世界トップの万能選手アシュリークーパー 「日本ラグビーの質の高さに驚いた」

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世界各国のラグビーには大きな違いがある

オーストラリア代表116キャップを誇り、ワールドカップでも活躍したアシュリークーパー 【写真:ロイター/アフロ】

 トップリーグの中でも、ダン・カーターの加入で注目度が上がっている神戸製鋼。その神戸に昨シーズンから加わっているのがアダム・アシュリークーパーだ。オーストラリア代表として2007、2011、2015年のワールドカップ3大会に出場するなど通算116キャップを持ち、世界最高のユーティリティーバックスと呼ばれたレジェンドが語る、世界各国のラグビー、そして日本のラグビーとは?

――世界各国のリーグでプレーしてきましたが、それぞれどんな特徴があるか、教えてください。

 疑いなく言えるのは、ラグビーの質を比較するのは難しいということだね。ラグビースタイルもそれぞれ違うし、違う文化がある。それぞれに違うスキルのセットがあり、チームごとに違うバックグラウンドがあり、違う選手がそれぞれの国でプレーしているんだ。
 その中で、あえて比較するなら、僕がスーパーラグビーからフランスリーグ TOP14に移って感じた違いは、フランスではセットプレーをより重視していたということだね。TOP14ではスーパーラグビーよりもスクラムを多く組む。スーパーラグビーでは、ボールを回しているインプレーの時間は、1ゲームにつき平均35〜40分だけど、TOP14では平均22〜25分くらいだ。これはものすごい違いだよね。その背景にあるのが、セットプレーを重視する文化だと思う。特にフランス人は、スクラムを組むのが大好きだ。そしてドライビングモールに持ち込むのが好きだ。加えて、フランスは、より劇場型だ。つまりレフェリーもその展開に一役買っているんだ。まあ、そのことについてはこれ以上は深入りしないけど(笑)。それにより、確実にゲームの質は変わる。だけどそれは、スーパーラグビーに慣れていた僕にとっても素晴らしい、楽しい経験だったね。

 リーグの構造を見ても大きな違いがある。スーパーラグビーは、2月か3月に始まって、7月、8月までだ。6カ月ほどの間で全部が終わってしまう。特徴はハードで速いことだね。休みはほんの1〜2週で、あとは連続して18ゲームをこなすんだからね。一方でTOP14のシーズンは長い。基本的には11カ月続く。つまり、8月に始まって、終わるのは翌年の6月。その間ずっとプレーを続けるんだ。日の短い真っ暗な時期も、クリスマスの時期にもプレーを続ける。冬の間は本当に寒くてじめじめしている。そういう時期は、本当にチャレンジングなコンディションだね。

「もっと早く日本に来れば良かったと思っている」

攻撃でも防御でも、すべてのプレーを高いレベルでこなしている 【写真:ロイター/アフロ】

――そして昨季からは日本のトップリーグでプレーしています。その印象は、TOP14とは違いましたか?

 その通りだ。日本のラグビーの質の高さには本当に驚いたよ。スーパーラグビーからTOP14に移って、そこから日本に来て、環境の変化にとても感動した。日本のラグビーの質はこの数年でとても上がっていて、本当に素晴らしいリーグになっていると思うし、ここに参加することをとてもエンジョイしている。
 フランスでは、さっきも言ったけど、インプレー時間が少なかったので、試合中に僕がボールを持つ機会は限られていた。でも日本に来たら、ゲーム展開が速く、スキル・セットのレベルが高く、素晴らしいラグビーを展開している。ボールにタッチしている時間は(フランスよりも)ずっと多く、僕としては、とてもエンジョイできている。それはオンでもオフでも同じだ。もっと早く日本に来れば良かったと正直思っているくらいだ。でも後悔はしていない。今ここにいられることがうれしいし、日本での2年目のシーズンを楽しみにしているよ。

――日本の暑い夏の中でプレーするのはいかがですか。難しくありませんか?

 そうだね(笑)。とても暑いよ。今まで経験してきた暑さとは別物だ。僕のキャリアはオーストラリアでほとんどを過ごしてきたけど、シドニーとかキャンベラでは日本の夏のような湿度はなかった。フランスではボルドーという大西洋に近い町だったけど、ここほどは湿気がなかった。神戸に来て、この暑さ、湿気を経験した。でもこれは避けることができない、日陰に入っても湿度からは逃げられないからね。それは僕にとってものすごくチャレンジだった。昨年、フランスからここに移籍した時は『うっ』ときたよ(笑)。でもそれもエンジョイしたよ。日に焼けたことも含めてね。あと、暑いので、体重が増えない。とても消耗するからね。それは良いことだ(笑)。

――日本では、スーパーラグビーやワラビーズ時代のチームメートやライバルと一緒に戦うことが多いですね?

 不思議な感覚だね。超現実的というのかな。神戸でチームメートになったアンドリュー・エリス(SH/元ニュージーランド代表)とダン・カーター(SO/元ニュージーランド代表)、特にダンは、僕のインターナショナルのキャリアの間、ずっと戦って来た相手だ。オールブラックスとは、通算で32回か33回くらい対戦してきた。その中で、片手くらい、5回しか勝利をしていない。だから、ダン・カーターに対しては、あまり勝った記憶がない。彼とは、何度もスーパーラグビーでも対戦しているし、TOP14でも何度も対戦してきた。それが、日本に来て同じチームでプレーすることになるとはね。まったく想像できなかった。超現実的だよ。

 ダンとのコミュニケーションは、今のところうまくいっている。彼が合流してから僕は彼がどうして世界最高の選手であるのかを学んでいるところだ。彼はとても精密で、とても真面目だ。僕ら神戸製鋼の選手にとって、彼が入ってきたのは素晴らしいことであり、すでに大きなインパクトになっているね。僕だけでなく、チーム全体にとってだ。彼を見ることで、彼がどうして過去何年にも渡り、これだけの成功を収めたのか、ということを学べる。とても興味深いことだ。

――ワラビーズ116キャップのアダムさんでも、ダンさんからアドバイスをもらうことはあるのですか?

 もちろんだよ。ラグビーの最も素晴らしいところは、世界最高の選手たちと協働したり、コラボレーションしたり、コネクトするチャンスが得られる所だと思う。違う選手、バックグラウンドが異なる選手、チームが異なる選手、違うスキル・セットを持っている選手たちが一緒にプレーする。相手が世界最高の選手かどうかは別にしても、ほかの選手がやっていることから学ばない手はない。そういう意味でも学びたいと思っているよ。

「自分のラグビーキャリアを成長させることができる」

ウェイン・スミス総監督から多くを学んでいると語るアシュリークーパー 【写真提供:WOWOW】

――日本で2年目のシーズン、今年は、こういう面でパフォーマンスを上げたいということはありますか?

 とても良い質問だね。今年最も重視して取り組んでいるのはラグビー知識の部分なんだ。ここでの状況を理解し、どういうゲームをしているのかを理解すること。日本人がどのようにラグビーをプレーしたいのか、ゲームのある種の状況でどのように反応するのか、情報に対してどのようなフィードバックをするのか、フィールド上の様々なシナリオに対して、どう反応するのかということ。ゲームの理解、ゲームの知識、ゲームマネージメントの部分だね。

 僕としては、チームメートとのコネクションを作ることにとても努力している。それによって、週末の80分のゲームの中でいい連携が取れるんだ。もちろん個人としてもスキルアップには常に取り組んでいるけれど、本当にフォーカスしているのは、トップリーグのゲームを理解することに置いている。理解すれば、僕は経験をアドバイスできるようになるし、できる限りの付加価値をチームに持ち込めると思うからね。

――神戸では今年、総監督のウェイン・スミスとヘッドコーチのデーブ・ディロンというニュージーランドのコーチのもとでプレーすることになります。

 ウェインの指導を見ていると、どうして、ニュージーランドは過去10年、あれほど成功したのかがよく分かる。彼は、ものすごく知識が豊富なコーチだ。ゲームをものすごく良く理解している。そして、ものすごく情熱的だ。そして日々学ぼうとする意志がある。コーチとは、指導するだけでなく自身も学び続ける必要がある。彼の場合、今まで彼がやってきたことや、コーチとして、多くの成功を収めてきたにも関わらず、ここでコーチであることに喜びを感じ、ほかのコーチや選手から、今も学び続け、日々ゲームをコーチすることに対して成長し続けている。

 僕としては、そういう彼を見ていること、彼のチームにいることが、とてもためになるね。なぜなら彼は僕に、ゲームを今までとは違う角度から見ることを教えてくれた。それこそが、いろんな世界中のコーチと協働する素晴らしさだと思うね。特にニュージーランドのウェインは、ゲームのプレーという点で、今までとは違う観点を教えてくれた。違う視点、違う物の見方のおかげで、僕としては、自分のラグビーキャリアを成長させることができるし、それによってチームにプラスアルファをもたらすこともできる。素晴らしい経験ができている。今シーズンも本当に楽しみだよ。

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