勝つことだけど、僕としては、自分のラグビースキルに誇りを持っている。僕はスキルフルな選手、特にキックなどの面でね。ゴールキックは子供のころからやっている大好きなことで、インターナショナル・ラグビーの最高のレベルでも結果を出している。だから、ここ日本で、神戸でも自分のキックの能力を認めてもらいたいね。それから、スキルを実行する時の精度の高さも見てもらいたい。
――キックは子供の時は、どれくらい練習したのですか?
暗くなるまでやっていて、母が「晩ご飯よ、家に入りなさい」と、呼ぶまでやっていた。家の裏庭にゴールポストがあって、学校から帰ったら、もう何時間も何時間もやっていたね。50回とか100回とか回数を決めてやるというのではなく、ボールを蹴ることが楽しかったので、数は数えずに、ただ何時間も何時間もキックしていた。好きだったから、やっていただけだよ。でも、今振り返ると、そこで僕は、自分のキックのスキルを築き上げていたんだね。キャリアで成功を収めた理由の大きな部分は、そこにあるのさ。昔、裏庭で、父や友達と過ごし、楽しみながら、ボールを蹴っていた時間があったからだよ。
――お父さんや友達が、キックしたボールを戻してくれていたのですか?
父はいつもそこにいて、僕にボールを返してくれた。友達と一緒の時は、お互いにキックの練習をしていたね。とても楽しかったよ。僕だけではなく、周りの人たちも、僕と同じくらい、楽しんでいた。
トップリーグ開幕へ「ワクワクしているよ」
オールブラックスを統率してきた世界的司令塔が、日本でどのようなプレーを見せるだろうか 【写真:ロイター/アフロ】
TOP14は、とてもエキサイティングなリーグだよ。世界最高の選手がそろっている。だから、世界の中でも、最もグラマラス(魅力的)な大会になっているのさ。とにかく、選手の質が素晴らしい。だけど、僕はついこの間までTOP14にいたのに、もう次のシーズンが始まってしまうんだね。あらためて驚くね。
TOP14ではどのチームでも、その試合に勝つ可能性がある。どのチームも世界中から最高の選手をそろえているから戦力に差がない。だからTOP14には、多くの番狂わせ、ドラマティックな試合、多くのドラマがある。100%確実に、こっちが勝つなんてことは決して言えないんだ。シーズンを通して、本当にたくさんの番狂わせがあるからね。そういう意味で、見ていてもエキサイティングなリーグだよ。
僕自身、フランスでプレーして分かったのは、TOP14の選手たちは今、「もっとボールを動かしたい」と思っていることだ。フランスの伝統的なスローなプレースタイルから、今はコーチも選手ももっと速いプレーをしたいと思っている。今シーズンは、そういうプレーが多く見れると良いね。
――日本の暑さには慣れましたか?
最初の週は、ものすごく暑かった。でも慣れて、今はエンジョイしているよ。ファンタスティックな3週間だった。その後1週間、ニュージーランドに家族に会いに戻れたのも良かった。ここからはトレーニングがますますキツくなって、もうすぐトップリーグが始まる。待ち遠しいね。ワクワクしているよ。
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